Mikiki編集部員とTOWER DOORS担当・小峯崇嗣が最近トキめいた邦楽曲をレコメンドする毎週火曜日更新の週刊連載〈Mikikiの歌謡日!〉。今回は記念すべき第100回です。紹介した楽曲はSpotifyのプレイリストにもまとめているので、併せてお楽しみください。 *Mikiki編集部
【小峯崇嗣】
週末CITY PLAY BOYZ “SHE IS ALIEN”
福岡拠点に活動するヒップホップ・クルー、週末CITY PLAY BOYZが約2年ぶりとなる新作アルバム『SHE IS ALIEN』をリリースしました。その表題曲のミュージック・ビデオが公開。悲しげなトラックですが、エモーショナルな展開をする一曲に仕上がっています。このMVは彼らのYouTubeチャンネルで公開されている〈chapter1~4〉の最終章となっているので、ストーリー仕立ての構成にも注目してほしいです。
the mellows “My blooms”
大坂を拠点に活動するバンド、the mellowsがニュー・アルバム『BLMS』をリリース。同作から“My blooms”を紹介。メランコリックでダークなインディー・サウンドと、甘美で艶やかな歌声に魅了される一曲に仕上げています。the mellowsの確立された独特なレトロ・サウンドには毎回驚かされます。
さらさ “グレーゾーン”
湘南出身で現在は都内を近郊に活動するシンガー・ソングライターのさらさが、ライブ会場などで先行で販売していたデビューEP『グレーゾーン』のストリーミング配信を開始しました。宙に浮いたようなメロウで陶酔的なメロディーと、彼女の耽美的でソウルフルな歌声に魅了される一曲に仕上がっています。さらさにはTOWER DOORSからメール・インタビュー〈6つの質問〉を行っていますので、気になった方はそちらもチェックしてみてください。
【田中亮太】
下津光史 “Michel”
3月24日(水)にリリースされるソロ2作目『Transient world』からの先行曲。軽やかに跳ねるリズムと凛としたギターの音にうながされ、私は外へと駆けだす。管楽器の奏でるフレーズは、風のように心地よい。春はもうすぐ。
Nagakumo “テレビショウ”
関西を拠点に活動する4人組が3月10日にリリースした初EP『PLAN ep』の収録曲。彼らは〈ネオ・ネオアコ〉を標榜しているそうで、この曲もジャジーでグルーヴィーなアンサンブルとパンキッシュな疾走感を巧みに融合させています。いまもっともカジヒデキさんに聴かせたいバンド(笑)。
【酒井優考】
MOKU “巻き髪”
吉祥寺を拠点に活動する4人組……というところまでは分かってるんだけど、オフィシャルサイトも公式Twitterも何もない!(作ったろうか?) CD-R売ってるtoosmell recordsに問い合わせてもいつやってんだか分からないし! ちょっとサイケでフォーキーで、ちょっといなたくて(褒め言葉)、モヤモヤっとしていて、でもなんだか美しくって、いま一番気になっているバンドです。後期ゆらゆら帝国とかが好きな人は好きかもしれません。前作“穴掘り”もオススメ。
Start A People “セブンスター”
元・絶景クジラのナツコ・ポラリス、現・DIALUCKの夏としても活動する彼女の100%宅録ソロ・ユニット。〈嫌なことはぜんぶ 幸せにむかう為ならいいな〉。
Roomania “ミケネコ”
犬を飼っていますが、自分ちの犬以外は猫派です。
日食なつこ “音楽のすゝめ”
音楽万歳。
WangDangDoodle “I gotta go”
ヴォーカル・ブルースハープの大久保紅葉と、ギター・マニピュレーターのカホリによるユニット。ノリノリで、ブルージーで、ラップもあって、スモーキーな歌もあって、強い女だけどキュートなところもあって……要素てんこ盛り。ブルースハープかっけえ~!
【天野龍太郎】
川本真琴 “カートコバーンと両想いになりたいガール”
作り込まれた入魂の無観客配信ライブ〈宇宙の竜宮城と人魚〉からのシングル・カット(?)。まず曲名がすごい! そして、ルート音を中心に淡々と弾く伊賀航さんのベースと川本真琴さんのヴォーカルだけ、という削ぎ落されたパフォーマンスに圧倒されました。このミニマルな空気からは『川本真琴 and 幽霊』(2012年)のムードを感じるのと、あと〈車〉のモチーフが登場する幻想的な歌詞の世界は『gobbledygook』(2001年)を思わせます。SINA SUIENの有本ゆみこさんによるファンタジックでエレガントな空間演出・照明・色彩と、(ちょっと笑っちゃうような)謎めいた演出もすごい。4月には映像作品「完全版・宇宙の竜宮城と人魚」がデジタルでリリースされるとのことで、とても楽しみですね。
【鈴木英之介】
Salyu “Taxi”
作編曲がYaffle、作詞が小袋成彬という豪華な布陣で制作されたSalyuの新曲は、ジェイムズ・ブレイクやウィークエンドなどに通ずる雰囲気をもった、静謐でメランコリックなナンバー。切なく叙情的な歌詞と細部まで緻密に編まれたトラック、そして何よりSalyuの静かに熱を帯びた歌唱が互いを引き立て合い、唯一無二の世界を作り上げている。また、まるで夢遊病者のごとく妖しく優美に舞うダンサーの姿をモノクロ映像で捉えたMVも素晴らしい出来栄え。視聴覚を総動員して味わいたい総合芸術だ。
桑原あい “Leonora's Love Theme(レオノーラの愛のテーマ)”
アルゼンチン・タンゴの革新者であるアストル・ピアソラの名曲を、ジャズ・ピアニストの桑原あいがカヴァーした逸品。野性的でありながら優雅な、情熱的でありながら抑制のきいた桑原のピアノ演奏の素晴らしさに、思わず息を呑んでしまう。またバンドネオンを軸に演奏される、いわゆるタンゴのスタイルではなく、ピアノ一台でソナタのように演奏されることで、ピアソラの曲に内在していた狂おしいほどのロマンティシズムがかえって浮き彫りになっているように感じられる。