カイリー・アービング主演のコメディー映画「アンクル・ドリュー」がいよいよ公開

俺はハーレムを代表するプリティー・マザーファッカーさ(I be that pretty mothafucka', Harlem's what I'm reppin')〉(“Peso”)とラップしたのはエイサップ・ロッキーだが、同じNYのハーレムを舞台としたバスケ×コメディー映画「アンクル・ドリュー」がいよいよ日本でも公開される。本作、人気バスケ選手であるカイリー・アービングが見事な特殊メイクを施してお爺さんに変身し、シャキール・オニールやレジー・ミラーら、歴代のプレイヤーも集結した豪華ドリーム・チームを組んで銀幕を暴れ回るというストーリー。おもな舞台となるのは、ハーレムの聖地、ラッカー・パークだ。

「アンクル・ドリュー」予告編

 

エイサップ・ロッキーら参加、話題の豪華サウンドトラック!

実はこの映画、かねてよりヒップホップ・ファンの間ではその豪華なサウンドトラックの内容も話題になっていた。まず、印象的なのは映画の内容ともばっちりリンクするNY出身のラッパーたちの参加だ。冒頭に引用したエイサップ・ロッキーは、アトランタを代表するグッチ・メイン、そして21サヴェージと共に“Cocky”で参加。この曲、本編ではニック・クロール扮するムーキーが登場するごとに流れており、まるでムーキーを引き立てる不穏なテーマ曲のようにして使用されている。また、ところどころにボールをドリブルする音や、コートの上をスニーカーで踏みつけるような音まで挿入されているので、ぜひ耳を澄ませて聴いてみて。

VARIOUS ARTISTS Uncle Drew RCA/Sony Music Japan International(2018)

そして、ロッキーと同じクルー、エイサップ・モブの盟友であるエイサップ・ファーグが歌う“Harlem Anthem”は、本映画のテーマ曲ともいえる要(かなめ)の曲。ミュージック・ビデオにも「アンクル・ドリュー」本編のクリップがふんだんに使用されている。これまでにリル・ウェインやファット・ジョー、DJキャレドらと組んでヒット曲を多く生み出してきたプロデューサー・チーム、クール&ドレーによる派手なホーン・セクションをフィーチャーしたビートは、映画の期待感を煽るに十分だ。ファーグのリリックのなかにも、デニス・ロッドマンや、実際にラッカー・パークで活躍した〈ストリート・レジェンド〉ことピーウィー・カークランドといったボーラー(バスケ選手を表すスラング)の名が登場する。

『Uncle Drew』収録曲エイサップ・ファーグ“Harlem Anthem”

 

NY・ハーレム発のアーティストと旬なラッパー/シンガーが揃い踏み

そして、ハーレムといえば彼らの名前ナシには語れない。キャムロン、ジム・ジョーンズ、ジュエルズ・サンタナの3名が〈ディプセット〉の名のもとに収録した楽曲が“Stronger”だ。ディプセットことディプロマッツといえば、2000年代前半からNYのラップ・シーンを盛り上げた最重要グループの一つ。キャムロンの類まれなるラップ・スキルをはじめ、メンバーそれぞれのファッション面でも大きな影響力を誇示していた。ここしばらくはメンバーの不仲や不在が原因で空中分解状態になっていたディプロマッツだが、現在は2017年末頃より、本格的に復活の狼煙を上げている状態。「アンクル・ドリュー」のサントラは、彼らにとっても格好のカムバックの舞台の一つであろう

※編集部注:ディプセットは、感謝祭の11月22日(木)に14年ぶり(!)の新作『Diplomatic Ties』をリリースすることを発表した
 
『Uncle Drew』収録曲ディプセット“Stronger”
 

しかもこの曲、プロデュースを手がけるのは、これまでに“Dipset Anthem”など、ディプロマッツ関連の代表曲をいくつも手がけてきたプロデューサー・チームのヒートメイカーズだ。エイサップ・モブたちも、幼い頃から地元の先輩であるキャムロンらディプロマッツのメンバーへの憧憬の念を抱いていたというし、こうしてハーレムを舞台とした映画のサウンドトラックにこの2つのクルーが時代を繋ぐようにして参加しているというのは何とも感慨深い。

