(左から)柳澤豊、竹田綾子、玉置周啓、加藤成順

MONO NO AWAREといえば、キャッチーでフックのあるメロディと創意あふれるサウンドで知られる4人組バンド。 サカナクションの山口一郎やZAZEN BOYSの向井秀徳、米津玄師も一目置く存在である。

前作『行列のできる方舟』(2021年)から約3年ぶりとなる新作のタイトルは、『ザ・ビュッフェ』。ボーカル/ギターでソングライターの玉置周啓によれば、このタイトルには、コロナ禍以降を反映した想いが込められているという。だが、それ以上に本作で注視/瞠目すべきは、有機的かつ立体的なバンドサウンドだろう。各楽器の絡み合いが重層的なアンサンブルを創出しており、メンバー4人のスキル/アイディア面での成長・成熟の痕跡が克明に刻まれている。

玉置周啓、加藤成順(ギター/コーラス)、竹田綾子(ベース/コーラス)、柳澤豊(ドラム/コーラス)に話を訊いた。

MONO NO AWARE 『ザ・ビュッフェ』 SPACE SHOWER(2024)

 

コロナ禍を経て、生きづらさを〈笑い〉で打開するアルバム

――資料にも〈遊び心あふれる〉と書いてありますけど、茶目っ気とかユーモアがあって、ほっこりするアルバムだなと思いました。全体のトーンも、前作に比べてずいぶん明るいですね。

玉置周啓「それは初めて言われたんですけど、いちばんありがたい感想です。ほっこりさせたくて作ったんですけど、割と真面目に捉えられがちなので」

――アルバムタイトルが『ザ・ビュッフェ』ですが、これはどの段階で出てきたんですか?

玉置「メンバーとデザイナーで会議を開いたんです。同じコミュニティに属しているわけじゃない人が集う場所、というのをテーマにしようと思って〈具体的に何があるだろう?〉って。例えば、空港のターミナルとか銭湯とかコインランドリーとかも浮かびました。ビュッフェは、食べ放題の場所に、普段関わりのない人たちがご飯を食べたい一心で集まるのが面白いかなって」

――そもそも人が集まる場所に目がいったのは、コロナ禍があったことも関係ありますか?

玉置「そうですね。去年、コロナ禍が明けて、人が色々な場所に戻り始めてきたじゃないですか。けど、コロナ禍に皆が人目を気にしてふるまうというか、世間体が支配的だった時期が長く続いていた気がして。それをちょっと主体とか主観の方に揺り戻すようなことを意識していました。既発曲のニュアンスがそういうテーマに基づいていたこともあって、アルバム全体もそのトーンで括ろうっていう話になったんです」

竹田綾子「前作の『行列のできる方舟』がちょっと暗めだったから、今回は〈食〉をテーマにすることで変えたかった、とは言っていたよね? 気まずいんだけど皆が同じテーブルでご飯食べているのが、共存を表しているみたいな」

玉置「そうそう。人間関係のややこしさとか生きづらさに話を持っていくんじゃなくて、そういうものをある意味暴力的に打開するアルバムにしたくて。どっちかっていうと笑える方向に行きたかった。それこそほっこりするような。

で、ビュッフェって音声学的にみても気の抜ける音じゃないですか(笑)。そういう、カタくないタイトルがあってテーマも明るくなっていきましたね」

――歌詞にはダジャレもありますしね。〈肉たらしく〉とか〈おぬしは食わねどいつも用事〉とか〈お察し身〉とか(笑)。

玉置「まさにそうですね(笑)。ただ、歌詞ばっかりに目がいくのがどうかなとは思ってはいて。いわゆるカギカッコ付きのメッセージ性みたいなものは歌詞には書くけど、そこにだけ頼るんだったらバンドで音楽をやる意味ないなって。それより4人でどういう発見ができて、興奮できるかっていうノリのほうが大事で。要するに4人が集まった時のノリ。そっちのほうが重要だなって思ってました」