Mikiki編集部のスタッフ4名が〈トキめいた邦楽ソング〉をレコメンドする週刊連載、〈Mikikiの歌謡日!〉。更新は毎週火曜(歌謡)日、新着楽曲を軸にマイブームな音楽を紹介していきますので、毎週チェックしてもらえると思いがけない出会いがあるかもしれません。紹介した楽曲はSpotifyとYouTubeのプレイリストにまとめているので、併せてお楽しみください! *Mikiki編集部

★〈Mikikiの歌謡日!〉記事一覧

Spotifyのプレイリスト
 
YouTubeのプレイリスト

 


【天野龍太郎】

Tohji “HI-CHEW (prod. MURVSAKI)”

いつも僕は〈今週の一曲〉的なものを決めていて、それを一番初めに紹介しています。そんなわけで、今週はこちらです。

ミックステープ『angel』をついにリリースしたラッパー・Tohji。トラップ、SoundCloudラップ、エモ・ラップ、うんぬん。そういった、主にアメリカのラップの潮流にヴィヴィッドに、ナチュラルに反応しているのが彼で、このビデオを観ても彼がXXXテンタシオンやトラヴィス・スコットを〈同時代の仲間〉というふうに見ているようなアティテュードが感じられます。本当にここ最近、よく名前を聞くのがTohjiで、彼がこれからどんな飛躍を見せてくれるのか楽しみでなりません。めまぐるしく移り変わっていくラップ・ゲームのなかで、次に勝者となるのは彼かも。

 

dodo “renq”

この連載、毎週のようにdodoの新曲を紹介している気がします。〈renq〉っていうのは〈連休〉なんですね。ナチュラルに、ぽろっと曲が〈出てきてしまう〉感じの彼のスタイルがすごく好きです。

 

Daichi Yamamoto “She II Feat.jjj”

そして、彼の名前も昨年からよく聞きます。Daichi Yamamoto。アルバム『Andless』が9月4日(水)にリリースされることも発表され、ますます勢いづいているように感じます。この曲ではjjjをフィーチャー。内省的なリリックや曲調に引き込まれます。

 

米津玄師 “パプリカ”

これはもう、プロダクションがすばらしいです。トラップ、ヒップホップ、R&B、フューチャー・ベース、あるいはK-Pop。そういったものから受けた影響をかき混ぜ、抽出と精錬をし、そして意図的に、いかにも和風な音や意匠を振りかけることで生まれた見事な一曲だと思いました。歌謡曲にしろ、ニューミュージックにしろ、その音の背景には〈洋楽〉との緊張関係が歴史的に、常にあったわけですが、まさにいまそれを体を張って表現しているのが米津玄師。だからこそ、彼の音楽は正しく〈J-Pop〉なんでしょう。

 

OGRE YOU ASSHOLE “さわれないのに”

すばらしい“動物的/人間的”に続くニュー・シングル。ロック的な“動物的/人間的”から一転、この“さわれないのに”は、ねばっとしたマシーン・ファンクです。オウガも9月4日に新作『新しい人』をリリースするということですが、どんなアルバムになっているのか想像できません。

 

折坂悠太 “朝顔”

なんてこった。月9ドラマ「監察医 朝顔」の主題歌に大抜擢された折坂さん。折坂さんの歌声が毎週、全国のお茶の間で聴かれているわけですね。すごいぜ。心なしか、折坂さんのまっすぐな歌心や歌謡感が強調された一曲になっているように感じます。弾き語りツーマン・ツアー〈折坂悠太のツーと言えばカー〉でイ・ランさんと共演するとのことですので、予習にはぜひ折坂悠太×イ・ランの対談記事を! そのツアーで共演するbutajiさんといい、〈歌手〉然としたパワフルな音楽家がたくさんいることに心強さを感じます。これもまたJ-Popの一つの側面ですね。

 

川本真琴と峯田和伸 “新しい友達 II”

川本さんの9年ぶり(!)のフル・アルバム『新しい友達』がリリースされました。そして、この“新しい友達 II”のビデオについてのドキュメンタリーもYouTubeで観られるようになりました。というわけで、改めてこの曲を紹介させてください。久下惠生さんと伊賀航さんのストレートなロックンロール・ビートも、一発でそれとわかってしまう豊田道倫さんの歪んだギターも、ドラマティックな林正樹さんのピアノも、主役2人の歌も実に感動的です。6分近い曲の長さにも必然性を感じますし、ビデオを観ていると、曽我部さんが走っている意味や理由もなんとなくわかってくるような気がします。ドキュメンタリーの最後の最後に川本さんが語った言葉が忘れられません。

