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メイン・ストリームのラテンと、ラテン・ジャズの中間点に位置するスリリングな音楽

 アルフレッド・ロドリゲスの、4年ぶりのニュー・アルバム『Coral Way』が、届いた。「今までのアルバムは、ピアノ・トリオを中心にして、ゲストを迎える構成にしてきた。リスクを避けるためにも、なるべくシンプルにしたほうが、ライヴでアルバムを再現するにも適していると考えていたんだ。しかし、パンデミックで1年半ほどステージから遠ざかり、自宅で練習と作曲、ストリーミングに没頭していた。そしてライヴ・ミュージックシーンが復活した時に、リスクを恐れずに大きい編成のバンドで、人々を祝福してハッピーにする音楽を作りたいと心の底から思い、そして結成したのが、このバンドだ。このアルバムでは、メイン・ストリームのラテン・ミュージックと、ラテンジャズの間にある距離を近づけ、その中間点にある音楽を創造したい」と、アルフレッドは本作に込めた想いを、語ってくれた。

ALFREDO RODRIGUEZ 『Coral Way』 Mack Avenue/キングインターナショナル(2023)

 「ピアノ・トリオに、ギター、パーカッション、ホーン・セクションが加わったグループだが、“El Llamado”はシマファンク、“Fidju Di Luna”、“Sueño De Luz”ではアラナ・シンケイという2人のシンガーをフィーチャーした。シマファンクは、キューバのジェイムス・ブラウン(ヴォーカル)、プリンス(ヴォーカル/ギター)と言った存在で、キューバ国外でも広く名を知られている。キューバのトラディショナルな音楽と、R&B、ファンクをブレンドできる稀有な才能の持ち主で、このプロジェクトには、必要不可欠なアーティストである。アラナ・シンケイは、ポルトガル生まれのギニア人で、マドリッドで活躍している。ドラムスのマイケル・オリヴィエが紹介してくれた素晴らしいシンガーだ。“Fidju Di Luna”ではポルトガル語と、クレオール語の作詞も手がけ、私の自伝的なストーリーの“Sueño de Luz”では、ノスタルジックなフィーリングを醸し出してくれた」。長いインプロヴィゼーションは、ギグで披露することにして、どの曲もラテン・ポップスの方法論で、濃厚に凝縮されたアレンジが施されている。

 「10年後、20年後に振り返った時に、私のターニング・ポイントとなる作品になった。この音楽は、私の今の人生そのものである。その等身大のサウンドに人々が共感してくれて、繋がりを持つことができたら素晴らしいと思う」とアルフレッドは、雄弁に語る。アーティストとしてのキャリアと人生のステップで、次なるステージに到達したアルフレッド・ロドリゲスが、新たなラテン・ジャズを創造する。