2000年代前半を境によく耳にするようになり、現在もなお枝葉を広げている〈ポスト・クラシカル〉。ここではそのなかでも今年リリースされたピアノ主体の良盤を厳選してご紹介します。まず、本ページの主役であるチリー・ゴンザレスから。アルバムごとに作風が異なることで知られていますが、前作にあたる『Chambers』はピアノ+弦楽四重奏という、まさにクラシック音楽のフォーマットを使用した彼流の室内楽作品に。ところどころでバッハドビュッシーエリック・サティへのオマージュとも取れるパートが確認でき、独創的な旋律とグルーヴ感が素敵な一枚です。

CHILLY GONZALES Chambers Gentle Threat/BEAT(2015)

 

 お次のハウシュカは、〈ポスト・クラシカル〉という言葉が一般化するより以前からプリペアード・ピアノ(ジョン・ケージが考案した、ピアノの弦に釘などを挿して打楽器的なサウンドを生むもの)を一貫して使用し、唯一無二の音楽を奏でてきた人物。『2.11.14』には長尺のライヴ音源を収めており、生でこそのダイナミズムを堪能できます。

HAUSCHKA 2.11.14 windbell(2015)

 さて、この界隈でいまもっとも動向が注目されている一人と言えるのがニルス・フラームでしょう。ピアノ・ソロ盤『Solo』では、一般家庭用のアップライト・ピアノにスポットを当て、8つのモチーフを元に優しいタッチから荒々しいタッチへとコロコロ表情を変える演奏を披露。エモーショナルなインプロヴィゼーションが、聴く者を惹き付けます。

NILS FRAHM Solo Erased Tapes(2015)

 最後はグランドブラザーズの『Dilation』。ハウシュカと同じデュッセルドルフ出身の彼らは、ジャイルズ・ピーターソン監修のコンピ『Brownswood Bubblers Ten』に楽曲が収録されるなど、結成間もないながらも多方面で高い評価を得ているデュオです。このファースト・アルバムではエレクトロニカやジャズ、ミニマルもフォロー。フロアからベッドルームまで対応可能なアコースティック・ビートが心地良く、とても聴きやすい作品ですよ。このグランドブラザーズのように新しい才能も続々と登場しているので、興味を持たれた方はぜひその扉を開いてみてください。

GRANDBROTHERS Dilation Film/ritmo calentito(2015)