(左から)荒谷翔大、田中慧、野元喬文、斉藤雄哉

福岡在住の4人組バンド、yonawoがセカンド・フル・アルバム『遙かいま』を完成させた。シングルとして先行配信された冨田恵一プロデュースの“哀してる”はオリエンタルな旋律がリピートされる新感覚のミドル・テンポ・バラード、亀田誠治プロデュースの“闇燦々”は追い立てられるような荒谷翔大のヴォーカルが新鮮なAOR調。この2曲を中心に、新世代ネオ・ソウル・バンドというイメージもあった以前のスタイルから、よりメロディーと歌が際立ったアプローチに大きく進化した。地元の福岡にプライベート・スタジオを作ったこともバンドの進化を後押ししたという。

約9ヵ月前にリリースしたファースト・フル・アルバム『明日は当然来ないでしょ』(2020年)には荒谷による短編小説が付いていたが、今作には別途詩が付いている。その点で、前作から引き続き〈時間の感覚〉を切口に、荒谷の詩人としての円熟を感じられるアルバムでもある。

荒谷翔大(ヴォーカル)、斉藤雄哉(ギター)、田中慧(ベース)、野元喬文(ドラムス)の4人に『遙かいま』について訊いた。

yonawo 『遙かいま』 ワーナー(2021)

 

福岡に建てたスタジオで育んだバラエティー豊かなアルバム

──『遙かいま』はyonawoの新しい面がたくさん出ていて、かなりの進化作だと思うのですが、どんなアルバムになったと思いますか?

荒谷翔大「個人的にもバンド的にもやりたいことを1曲ずつ違う形でできたと思ってます。前のアルバムを作った後、地元の福岡に自分たちのスタジオを作ったんです。今回スケジュールは結構タイトだったんですが、スタジオができたおかげですぐみんなで集まって作業できたこともあって、満足に作れた感じはしますね」

斉藤雄哉「うん。前は最初のノリみたいなものを大事にしてたんですが、今回ベースとギターはほとんど福岡のスタジオで録ったから、時間に縛られずに練れましたね。これまでのyonawoっぽさもあるけど、全然違う感じもあって、yonawoのイメージを良い意味で崩せたかなと思ってます。やりたかったことをいっぱい入れられて楽しかったですね」

田中慧「前作は、アルバム1枚でひとつの塊のような流れがありましたけど、今回は個々の主張が強い曲が多い気がしてて。全体のまとまりというよりは、1曲1曲それぞれのストーリーが集まった感じがするのでバラエティーに富んでるなと思いました」

――1曲ごとにやりたかったことというと、具体的にどういうことでしょう?

荒谷「“The Buzz Cafe”は雄哉が初めて作曲した曲を、みんなでセッションで作り上げるっていう初めての作り方をしましたね。

“闇燦々”は自分の中では(マイケル・ジャクソンの)“Rock With You”(79年)をテーマにしてて。こういうグルーヴは今までyonawoにはなかったし。〈お嬢さん close your eyes〉って歌詞があるんですけど、それは“Rock With You”の歌詞の一文目の〈Girl, close your eyes〉から拝借したんです。

マイケル・ジャクソンの79年作『Off The Wall』収録曲“Rock With You”

“哀してる”は、自分の好きな歌謡曲をテーマにしたらどうなるだろうと思って中島みゆきさんの“化粧”(78年)をイメージしました。ずっとライブでやってた“浪漫”もやっと音源化できたし。

あと、“はっぴいめりいくりすます”は自分たちのスタジオでセットを組んでせーので録った曲で。スタジオがなかったらこういう形にはならなかったと思いますね。それだけたくさん挑戦できたのも、時間的な余裕や、みんなで集まれる空間があったからだと思います」