INTERVIEW

DÉ DÉ MOUSE『Nulife』 エキゾチックをテーマに仕立てられたグッとくる新作を語る

DÉ DÉ MOUSE『Nulife』 エキゾチックをテーマに仕立てられたグッとくる新作を語る

新たな生命、新たな生活、新たな人生――〈エキゾチック〉をテーマに多角的な視点で編み上げられたニュー・アルバムはグッとくるダンス・ミュージックで溢れている!

スタッフが胸を張って出せる作品

 ゲーム音楽の大家であるChip Tanaka(田中宏和)との配信EP『Pot of Peas』、Serphとコラボした『DREAMNAUTS』と、このところ他アーティストとの共同作業に勤しんでいたDÉ DÉ MOUSEが、1年4か月ぶりのニュー・アルバム『Nulife』を完成させた。近年の彼のサウンドは、エレクトロニック・ミュージックで軽音楽的なサウンドを追求した2015年作『farewell holiday!』で自身のやりたいことを達成して以降、前々作『dream you up』(2017年)、前作『be yourself』(2018年)と、〈みんなが求めているもののなかで自分のやりたいことを見つける〉方向性にシフトチェンジすることでダンス・ミュージックとしての機能性を強めてきたわけだが、今作は本人が「サウンドも作り方もスタンスも、自分の心持ちも変わった」と語る通り、表題の〈新しい命〉を体現するものになっている。

 「前作の『be yourself』が出来た直後からモチーフを作りはじめて、手応えを掴んだのが去年の秋ぐらい。最初は『be yourself』の続きを意識していたから、全曲もっと派手なアレンジだったんですよ。でも、今回は自分の幅を広げるためにスタッフと話し合いながら制作を進めたかったので、アルバム曲のラフがひと通り揃ったところで試聴会をしたら、みんなに〈派手すぎ〉とか〈展開が多すぎる〉って言われて(苦笑)。でも、確かにいまはアゲるより適度に抑えるサウンドが世界的に流行りだから、なるほどなと。僕自身も昔は〈THE 俺!〉みたいな感じでやってたけど、いまは周りのスタッフが胸を張って出せる作品にしたい気持ちが強いから、6月ぐらいに全曲リアレンジすることに決めて、急ピッチで作業を進めました」。

 アルバムごとにユニークなコンセプトを提示してきたDÉ DÉ MOUSEが、本作で新たに掲げたのは〈エキゾチック〉。先に撮影していたアーティスト写真の色味(「大正時代のモノクロ写真に後から色を乗せた感じ」)から連想したというそのテーマは、サウンドやアートワークに反映されている。

 「ここで言う〈エキゾチック〉は〈異国的〉ということで、マーティン・デニーみたいに西洋文化の人が東洋をイメージした音楽をやるのとは逆に、西洋の音楽を真似したいまの東洋人の音楽を意識して東洋人の僕がやるっていう複雑なテーマになっていて(笑)。いまはアメリカやヨーロッパ以外の国のカルチャーがすごくおもしろくて、その国にしかないグルーヴというのが、どの国の音楽を聴いても必ずあるんですよ。日本のダンス・ミュージックにも他の国にはないようなアイデンティティーがあって、それがいちばん顕著に出ているのがカワイイ系のフューチャー・ベース。曲調は西洋風のモダンなアレンジだけど、海外の人からすると何を言ってるかわからないし、日本の人以外はやらないような展開をするところが新鮮で受けていて。僕はそこにラテンやディスコの要素も入れてるから、それを〈エキゾ〉という言葉でまとめました」。

 

いろんな時代のいろんな音

 そんな『Nulife』はパーカッションとラテン風のピアノがブラジリアン・ハウスのような雰囲気を演出するタイトル曲で華々しく幕開け。スティールパン入りのファンキーな“Magic”、ドロップ部分でサンバ~バイリ・ファンキのリズムが雪崩れ込む“Heartbeat”、『be yourself』の延長線上にある煌びやかなフレンチ・タッチ風の“Growing Up”、彼なりの手法によるフィルター・ハウスの“Stay(With Me)”、自身もお気に入りだというR&B風のスロウ“Free”など、これまで以上に多彩で洗練されたダンサブルなトラックが並ぶ。

