毎週火曜(歌謡)日に更新中の、Mikiki編集部員とTOWER DOORS担当・小峯による、最近トキめいた邦楽曲をレコメンドする週刊連載〈Mikikiの歌謡日!〉。今週は第54回です。紹介した楽曲はSpotifyのプレイリストにもまとめているので、併せてお楽しみください。 *Mikiki編集部
【酒井優考】
masunoism “Bloopers”
川﨑レオンが始めた新たなプロジェクト、マスノイズム。転調と転リズムとナイフのごとき鋭い言葉で、このつまんない世の中に一石を投じてくれると思います。マジで最近つまんなすぎるもん。
kiarayui “飛沫”
シンプルなビートに乗せてリズミカルに畳みかける言葉たち。そのバックに聴こえる泡のようなノイズ。そしてそれら全部を視覚化してるMV……全部かわいいさみしい切ない。
日食なつこ“百万里”(「いわて山形村短角牛肥育部会(日食なつこver.)」)
冷たく厳しく、けれど力強く雄大な大自然に合う歌が4月1日に配信リリース。ご本人も言ってる通り、動画だけでなくぜひ短角牛のサイトを見てみてください。
パスピエ “まだら”
以前曲だけは紹介しましたが、MVがアップされたので再度。最高に気持ちいい気持ち悪さ。日本にはもっともっと変態的な音楽が必要です。
カムラ ミカウ “luminous”
こちらもMV来た! サビまでの起伏がカッコいいからそっちに集中して聴き逃しそうになるけど、歌詞がヤバい。〈クヨクヨしてないで前向きに生きようぜ〉っていうよくあるポジティヴソングじゃなく、〈現実に目を向けないならその目をくり抜いちゃうし、肯定の言葉が届かないなら耳を削ぎ落しちゃうぞ〉っていう猟奇的ポジティヴ。最高。
【天野龍太郎】
OK?NO!! “How Have You Been?”
上野翔、reddam、カンノアキオらによるバンド、OK?NO!!。結成から10年、解散から5年ということで新曲が突然届けられました。本当にびっくり。そして、涙が出るほど素晴らしい。〈How Have You Been?〉って、こっちのせりふだよ。
tofubeats “SOMEBODY TORE MY P”
そして、こちらもめちゃくちゃ最高な一曲。アシッドでレイヴ。こういうのが聴きたかった! いま私たちに足りないのは、こういうレイヴなんです。ああ、どこかでレイヴやらないかな。でもいまの情勢的には自宅でひとり、ソーシャル・ディスタンシング・レイヴ? tofubeatsが3月27日(金)にリリースするニューEP『TBEP』から。
Dos Monos “スキゾインディアン(Schizoidian)”
アルバム『Dos City』リリース1周年を記念して公開されたビデオ。FELT Zineによるデジタルでポリゴンでトラッシーな映像にくらくら。ビートもラップも最高、と再確認しました。
5lack feat. MACCHO “透明少女”
ニュー・アルバム『この景色も越へて』から話題の一曲。5lackのセンシュアルな歌とラップ、MACCHOのハードなラップにしびれまくり。アルバムまるごと素晴らしいです。
星野源 feat. PUNPEE “さらしもの”
全曲最高なEP『Same Thing』のなかでも特に好きな曲。オオクボリュウさんの最高なアニメーションによるビデオが公開されました。改めて聴くと、けっこう意味深なリリックですよね。
サニーデイ・サービス “コンビニのコーヒー”
サプライズ・リリース(もはや平常運転?)された新作『いいね!』から。全曲超いいね! なかでも好きなのは、リアルな街のロックンロール“コンビニのコーヒー”とメランコリックな“エントロピー・ラブ”。亮太さんとの合評もぜひ読んでほしいです。
中村ジョー&イーストウッズ “君は馬鹿だな”
ROSE RECORDSから4月3日(金)にリリースされるニュー・シングル。ホーンのリフレインがなんともせつなくて、ぎゅぎゅっと沁みるソウル・ミュージック。
スカート “駆ける”
お正月、箱根駅伝の放送中にサッポロビールとのタイアップ・ソングとしてCMで流れた“駆ける”。話題の曲がシングルとしてリリースされました。駅伝の曲で〈駆ける〉というタイトルなのに、いや、だからこそこのテンポとアレンジというのが、なんともスカートらしいなと思います。
カンケ “私の天竺 - My Blue Heaven -”
RYUTistが〈越後獅子娘〉としてコーラスを添えたカンケさんの曲。4人のキュートな歌声とニューオーリンズ・ミーツ・ハワイアン(?)なアレンジが楽しい。原曲はファッツ・ドミノなどで有名なスタンダード・ナンバー。
downy “砂上、燃ユ。残像”