 

【田中亮太】

田中ヤコブ “TOIVONEN”

〈明日がどうなるかは誰にだってわからない。だから、やってみるしかないんですよ〉。先日、尊敬してやまない年長の友人に言われた言葉がずっと心に残っています。田中ヤコブのこの新曲は、これまでだって、これからだって負け続ける人たちにとって、それでも挑み続ける日々のサウンドトラックとなるでしょう。僕だってそう。

 

エンヤコーラーズ “眠りすぎたお昼”

(別の)友だちが教えてくれた9人組。初期ソウルセットを彷彿とさせる内省的な言葉と、いくばくかの不穏さ漂うサイケな演奏が不思議なポップさを醸しています。元・森は生きているの増村和彦がパーカッションでゲスト参加。この曲も収録したDLコード封入のオリジナルデザイン銭湯タオルが、ライヴ会場などで販売されています

 

Neon Nonthana & Eco Skinny “IRREGULAR LIFE”

(これまた別の)友だちが昨日教えてくれた曲。すみません……公開から2か月も経ってますね。〈タピオカ片手にfeel like I’m a jk〉のワン・フレーズで、もっていかれました。ラッパー2人のキャラもいいし、トラックもカッコいい。ちなみに本日の20時に新曲“joyman”のMVが公開されますよ。

 

大石晴子 “肌”

6月11日公開の当連載で紹介した大石晴子さんが先週、EP『賛美』をリリースしました。彼女温かな歌声を前面に据えたエレガントなソウル作品に仕上がっています。まずは『賛美』を必聴とプッシュしつつ、ひときわグルーヴィーなこの“肌”を聴くと、〈めちゃくちゃ踊れる〉大石晴子も聴いてみたい……と早くも次への期待も高まるわけで。

 

Haus “Tokyo”

バンドの詳細はわからないんですが、パンク界隈なのでは……と思います(間違ってたらすみません)。Hausというインスト・バンドが7月にリリースした5曲入りデモCDRから1曲。センチメンタルを加速させる力強いアンサンブルと、哀愁漂う管楽器の音色が重なっていて、エモ経由のエキゾチカ(夕暮れどき)って感じでしょうか。デモにはダニエル・ジョンストン“True Love Will Find You In The End”のカヴァーも収録。サンクラで全曲聴けます

 

【高見香那】

BEYOOOOONDS “眼鏡の男の子”

松岡茉優が推していることでも知られる、ハロプロの一風変わった12人組グループが8月7日にメジャー・デビュー。早速オリコン1位を獲るなど話題ですが、おもしろいですー。メンバーに演技経験者が多くセリフを交えた曲が多いとのことで、何度も再生したくなる中毒性のあるこのシングル表題曲も1分半ほどの漫画仕立ての寸劇からスタート。メガネの美少年役を演じた前田こころさん、そのメガネくんに恋する山﨑夢羽さんをはじめ、芸達者な〈特別な女の子〉がたくさんで、これからどうなっちゃうのか今後が気になる木です……。ヴィレッジ・ピープルのカヴァーをしているのも(本シングル収録)これまた気になる木……。

 

キッズおとめキャンディランド “ヨーギミ”

Twitterをグルグルしていて出会った、Oeu!See!God!Fun!(おいしーごはん)というグループのメンバーから成る女性ふたり組ユニット(オフィシャル・アカウントによると〈ギャルサー〉)。〈タンスに×3 ゴンゴン、一度は行ってみたいっすロンドン〉の韻踏みに笑ってしまった。

 

【酒井優考】

日食なつこ “perennial”

日食さんが長い髪をバッサリいったことは衝撃でしたが、同時に発表されたこの曲はさらに衝撃で。製薬会社の広告に使用されているこの曲は、〈一度二度のコースアウトはご愛嬌のうち〉、〈当たり前に幸も不幸も時と共に去ってく/悲しがることはないそれこそが人生〉(※酒井聴き取りなので違うかも)と、誰しもある失敗や不幸を悔いるわけでも責めるわけでもなく、大自然のように受け入れ、進め、と強く優しく歌ってくれます。硬いイメージのくるみを柔らかさの比喩に使うだなんて素敵だな。興味ある方、ぜひ歌詞を聴き取って起こしてもらいたいです。声やピアノはもちろん、弦アンサンブルも美しい。