 「僕は群馬県の太田市が地元なんですけど、太田市ってスバルの工場があったりでブラジル人がたくさん住んでいたんですね。子どもの頃に住んでいた家の近くにもブラジル人が4~5人住んでて、毎朝学校行くときに挨拶してたんですよ。タクシー相乗りして街まで行ったこともあったり。だからなのかわからないけどブラジル音楽を聴くと懐かしい気持ちになるし、もともとラテンっぽいのが好きだから、今回はそういう音に初めてトライしました。あと“Magic”はマイケル・ジャクソン“Don't Stop 'Til You Get Enough”みたいなクインシー・ジョーンズっぽいリズムをあえて入れていて。聴く人によってはタキシードみたいに聴こえるかもしれないし、他の曲も含めて全体的にいろんな時代のいろんな音を感じられるように作ってます」。

 また、アップリフティングなサウンドに彩られながらも、どこか落ち着いたトーンが感じられるのも本作の特徴だ。〈ジェンダーレス〉というテーマに合わせて、ヴォイス・サンプルのピッチを下げて性別不詳なものにしていたり、ミックスで高音域の音を削るなどの工夫を凝らすことで、ただダンサブルなだけではない深みのある音像を構築している。

 「前作はルンルンな気分で多摩川を歩いているとしたら、今回は感傷的な思いに浸りながら歩いてるというか。“Regret”は寂しくて走り出したくなる感じで、最後の“You Are Right”は誰もいない河原を独りで歩いているイメージ。今回のアルバムは後半に進むにつれて夕方から夜へと時間が流れていくような構成にしていて。これまでの作品ではいちばん生活の中に溶け込む作品になったと思います」。

 

自分のオーセンティックな部分

 ちなみに、ジャケットに描かれている性別のわからない人物は〈ダンスの化身〉だそう。“Heartbeat”のMVで吉田凜音と共に踊っているダンサーのkEnkEnにインスパイアされた存在で、前作『be yourself』のジャケに描かれている女子高生の1年後をテーマにした本作は、彼女とダンスの化身との出会いと別れのストーリーが重ねられたものでもある。

 「『Nulife』というタイトルには〈新しいスタート〉という意味があって、今回のアルバムには、大事な人と別れて新しい一歩を踏み出す気持ちというテーマがあるんです。僕は新美南吉の『子どものすきな神さま』という童話が好きなんですけど、そのお話をベースに、女子高生は学校の帰り道にダンスの化身と仲良くなるけど、ダンスの化身は夕方になると自分の力がなくなってネズミに戻ってしまう、という設定を自分の中で作っていて。楽曲タイトルも女子高生の置かれている現状や感情を的確に一単語で表していて、例えば“Heartbeat”は恋か何かで心臓の鼓動が早くなったことだったり、最後の“You Are Right”は別れた後に〈君が言ってたことは正しかったんだな〉って気付く後悔みたいな感じ。そこからまた1曲目の“Nulife”にループしていく形になってます」。

 他者の視点や〈エキゾチック〉な要素を採り入れることで、また新しく生まれ変わったDÉ DÉ MOUSE。今後もトレンドとのバランスを取りながら作品ごとにニューライフを見せてくれるだろうが、その本質的な魅力も変わらずあり続けることだろう。

 「僕はニュー・ディスコ的なものをベースに敷いた、ちょっと懐かしい要素のあるダンス・ミュージックを作ってますけど、ニュー・ディスコの何が好きかって、夕暮れに合うんですよ。今年はChip TanakaさんやSerphさんとコラボすることで、自分が興味ある新しい音にトライすることができたから、今回のアルバムでは自分のオーセンティックな部分を出すことができて。自分の中では毎回〈夕暮れに歩きながら聴いていてグッとくる音〉を突き詰めて作っていて、それが顕著に出たのが『be yourself』だったけど、今回もそれができたと思います」。

DÉ DÉ MOUSEの参加した近作を一部紹介。

 

DÉ DÉ MOUSEが主宰するnotの2019年作品。

 

DÉ DÉ MOUSEの近作を紹介。

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