INTERVIEW

showmoreの新作『too close to know』に込められた愛と人間模様の物語

井上惇志と根津まなみは〈ソウル〉ミュージックを奏でる

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SIRUPとの“now”誕生秘話

――そこからおのずと、ゲスト・ミュージシャンを自分たちの音楽のイメージに合う形で呼んでいくスタイルになった?

井上「それはわりと自然な交友関係の結果ですね。SIRUPが参加してくれた“now”は、3月にシングルで出した曲なんですけど、もともとは去年のワンマンにゲストを呼びたかったことから始まってるんです。

ゲストには、その年にいちばんいい時間を共有できた人を呼びたいなって。で、パッとSIRUPが浮かんだんですけど、そのときは一緒に曲を作るイメージも特になかった。でも逆に彼のほうがそれを察して、〈俺、出るよ!〉みたいな感じで(笑)。だったら、SIRUPとshowmoreとしての曲を作ろうかって。その時点でライブまで1か月を切っていたんです」

根津「すごいギリギリ。深夜のライブハウスとかで一緒に作ったんです」

井上「でもタイミングが合ったときって、なんの負荷もかからずに音楽が出来てくるんですよね。SIRUPと2人でピアノをポロポロ弾いていたらあのリフが出てきて、根津さんが当時働いていたライブハウスで深夜に恋バナとかをしながらピアノを弾いていたら、自然に出来上がっていって」

『too close to know』収録曲“now (feat. SIRUP)”

――でも、“now”はそういう曲には聴こえないですよね。ラップもEDM的なドロップもあるし、一曲のなかでいろいろなことが起こる、グラデーションがすごくある曲なので。こういう曲が自然に出来たのであれば、それはすごいことだなと。

井上「逆に、こういう曲は作ろうと思って作れるものじゃないなって。途中のボッサっぽいアプローチは、2人の歌に僕がすっと伴奏をして、それで急に出てきたんです。僕はジャズからいまのシーンに来る前、サンバ・チームに2年くらいいて、タンボリンとかを叩いていたんですよ。だからアゴゴとか、上から入れているパーカッション類は、本物のサンバのリズム・パターン。

で、SIRUPが〈サビの後にフューチャー・ベースっぽい感じになったらおもしろいよね〉って言うので、〈それいいじゃん、Shin(Sakiura)ちゃんにお願いしようか〉ってShin Sakiuraに頼んで」

根津「持っているものがそれぞれバラバラだからこそ、こうなったというか。クラブ上がりでR&B育ちのSIRUPと、その要素がまったくないSSWだった私と、どジャズ上がりでヒップホップに行った井上くんと、そういう3人がセッションでぶつかったから、この感じになったんだと思います」

井上「僕は、ミュージシャンにそれぞれの解釈でやってもらうことが多いんです。それで、ちぐはぐになったものを最終的に交通整理する役割のプロデューサーなので。だから、サンバのフィールにしても、本物に寄りすぎないというか、いい意味での中庸に落としこむようにしています。

ベースを弾いている玉木正太郎は、実はパンデイロとかも叩けるくらいブラジル音楽に精通していて、パーカッション的なフィールもベースで出してもらっているんです。そうやっていろいろなミュージシャンがバランスを取り合っているので、決まったフォーマットから狙って作ろうとしても無理なんですよね。簡単には真似できないものが作れたと思います」

 

バランス感を探るプロダクション

――その一方で、“bitter”はストレートにジャズを感じさせる曲ですよね。こういう曲も作品に入っているのがおもしろい。

井上「“bitter”には、いわゆる〈ジャズ歌謡〉へのオマージュを含んだおふざけもありつつ、たとえばホーン・セクションのメンバーだったり、1コーラス毎に転調を繰り返すソロ・パートのコード進行だったり、音楽的なこだわりも入っているんです。〈本物っぽい偽物〉〈偽物っぽい本物〉みたいなコンセプトなので、笑って聴いてくれればって思うんですけど、ただナメさせはしないぞっていう(笑)。

そのバランス感を出せるリズム隊って、あんまりいなくて。“now”と”bitter”はドラマーのタイヘイ、ベーシストの玉木正太郎っていう同じリズム隊なんですよね」

――一方、櫃田良輔さんという別のドラマーが参加している“red”には、リズムの妙味を感じました。エレクトロニカを分解したようなビートから、ドラムンベースっぽいパターンになっていく。それこそ、“now”のように景色が変わっていく曲だなと。

井上「これはめっちゃ苦労しましたね。いちばん最後にアレンジし終わったんです」

根津「元になったデモは私がピアノを弾き語りしたもので、テンポも遅かったし、もっと暗い曲で」

井上「櫃田くんは、タイヘイとは真逆のプレイ・スタイルなんですよ。彼はCICADAってバンドをやってたんですけど、〈俺、これしかできねえ〉みたいな、ものすごく尖ったプレイヤーで(笑)。なので、“red”に関しては完全に素材として演奏を提供してもらいました。

これをどうやったらおもろいバランスにできるかなって思ったとき、SoulflexのMori Zentaroくんに相談したら、〈IDMっぽいニュアンスを入れたらおもしろいんじゃないか〉って。でも、後半はもっとポップにしています。尖った部分とストレートにポップな部分、ドラムの素材と打ち込みをうまいこと合わせて、中間のおいしい部分をずっと探しながら、締め切り直前までやっていました」

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