エグベルト・ジスモンチのレーベルCARMOからエッジーな新譜2タイトルが発売に!

 エグベルト・ジスモンチが自分の故郷であるリオデジャネイロ州カルモにちなんで名付けたレーベル、Carmo。このレーベルからは、これまでルイス・エサやシルビア・イリオンドなどの作品がECMを通じてリリースされてきたが、久しぶりに新録アルバムが2枚届けられた。

GRAZIE WIRTTI,MATIAS ARRIAZU Cacador de Infancia Carmo(2019)

 まず一枚は、ブラジルのグラジエ・ヴィルッチと、アルゼンチンのマティアス・アリアスによる『Cacador de Infancia』。グラジエとマティアスはそれぞれソロ作をリリースしているが、デュオとしては初のアルバムだ。ジスモンチがプロデュースした本作には、グラジエ(作詞/ヴォーカル)とマティアス(作曲/ギター)によるオリジナル曲に加えて、ジョアン・ボスコやアンドレス・ベエウサエルト(アカ・セカ・トリオ)などの曲が収録されている。

 ちなみにマティアスのソロ・アルバム『Petei Po』(16年)には、マリアーノ・カンテーロが全面的に関わっていると書けば、アカ・セカ・トリオ〜現代アルゼンチン音楽のファンは身を乗り出すに違いない。グラジエは、ポルトガルのマリア・ジョアンに通じる資質の持ち主と言えるだろう。ヴォーカルは変幻自在で、ときには小鳥の囀りと羽ばたきように途切れなく繰り広げられ、マティアスの卓越した技巧を誇る8弦ギターの上を自由に駆け回る。つまりこの男女デュオのパフォーマンスは、歌と伴奏といった関係をはるかに超えており、実にスリリングだ。

DANIEL MURRAY Violao Solo (Universo Musical de Egberto Gismonti) Carmo(2019)

 もう一枚はブラジル人ギタリスト、ダニエル・ムハイによるエグベルト・ジスモンチ作品集『Universo Musical Egber to Gismonti』。ダニエルは、これまでアントニオ・カルロス・ジョビンやクラシックの曲などに取り組んできたが、本作では自身の編曲で(2曲はジスモンチの編曲)、6弦と10弦ギターを使い分けつつ、《7つの指輪》や《ショーロ》などの名曲に取り組んでいる。こちらも、ときにはガットギターのソロという先入観を裏切ってくれるほどのエッジの効いたアルバムだ。