LAジャズからチャイルディッシュ・ガンビーノまでに顔を出す、現行シーンに欠かせない男

そのカマシのバンド・メンバーで、彼とWCGD(ウェスト・コースト・ゲット・ダウン)というクルーを組んでいるキーボード・プレイヤーが、ブランドン・コールマンだ。カマシ作品におけるゴスペル色濃厚なオルガン・プレイで知られるコールマンだが、最初に弾いたのも教会のオルガンで、そこからキーボード全般にのめりこんだという。なんでもロナルド・ブルーナー・ジュニアとサンダーキャットの兄弟とは中学から、カマシ・ワシントンとは高校時代からの友人らしい。

ブランドン・コールマンが参加している、カマシ・ワシントンのライヴ映像。曲目はブランドンの新作『Resistance』に収録された“Giant Feelings”

コルパーン音楽学校を卒業後、プロ活動をスタートしたコールマンは、フライング・ロータスやライアン・ポーター、クァンティック&ザ・ウェスタン・トランシエントといったジャズ・ミュージシャンのアルバムに参加する一方で、スヌープ・ドッグやケンドリック・ラマー、チャイルディッシュ・ガンビーノといったラッパー、スティーヴィー・ワンダーやアース・ウインド&ファイアー、ベイビーフェイスといったR&B界の大物ともレコーディングやライヴで共演を果たしてきた。

そんな彼が、盟友カマシをはじめ、ライアン・ポーター(トロンボーン)やロバート・ミラー(ドラムス)らとともに作りあげ、フライング・ロータスのレーベル、ブレインフィーダーから発表したソロ・アルバムが『Resistance』である。

 

LAのキッズが愛してやまないファンク・サウンド

2011年に発表したソロ作『Self Taught』では、ハービー・ハンコックが70年代に率いていたヘッドハンターズを彷彿とさせるジャズ・ファンクを展開していたため、てっきりコールマンはその路線を突き進んでいると想像していたのだが、良い意味で裏切られた。同じハービー・ハンコックでも、これはヘッドハンターズというより『Sunlight』ではないか!

ハービー・ハンコックが78年にリリースした『Sunlight』は、当時全盛だったディスコ・ブームを意識したアルバムで、シンセ中心のグルーヴィーなサウンドに乗ってハービーみずからがヴォコーダーで歌いまくった異色作だった。当時はシリアスなジャズ・ファンから白眼視されたアルバムだったが、ここでハービーが構築したサウンドは、いまではタキシードやデイム・ファンクといったロサンゼルスのディスコ・ブギー・リヴァイヴァリストにとっての聖典と化している。本作のコールマンも『Sunlight』をテン年代の視点で捉え直したサウンドを展開しているというわけだ。

『Self Taught』でもヴォコーダーで歌っていたコールマンだが、本作のそれは添え物ではなく、ザップのロジャーを彷彿とさせる主役感に溢れた堂々としたもの。『Resistance』には、そのザップやPファンク、レーベルメイトのサンダーキャットが『Drunk』で大々的に取り入れて話題を呼んだAOR、そしてもちろんドクター・ドレーやDJクイックといったギャングスタ・ラップに影響された曲まで収録されており、ロサンゼルスのアフリカ系キッズが愛したファンク・サウンドの歴史を振り返っているかのようだ。

上に掲載した、ビーチでビキニ美女に囲まれながらショルダーキーボードを片手に歌うミュージック・ビデオが強烈なインパクトを放つ“All Around The World”と、カマシ・バンドのヴォーカリスト、パトリース・クインのスピリチャルなヴォーカルに、Gファンク風味のピーヒャラ・シンセが絡みつく“Giant Feelings”の振幅の大きさは、ブランドン・コールマンというミュージシャンのスケールの大きさを象徴している。もしジャズやヒップホップにあまり詳しくなくても、アルバムに耳を傾ければサウンドの背後にある何ともいえない風通しの良さが伝わってくるはずだ。

そんな『Resistance』を入り口に、WCGDのディープな世界を探求していくのもいいし、ギャングスタ・ラップにハマるのもアリだろう。ブランドン・コールマンはそのいずれも歓迎してくれるはずだ。なぜなら彼にとっては、そのどちらも愛してやまない〈音楽〉だからだ。

 


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