他にも、NY出身のMCの注目株、ブルックリンはベッドフォード=スタイベサント生まれ(通称ベッドスタイ)のレイケリー47も本作に参加。レイケリーはペイズリー柄のマスクが印象的な、ミステリアスな女性MC。ここでは“Chain Gang”において、ヘヴィーなトラックの上で、それに負けぬほどの切れ味のいいラップを聴かせてくれる。また、いまのNYのシーンには欠かせないフレンチ・モンタナとレミー・マーのコンビも“New Thang”で参加。有名選手の名前に加えて、ナイキの定番シューズ、エア・ジョーダンのモデル名などもリリックに織り込んでおり、ここでも映画とリンクする細かい技が光っている。さらに、ウィズ・カリファやキッド・インク、Gイージー、ロジック、2チェインズといった、ヒットチャートでも常連の旬なラッパーたちが揃い踏み。また、カリードやネイオ、トーン・スティスといったR&Bシンガー勢の参加曲も外せない。

『Uncle Drew』収録曲レイケリー47“Chain Gang”
 

そして、本サウンドトラックの最後を飾るのは、“Ridiculous”なるナンバー。歌っているのは、なんと本作の主演も務めたカイリー・アービング本人! ブルーノ・マーズ“24K Magic”などを手掛けるヒットメイカー、ステレオタイプスがプロデュースを務めており、94年のヒット曲“Candy Rain”で知られるソウル・フォー・リアルにかけた〈So for real like candy rain〉なんてフレーズも挿入しながら、キャッチーなR&Bソングに仕上がっている。この曲、もちろん映画本編でもフィーチャーされているので、どうぞお楽しみに。

『Uncle Drew』収録曲カイリー・アーヴィング“Ridiculous”

 

ヒップホップとバスケットボールの強い結びつき

カイリー・アービング以外に「アンクル・ドリュー」で光る演技を見せるのは、リルレル・ハウリーとティファニー・ハディッシュの2人。両者とも、いまハリウッド界で大きな注目を集めるブラック・コメディアン&コメディエンヌだ。ちなみに2人とも現代におけるNYラップ界のキングことジェイ・Zが2017年に発表した“Moonlight”のMVに出演している。

そもそも、カイリー・アービングこそ、これまでにリル・ウェインやリック・ロス、ニッキー・ミナージュなどなど、数多くのラッパーたちがその名をリリック内に織り込んできた超人気選手。最近デビューした注目の新人ラッパー、シェック・ウェス(彼もまた、豊富なバスケ経験があるハーレム出身のラッパー)のデビュー・アルバム『MUDBOY』には、わざわざ“Kyrie”という曲があるくらいだ。それほどに強い結びつきを見せるバスケットボールとヒップホップ。サントラで予習してから作品を観たら、より楽しめること間違いなし。様々なエレメントが凝縮された傑作を、あらゆる角度から味わってほしい。

 


Film Information
「アンクル・ドリュー」
監督:チャールズ・ストーン三世
出演:カイリー・アービング/シャキール・オニール/レジー・ミラー/リルレル・ハウリー/ティファニー・ハディッシュ
配給・宣伝:REGENTS
(2018年/アメリカ/英語/103分/ドルビーサラウンド/カラー/アメリカンビスタ)
原題:UNCLE DREW
東京・渋谷 シネクイント他全国順次公開
Motion Picture Artwork © 2018 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

〈ストーリー〉
マイケル・ジョーダンに憧れバスケットボールを始めた青年ダックス(リルレル・ハウリー)は、あるトラウマから選手の夢を諦め、現在はストリートバスケチームのコーチをし、大会での優勝を目指していた。しかし、ある日突然、チームの主力選手をライバルチームに引き抜かれてしまう。失意の中ダックスは、伝説の選手だったお爺さん、アンクル・ドリュー(カイリー・アービング)と出会う。二人はかつての仲間を集め、伝説のチームを復活させ、バスケの聖地〈ラッカー・パーク〉で開催される大会に挑むことに……。果たしてダックスの夢はかなうの!? そして、ドリューたちはかつての輝きを取り戻すことができるのか――!?