ニュー・アルバム『第七作品集「無題」』が私のタイムラインでは絶賛の嵐。ああ、こんなところまでいってしまったんだ、というサウンドで、誰もたどり着けない地の果てで鳴っているようなロックだと思います。
EASTOKLAB “Contrail”
6月3日(水)にリリースされる『Fake Planets』から。生演奏を重視し、とにかくたくさんライブをやっているEASTOKLABだからこその身体性や躍動感、日置逸人くんの伸びやかな歌が印象的です。バンドとしてどんどん進化していますね。
ウリチパン郡 “ゼノン(Live At 下北沢BASEMENT BAR 2009.5.21)”
ウリチパン郡の『ジャイアント・クラブ』(2008年)がリリースされて12年。長らく廃盤だった掛け値なしのマスターピースがついにリイシュー! 再発を記念して、ライブ映像が公開されました(貴重なライブ映像がオオルタイチさんのYouTubeチャンネルにたくさん上がっています)。それにしても“ゼノン”、超名曲ですね。
オオルさん、YTAMOさん、千住宗臣さん、亀井奈穂子さんによるスーパー・バンド、ウリチパン郡の『ジャイアント・クラブ』はCDとBandcampで販売されています。未聴の方はマストで聴きましょう。OORUTAICHI with SPECIAL BAND『HOTOKENO』も同時リリース。
【田中亮太】
Helsinki Lambda Club “午時葵”
この曲のプレスリリースではテーム・インパラやアンダーワールドといった名前が引き合いに出されていましたが、いざ聴いてみたらザ・フーの“Baba O’Riley”だったりフォーマットの“The First Single”だったりを思い浮かべました。加えて、ワイルド・ピンクなど80年代のビッグなロックやスプリングスティーン的なサウンドを採り入れた昨今のエモな感じも。これはダンス・ミュージックではまったくなく、いびつにしか踊れないロック・バンドからのフロアへの憧憬。ミラーボールの下で橋本薫が明かせた、本当の気持ち。この青臭いロマンティシズムにはとうてい抗えません。
Us “Ravens”
東京を拠点に活動する3人組、Usが初のMVを公開。カリスマティックで少しリアム・ギャラガー感の漂うフロントマンと2人のギタリストという編成がまずユニーク。トラップ~エモ・ラップの系譜にあるトラックと、重厚で妖艶なロック・アンサンブルの正面衝突っぶりにヤラれました。こいつはかっこいい!
CEMETERY “LULL4BY FOR BROTHER”
一周忌を迎える幼馴染に捧げたという、刹那な疾走感に溢れたBPM142のハード・テクノ。
ステレオガール “春眠”
4月15日(水)リリースのファースト・アルバム『Pink Fog』より。ラウドでアンセミックでありつつ、ほんのりサイケでしっかりグルーヴィー。4枚目くらいのオアシスがやろうとしてやりきれなかったことを、もしかしたら彼女たちはやれているのかも。先日、5人全員へのインタビューも収録してきました。
satoru ono “eve_of_200323”
数々のロックな逸話と珠玉のメロディー・センスでその名をインディー・シーンに轟かせていた天才ソングライター、satoru ono。ここ数年の活動は控えめでしたが、先日からサンクラにデモを大量に公開しだしています。今回はそれらのデモより、“Radio, Radio”調のイントロから胸を熱くさせてやまないパブ・ロックなこの曲をピックアップ。もともとは“革命前夜 - eve of revolution (demo version)”として2011年にbandcampで公開されていたもので、約10年越しの完成(と正式なリリース)を待ち焦がれずにはいられません。
haikarahakuti “new land”
サニーデイ新作『いいね!』も大評判の曽我部さん率いるROSEから、新潟の至宝と言うべきバレアリック・ポップ・デュオの新曲が到着しました。ローファイなリズムボックスの音が奏でる、ブルーな倦怠。やや唐突に終わるのもいまの気分にフィットします。プツン。
【小峯崇嗣】
TOSH “Piece of Trash”
沖縄拠点に活動するSSW、TOSHのデビューEP『In My Room.』からの紹介。今後要注目になること間違いなしの新人です。インディー・ロックからR&B、そしてヒップホップテイストを楽曲に織り交ぜたメロウな一曲です。小袋成彬やShin Skiuraなど好きな方におすすめです。
POLY ”my mind”
元MINT mate box (ベース)のやすだちひろによるソロプロジェクト、POLYのデビューミニアルバム『MIRROR』から。ベッドルームポップ感溢れるゆるい雰囲気がたまらないですね。さとうもかやクライロ(Clairo)など好きな人にぜひおすすめしたいです。