凄まじい勢いと刺激的なクリエイティヴで周囲を巻き込みながら猛進する、ポップでアーティスティックなサウンドの大群――新しい時代の感受性よ、いまこそ共鳴せよ!
どこを切っても筋が通ってる
ヌー(哺乳綱ウシ目ウシ科ヌー属)はアフリカ大陸を移動しながら小さな群れを吸収し、時に数十万頭に及ぶ大群になるという。〈ヌーの如く人を巻き込む力を持つバンドであれ〉という意思を込め、バンドの首謀者である常田大希によって名付けられたKing Gnu(キング・ヌー)は、瞬く間に耳聡いリスナーの注目を浴びる存在になった。2017年10月のファースト・アルバム『Tokyo Rendez-Vous』から“Vinyl”“Tokyo Rendez-Vous”など斬新なMVがYouTubeヒットを記録し、同時期に米津玄師のアルバム『BOOTLEG』に常田が演奏&プロデュースで参加したことで、その名は一気にマス・レヴェルへと知れ渡り、現在に至る。
「もともと〈こういう音楽をやりたい〉というものがあって、それに適した人を探していたんですね。例えばドラムだったら派手に叩ける奴、とか」(常田大希、ギター/ヴォーカル)。
「俺と大希がセッションで出会って、俺がいちばん好きなベーシストを連れてきて、大希が幼馴染みのヴォーカリストを呼んで、4人が集まった感じです」(勢喜遊、ドラムス/サンプラー)。
「話したいことがあるって、渋谷のカフェに呼び出された気がする。〈おまえを入れたいと思ってるんだけど〉と言われて、〈やりたい〉って即答しました」(井口理、ヴォーカル/キーボード)。
「理はとてもマス向きな声をしていて、技術があっていろんな声が出せる」(常田)。
「僕はブラックなノリのセッション・ミュージシャンをやってた時期があって。一度サポートをやった時にそういう要素がバチッとハマったみたいで、そのまま加入したという感じです」(新井和輝、ベース)。
みずからの音楽スタイルを〈トーキョー・ニュー・ミクスチャー・スタイル〉と称するように、その音楽性は実にエクレクティックかつ多岐に渡る。新井はジャズやブラック・ミュージック、勢喜はダンス・ミュージック、常田と井口は東京藝術大学でアカデミックな教育を受けつつ、井口はJ-Pop、常田はオルタナティヴ・ロックを中心にオールマイティーに――そのような多様なルーツや嗜好を活かし、常田の描く設計図を元にキャッチーな現代的ミクスチャーに着地させるのがKing Gnuスタイルと言っていい。
「俺はどこのシーンにいたというわけでもなくて、あらゆるところに足を突っ込んでた感じですね。そこで学んだこととして、例えばセッション界隈ではすごくプレイヤーシップが素晴らしい反面で歌詞やサウンド・プロデュースが弱いとか、逆にポップスの界隈は言葉の使い方がおもしろいけどサウンドの追求が弱いとか。そういうものを反面教師にして、King Gnuはより強い表現でいいとこ取りバンドになろうとしたんですよ。あらゆる面を切ってもちゃんと筋が通ってるものにする、その意識は他のグループよりも強いんじゃないかな」(常田)。