青山真治のフィルモグラフィーでは「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」と「サッドヴァケイション」の間に位置する2006年の重要作ながら、映画祭や一部特殊上映を除いて上映されずお蔵入りとなっていた本作がまさかのソフト化! 伊豆を舞台に、もう若くない女(鈴木京香)と、彼女が〈飼う〉盲目で口のきけない老人(山崎努)をめぐるお話なのだが、こんな不穏で殺気立った伊豆、こんな何考えているか分からない鈴木京香、こんな気色悪い山崎努を他で見たことがない。特に、山崎努が音を立て下品にチキンやちくわを貪り食うシーンは実に不快で絶品。青山映画史上、最も具体性と抽象性の振れ幅が大きい一作。必見!