――次はJAGATARAの『南蛮渡来』(82年)。この頃は〈暗黒大陸じゃがたら〉名義ですね。

「これは嬉しい再発です。僕の友だちも〈欲しい〉と言っていましたし、TwitterとかのSNSでも話題で」
――最近、〈Jagatara2020〉として復活したのも驚きです。
「ライブもやったんですよね。これはずっとアナログで欲しかったんですけど、なぜかあんまり出会えなかった盤で。『南蛮渡来』はジャケが4種類あるらしくて、これが初回盤と同じデザイン。
繰り返し言っていますけど、今回選んだ盤はどれも最初から最後まで通して聴ける作品なんです。ただ、『南蛮渡来』はカオスというか、なんというか……」
――確かに(笑)。
「僕はファンクやアフリカ音楽ってそこまで良さがわからないんですけど、JAGATARAやトーキング・ヘッズを聴くとピンとくる。ファンクやアフリカ音楽が彼らのフィルターを通して表現されているので、わかりやすく聴けるんですね。
例えば、最初から本場のブルースを聴いてもハマらなかったと思うんです。ローリング・ストーンズを通して良さがわかって、それから本場のものも好きになった。
なので、今回の再発をきっかけに、江戸アケミが好きなフェラ・クティとかにも挑戦してみようかなと。セカンドの『裸の王様』(87年)のほうがアフロ要素は強いんですけど」
――『裸の王様』は長尺のアフロビートが中心で、曲数が少ないんですよね。でも『南蛮渡来』はもっとパンキッシュ。今回のリイシューは江戸アケミ没後30周年に合わせたものだとか。
「『南蛮渡来』、『裸の王様』、ライブ盤『君と踊りあかそう日の出を見るまで』(85年)の3枚が出て、TOWER VINYLで大プッシュしています。なかでも『裸の王様』は人気がある気がします。ネタに使えるからかも」
――なるほど。DJユースで。
「江戸アケミさんって、めちゃくちゃおもしろい方だったと思うんですよ。だから、これを機にインタビューを読み漁りたいです」
――ちょうど「別冊ele-king じゃがたら――おまえはおまえの踊りをおどれ」という分厚い本が出て、江戸アケミのインタビューが載っているのでおすすめです。最近、ストリーミング・サービスでも聴けるようになり、こうやってJAGATARAが盛り上がっているのはうれしいですね。いまの日本の音楽に足りないものが彼らの音楽にはある、というか。
「JAGATARAから影響受けているアーティストって、きっとめちゃくちゃ多いですよね」
――GEZANにはJAGATARAのDNAを感じます。あと、江戸アケミの歌詞は本当におもしろくて。裏ジャケに載っている〈日本人て暗いね〉(“でも・デモ・DEMO”)という歌詞を聴いたときは驚きました。
「ど頭からこれですもんね。危険なにおいもして、かっこいいです。“タンゴ”はドラッグの歌だと聞きました」
――確か、〈食いかけのハンバーグ〉が覚醒剤の暗喩だったはずです。