EDMムーヴメント最大の立役者としてそのメインストリーム化を推進し、花束も罵声もすべて受け取ってきた今世紀最強のDJ。30年の歩みを経てなお野心的な新作の提示するものとは?
ポップネスの追求

DAVID GUETTA 7 What A Music/Parlophone/ワーナー(2018)
7枚目だから『7』という明快さ。2014年の『Listen』から実に4年ぶりとなるデヴィッド・ゲッタのニュー・アルバムは、複合的な魅力を備えてシンプルにポップを追求する大作となった。思えば前作『Listen』が出たのは、EDMの侵攻が一時の狂騒を過ぎた時期ということもあり、“Hey Mama”や“Dangerous”といった破格のヒット・チューンこそ生まれたものの、アルバムとしては『One Love』(2009年)や『Nothing But The Beat』(2011年)ほど大きなインパクトを残すには至らなかったように思える。とはいえ以降もリリース面は好調で、ザラ・ラーソンとのムーンバートン“This One's For You”(2016年)やロビン・シュルツとの“Shed A Light”、ニッキー・ミナージュ&リル・ウェインを迎えたトラップ“Light My Body Up”(2017年)など、サウンドを変化させながらコンスタントにヒットを放ってきた。
一方、2011年に首位に輝いたDJ Magの年間〈Top 100 DJs〉チャートでのゲッタは、初めて10位になった2007年からTOP10内を10年以上もキープしているわけで(他にはティエストとアーミン・ヴァン・ビューレンぐらいだ)、DJとしてのステイタスや信頼に揺るぎはないということだろう。楽曲のクロスオーヴァー度合いからしてカルヴィン・ハリスやゼッドらと並列で語られることも多いゲッタだが、クラブDJを起点とするキャリアの性質や基盤には相当な違いがある。80年代からDJとして活動し、長きに渡ってダンスフロアの趨勢を見てきた67年生まれの彼にとって、今回の『7』は50代に入って最初のアルバムということになる。
〈EDM〉という言葉のブレイクと同時にある種のフォーマットが広まりすぎたせいで、いまも〈あの頃〉の音のイメージで止まっている人も多そうだが、その言葉の下で鳴らされる音がどんどん変化しているのは普通にEDMを楽しんでいる人なら承知の通りだし、そうでなくても多くのスタイルは意識されずともそのままポップとして機能するようになった。ジャスティン・ビーバーを迎えた世界的なヒット“2U”はフューチャー・ベース仕様だったが、同曲をキックオフとする今回の『7』が用意したのも、フューチャー・ベース~チル・トラップやムーンバートンから接続して広がっていく現行シーンの楽しさを横断した多様なスタイルだ。
進取の気性と伝統への愛
結果的に“Light My Body Up”はアルバム未収録となったものの、“2U”が大当たりして以降のゲッタはアルバムへの助走を華やかにすべく周到に楽曲を先出ししてきた。マーティン・ギャリックスとのコラボ“So Far Away”などは豪勢なフューチャー・ベース、同じくマーティンとの“Like I Do”はフューチャ−・ハウスで、マシュメロ“Friends”で名を上げたアン・マリーとはソフトなチル系エレポップ“Don't Leave Me Alone”をやり、馴染みのニッキー・ミナージュとウィリー・ウィリアムを迎えたジェイソン・デルーロとの連名曲“Goodbye”ではラテン・アーバン風味にキメるなど、意匠は多様ながらそれぞれの狙いはハッキリしているように思える。
アルバムの初出曲を見ると、“Battle”で壮麗な熱唱を聴かせるカナダのフォージアをはじめ、ファースト・アクセスの新星マディソン・ビアー、エイヴァ・マックスといった新鋭シンガーの起用が目立つ。他にもビービー・レクサとJ・バルヴィンによる“Say My Name”はアクの強いダンスホールで、ムーンバートン~レゲトン~ラテンと連結するこの手のパーカッシヴな作法ももはや現代ポップスの標準装備だ。リトル・リチャードの声ネタを号令にステフロン・ドンとジェス・グリンが暴れる“She Knows How To Love Me”、リル・ウージー・ヴァートとG・イージーのバウンシーなラップ・チューン“Motto”なども踏まえると、『7』の手つきにはメジャー・レイザーやジャックUを動かす際のディプロに近いものがあると言えそうだ。
一方、ロビンSの古典“Show Me Your Love”(90年)を用いたショウテックとの“Your Love”や南アフリカのブラック・コーヒーと共作した“Drive”などは、大文字のEDMではなくハウスの歴史上に自身を改めて位置付けるかのようだし、その意味だと“Nation Rap”(90年)で始まったゲッタの原点をサウィーティーとのヒップ・ハウス“I'm That Bitch”から思い出す人もいるかもしれない。
そうした方向性はジャック・バック名義での楽曲で固められた本作のDisc-2でより明確に表現されている。同名義はストイックなフロア・トラックを発表する際にゲッタが用いる名前だが、シーシー・ロジャーズ“All Join Hands”(90年)からメッセージをサンプルした“Freedom”や、自身の出世曲“Just A Little More Love”(2001年)のリメイクから、往年のハウスへのトリビュートや原点回帰という意図を受け取るのは容易だろう。そして、そんなダンスフロアへの愛と敬意の結晶を豪華でド派手なポップ大作と2枚組にして出してしまえる点こそが、デヴィッド・ゲッタらしさなのかもしれない。
『7』に参加したアーティストの作品を一部紹介。
デヴィッド・ゲッタが『7』に到達するまでの1・2・3・4・5・6をリッスン・アゲイン!

