インタビュー

映画「her/世界でひとつの彼女」 スパイク・ジョーンズ監督

コンピュータと人間の恋の行方は… ポップでメランコリックなスパイク・ワールド

(C)Photo courtesy of Warner Bros. Pictures

 

 人はなぜ恋に落ちるのか? これまで文学や映画で何度も繰り返されてきた疑問を、鬼才スパイク・ジョーンズがユニークな設定で問いかけたのが最新作『her/世界でひとつの彼女』だ。舞台は近未来のLA。妻と離婚調停中で孤独な毎日を送っているセオドア(ホアキン・フェニックス)は、発売されたばかりのAI(人工知能)型OSを手に入れる。それを自宅で起動させると、人格を持ったOS、〈サマンサ〉(スカーレット・ヨハンソン)が誕生。声だけの存在ながら、知的でユーモアもあるサマンサにセオドアは次第に惹かれていく。SFという設定ながら、物語で描かれているのは昔から変わらない「人が誰かを求める気持ち」だとスパイクは語る。

 「“コンピュータと人間の恋愛”という未来的なテーマを含んではいるけれど、僕が興味を持っていたのは人が誰かを求める気持ちなんだ。セオドアが暮らす未来都市みたいに快適でサービスが行き届いた環境で暮らしていても、人は誰かと関係を持ちたいと思う。それが何故なのかを描きたかったんだ」

(C)Photo courtesy of Warner Bros. Pictures

 

 サマンサと本気で付き合うことを決意するセオドア。一方、急速に進化して人の心を持つようになったサマンサにも“誰かを求める気持ち”が芽生えてセオドアを愛するようになる。しかし、サマンサの変化がセオドアの予想を越えた時、二人の関係に大きな節目が訪れる。興味深いのはその過程で、サマンサがインターネット空間で哲学者のアラン・ワッツ(の人格を再構築したもの)と出会うことだ。

 「サマンサは急激に変化していく自分に戸惑っている。そこでアラン・ワッツと出会う。彼は常に変化している世界を受け入れられないことの重要さを説いた哲学者なんだ。人は愛する人が変ってしまうことに恐れを抱いている。セオドアがまさにそうで、サマンサが変化することに不安を感じるようになるんだ」

(C)Photo courtesy of Warner Bros. Pictures

 

 愛する人が変ってしまうことを、どうやって受け入れたらいいのか。スパイクいわく「大切なのは相手が恋人でも家族でも、毎日『君は誰?』って興味を持つことじゃないかな。難しいと思うけど(笑)」。

 コンピュータと人間の恋愛という奇抜な設定を通じて人間の愛と孤独を見つめた本作。アーケイド・ファイアオーウェン・パレットが手掛けたスコアやカレン・Oによる主題歌《The Moon Song》といった親密な空気を感じさせる音楽、川内倫子の写真からインスパイアされたという柔らかな光など、「ポップさとメランコリーを並列した」世界観の作り方もスパイクらしい巧みさだ。「メッセージ性のある映画を作ろうとしたことはない。自分が思っていることを表現したいだけ」と語る彼が初めて脚本も手掛けた本作で描かれるのは、スパイク流の恋愛哲学なのかもしれない。

(C)Taro Mizutani

 


映画「her/世界でひとつの彼女」

監督・脚本:スパイク・ジョーンズ
音楽:アーケイド・ファイア/オーウェン・パレット
主題歌:カレンO
出演:ホアキン・フェニックス/エイミー・アダムスルーニー・マーラオリヴィア・ワイルド/スカーレット・ヨハンソン/他

配給:アスミック・エース(アメリカ 2013年)
◎6/28(土) 新宿ピカデリーほか全国ロードショー

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