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コミカルな〈無礼メン〉からリアルな〈BREIMEN〉へ

――結成当時のBREIMEN(無礼メン)は高木さんではなく、他の方がヴォーカルを担当されていたんですよね。音楽性とバンドの佇まいも、当時と現在ではまた少し違うというか。

「以前のヴォーカルがいた頃に僕らがやろうとしてたのは、たとえるならプリンスにジャパニーズ・メロディーが合わさったような……まあ、岡村靖幸みたいな感じですね(笑)。で、そこにコミック的な要素を加えるっていう。

当時はそういうコンセプトがあって、そのコンセプトやヴォーカルのキャラクターを踏まえて、僕が歌詞を書いてたんです。でも、自分が歌うようになってからはそうもいかなくなって」

――というのは?

「つまり、自分で歌うならフィクションじゃなくて、リアルなことを歌いたいなと思ったんです。いわゆるシンガー・ソングライター的な課題とそこで初めて対峙したというか」

――『TITY』はそのリアルを突き詰めた作品ということなのでしょうか? 今作の収録曲って、主に女性関係をモチーフとしてますよね。

「僕もそれ、収録曲を並べたときに気づいたんですよ。ノー・コンセプトで作ってたはずなのに〈俺、女の子のことばっかり歌ってるじゃん!〉って(笑)」

『TITY』トレイラー

――基本的にはどの曲も、女の子に翻弄されている様を歌ってて。最終的には“By my side”で女の子にフラれるっていう流れも面白いなと(笑)。

「このアルバムに登場する女の子って、じつは全員ちがう人なんですよ。というのも僕、去年の頭くらいにずっと付き合ってた彼女に浮気されちゃって。それからちょっと荒れちゃって、いろんな人を好きになっちゃったんですよね(笑)。なので、アルバムはその流れに沿った曲順にしようかなと。

つまり、出会いの曲から始まるんだけど、結局は別れてしまって、最後は回想で終わるっていう。もちろん誇張したところもあるんですけど、今作の流れはそういう時系列にしてみたんです」

『TITY』収録曲“IWBYL”

 

音楽とセックスは似ている?

――この〈TITY〉というアルバム・タイトルは何を意味してるんですか?

「僕、みうらじゅんさんの『アイデン&ティティ』という漫画がめちゃくちゃ好きなんですよ。で、これは僕なりの解釈なんですけど、『アイデン&ティティ』における〈ティティ〉というのは、主人公の彼女を指してるんじゃないかなと思ってて。つまり主人公が〈アイデン〉で、そこに彼女がいることで〈アイデンティティ〉が成り立つってことなのかなと。

それでアルバム・タイトルをまず〈TITY〉に決めて、それから“IDEN”という曲を作ったんです」

『TITY』収録曲“IDEN feat. AAAMYYY”

――なるほど。“IDEN”の〈ティティを探す〉という歌詞は、そういう意味だったんですね。

「そうなんです。いろんな女の子が目の前に現れたけど、俺が探してるのは〈ティティ〉なんだっていう。そういう感じで自分のドキュメンタリーとしていろんなシーンを切り取ってたら、結果的に今回はコンセプチュアルな作品になったんです。まぁ、後付けではあるんですけど」

――かなり私小説的なんですね。ちなみにこの記事の担当編集者は〈もしかすると、この「TITY」というのは「TITTY(おっぱい)」なんじゃないか〉と推測していたようです。

「うわ、その解釈めっちゃいいですね! 今後はそれでいこうかな(笑)」

――セクシーな表現というか、エッチな描写がちょくちょく出てくるところも、たしかに今作の特徴かなと思ったのですが、その点はいかがですか?

「うん。それこそ“PINK”は風俗嬢の歌ですし(笑)。エロって面白いですよね。エロい表現っていろんなことに紐付いてくるし、それこそ音楽とセックスって似てますから。

言ったらセッションなんてワンナイト・ラヴみたいなもんじゃないですか。まったくプレイ・スタイルがわからない相手と、お互いの様子を探りながら一緒に音楽を作るんだから、これはもうセックスだなと」

――たしかに。

「セッションでいちばん大事なのは、その人のプレイアビリティーじゃなくて、まわりの音が聴けるかどうか、なんですよね。つまり、独りよがりな人はセッションに向かない。だから僕もセックスのときはすごく献身的になるんですけど」

――(笑)。

「でも、本当はそれすら一切考えずにお互いのフィーリングだけでしっかりハマっていくのが一番いいんですよね。あ、もちろんこれはセッションの話ですよ(笑)」