身も心も、歌って踊る- Deeply Rumba

 パーカッショニスト、ヴォーカリスト、ダンサーとしてティンバ、ルンバ、M-Bass、ジャズなどのグルーヴセッターとして活躍し、2000年代のニューヨークのグルーヴを変えたペドリート・マルティネス。過去20年、ペドリートがNYのミュージシャンに与えたインパクトは計り知れない。スティーヴ・コールマンからウィントン・マルサリスそしてディープ・ルンバ、ジェルバ・ブエナといったバンドでの活動のことをいっているのではない。キューバからNYへ進出し、地元のレストランでルンバのパーティーをオーガナイズし、さらにヴィレッジのZinc Barで毎週木曜の深夜、ルンバ・ナイトを主催。このZinc Barのイヴェントは、現在ペドロの同僚であるロマーン・ディアスに引き継がれている。最近はファンタナメーラというキューバレストランでのセッションを開催。アクセル・トスカが参加するトリオや、現在のペドロ・グループの演奏が楽しめる。こうしてペドロはNYの夜にルンバを仕込み続けてきた。

ALFREDO RODRIGUEZ,PEDRITO MARTINEZ Duologue Mack Avenue(2019)

 このアルフレッド・ロドリゲスとのコラボ・アルバムは、ペドリートの、ルンバとNYのノイズが混じるストリートの流体のような音楽をダイレクトに感じられる好企画だ。アルフレッドはお茶目なYouTuberとしても有名で、これまで彼が上げた動画にはペドリートとのセッションや、今回取り上げた《Thriller》や《Mariposa》を自作オケに合わせ演奏したものなどがあった。馴染みの深いレパートリーと、旧知のペドリートを迎えて新たに制作したのがこの新譜というわけだ。かつて村上龍氏はキューバの音楽をテクノのようだ、と評した。アルフレッドのいくつかの動画には顕著にそういう側面があり、重厚なコーラスや、クラーヴェとのグルーヴの正確なシンクロへの執着は結果、確かにメカニカルな印象を与える。しかしたとえ演奏相手が時計の秒針であっても、クリックであっても彼らの音楽はグルーヴするのだし、しないのならするまで待とうというのが彼らのマナーだし、それはこの上ない一体感を作り上げる。新大陸の東と西へ別れた二人が出会う場所でいつも、我々は気がつけば踊らされ、歌う、のだ。