ハウシュカ

美しく語り継がれたクラシックの歌曲をアーティストと共にリメイクし、〈現代の音楽〉へと再生/翻訳する〈RE-CLASSIC STUDIES〉。同プロジェクトは、単純な焼き直しではない、ボーダレスな表現をめざしている。

アピチャッポン・ウィーラセタクンや町田康も賞賛した、Prefuse73をリミキサーに迎えガブリエル・フォーレの作品をフィーチャーした第1弾『RE-FAURÉ』(2017年)に続き、ポスト・クラシカルを代表するピアニスト/作曲家・ハウシュカがクロード・ドビュッシーの音楽をリメイクした第2弾『RE-DEBUSSY』が本日9月13日にリリースされた。

Jessica, 中川瑞葉, HAUSCHKA 『RE-DEBUSSY』 good umbrella(2019)

新作『RE-DEBUSSY』は『RE-FAURÉ』と同様ヴォーカルをJessicaが、ピアノを中川瑞葉が担当。両者の豊かなハーモニーと、ハウシュカによる斬新なサウンド・ディレクションで、名作に新たな表情をもたらしている。ハウシュカ自身も本作への満足度は高いようで、とりわけJessicaについては「超自然的な特別な声を持っていて、フランス語歌曲を解釈しただけでなく、それは私にとってSF映画にさえ思えてくる。彼女はジャズのような音楽を奏でずに、ジャズ的なアプローチとして作品を解釈していて、その方法は作品をより親しみやすいものにしていると思う」と賛辞を送っている。

Jessica

中川瑞葉

また、ハウシュカが『RE-DEBUSSY』の制作秘話を語ったミニ・インタヴューも到着しているので、作品と併せてぜひチェックしてほしい。さらにMikikiでは『RE-DEBUSSY』の特集も近日掲載予定なので、お楽しみに。

ハウシュカ『RE-DEBUSSY』インタヴュー

――RE-CLASSIC STUDIESは、美しいクラシック歌曲を〈現代の音楽〉へと翻訳するプロジェクトですが、あなたにとって古典クラシック音楽、とりわけドビュッシーという作曲家はどのような存在ですか?

「僕は、幼い時からキリスト教のコミュニティーで育ったから、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンの音楽にいつも触れていたんだ。だから、クラシック音楽は私にとって、縁の深いものだったよ。クラシック音楽の細密さや、精巧さが気に入っていた。中でも、ドビュッシーは、僕がよりクラシックを好きになるきっかけとなった作曲家なんだ。彼の作るメランコリックな音が好きだね」

――クラシック音楽のリミックスを手掛けるにあたって、ハウシュカのオリジナル・クリエイションとの違いはありましたか? あるいは、リミックスはあなたにとってどのような意味を持つのでしょうか。

「リミックスは他のアーティストの作品を基にしてする作業だから、様々な方法を試す絶好の機会だと思っている。何より対応力が求められるからね。自分自身を成長させてくれることには、いつもわくわくするよ」

――あなたが選んだ“Les Cloches”は、原曲もリズミカルで涼やかな楽曲です。リミックスで使用している弦やピアノの音質もまた木立の間から降り注ぐ〈鐘(Cloches)〉の音、控えめで、静謐とした光を想起させます。“Les Cloches”から受けたインスピレーションや、セレクトした背景があれば教えてください。

「“Les Cloches”は、僕にポップソングを想起させるものだった。とてもシンプルで美しいメロディーラインを持っていて、詩節、コーラスを含め、(クラシック音楽を)現代の音楽へと翻訳するという作業をする上で、非常に興味深い作品だと判断したんだ」

――今回のリミックスは、ハウシュカ音楽の代名詞とも言える美しい音質がJessicaのヴォーカルとマッチしており、数曲のインタールードを含め、クラシックとポピュラー音楽の間にそびえたつ高い壁を取り払う力があると思いました。そこで、ヴォーカリストであるJessicaの歌、そして当プロジェクトのコンセプトについて、あなたの受けたインプレッションをお聞かせください。

「Jessicaは超自然的で特別な声を持っていて、それは私にとってSF映画にさえ思えてくる。彼女はフランス語歌曲を解釈しただけでなく、ジャズのような音楽を奏でずに、ジャズ的なアプローチをしている。その方法は作品をより親しみやすいものにしていると思う。これは本当に素敵なアルバムになったと思うし、Jessicaの歌とこのアルバムは今後長い間多くの人々を魅了するだろう」