DAVID GUETTA Just A Little More Love Gum/Virgin(2002)
10年以上の活動を経て放った初のアルバム。今回『7』でリメイクされている表題曲や、本国ではチャート・ヒットとなった哀愁ユーロな“Love Don't Let Me Go”など大半の曲でクリス・ウィリスが美声を響かせる。NYのハウス・ディーヴァ、バーバラ・タッカーを迎えた“Give Me Something”も熱い出来。

引き続きクリスをメインにしつつ、テッキーな“The World Is Mine”などでJDデイヴィスをフィーチャーした2作目。ディープ・ハウス主体の前作からアレンジの幅は大きく広がり、ステレオMCsを迎えた“Open Your Eyes”などはいま聴くとケミカル・ブラザーズのよう。ラストにはミス・シングも登場する。

この時期ロジックというユニットを組んでいた相棒のジョアキム・ガローと全面的に制作し、欧州の各国でヒットを記録したサード・アルバム。時流のエレクトロ・ハウス色を一気に強め、全英ヒット“Love Is Gone”やアンジェロ&イングロッソを交えた“Everytime We Touch”などではクリスの熱唱も光る。

共作したブラック・アイド・ピーズ“I Gotta Feeling”がヒットするなか、ニーヨ、エステル、キッド・カディらアーバン方面の人気者を大挙動員した転機の一作。ケリー・ローランドを迎えたナーヴォ作の“When Love Takes Over”が初の全英No.1を獲得し、エイコンとの“Sexy Bitch”は次作に繋がる初の全米ヒットとなった。サウンド面ではアフロジャックとの共作も。

ジョルジオ・トゥインフォートを参謀に引き入れ、前作路線を継承しながらソングライティング面をさらに鍛えた世界的ヒット作。アッシャーとの“Without You”を筆頭にタイオ・クルーズ&リュダクリス、クリス・ブラウン、フロウ・ライダー、スヌープらが参戦し、ニッキー・ミナージュも初登場。シーアとの“Titanium”は以降のメインストリームにおけるEDM導入の雛形となった。

DAVID GUETTA Listen What A Music/Parlophone/ワーナー(2014)
アーバン勢との青天井なコラボ路線から離れ、アヴィーチーと共作した起床マナーの“Lovers On The Sun”、シーアとのトライバルな“Bang My Head”、ブーティーなトラップの“Hey Mama”などサウンド志向に揺り戻した印象も強い6作目。エミリー・サンデーの歌うピアノ・ハウス“What I Did For Love”は安室奈美恵の歌うヴァージョンも後に出された。
その他の重要曲もお忘れなく!
前作『Listen』と今回の『7』の間にゲッタが発表したトラックは膨大で、“Light My Body Up”などのヒットさえも結果的に『7』に未収録となったものも多い。特に重要なのはサッカーのEURO 2016のために制作されたザラ・ラーソンとの“This One's For You”で、これは全仏1位を筆頭に欧州各国で大ヒットを記録した(彼女のアルバムの日本盤にのみ追加収録)。また、ドイツのロビン・シュルツと組んだ超キャッチーなアンセム“Shed A Light”(2016年)も忘れちゃいけない。
一方、プロデュース/リミックスなどの外仕事ではアリアナ・グランデ“One Last Time”(2014年)やニーヨ“Who's Taking You Home”(2015年)あたりが思い出されるところで、最近だと上掲したG・イージーのアルバムで“Pick Me Up”をプロデュースしてもいた。近年のリミックスで名高いのはスティーヴ・アオキの“How Else”やブルーノ・マーズ“Versace On The Floor”、アフロジャックと共作したシーア“Helium”など。ちょうどリリースされたレニー・クラヴィッツ新作の日本盤では“Low(David Guetta Remix)”も聴けるので、そちらも併せてチェックしておきたいところだ。
関連盤を紹介。