タワーレコードのアナログ専門店〈TOWER VINYL SHINJUKU〉のおすすめ盤を紹介している当連載〈TOWER VINYL太鼓盤!〉。前回の〈スタッフが選ぶ2019年マイ・ベスト・レコード〉や前々回の〈レコードで聴きたいクリスマス・アルバム〉など、しばらく特別企画が続いていましたが、今回は久しぶりにスタッフ・インタビューをお届けします。

第9回に取材したのは、太田陽士郎さんです。太田さんのおすすめ盤は6枚。これまででもっともロック濃度とロック密度が高い、ロックンロールな6枚になりました。

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――まずは太田さんのキャリアを教えてください。

「以前はシンポジウムや会議の音響の仕事をしていました。でも並行して、趣味でレコードを買っていたので、レコード屋さんで働きたいなと思い、ディスクユニオンでアルバイトを始めました。そこで、とある先輩からレコードについて細かいちがいとかを一個ずつ教わったんです。レコードっておもしろいな、奥が深いなと知りました」

――すごくいい先輩がいたんですね。

「そうなんです。ロック以外のジャズやブラジル音楽も聴くようになって、音楽に対する価値観を培った時期でしたね。その後、タワーレコードの求人に応募して、昨年10月からTOWER VINYLで働いています」

――選盤を見る限り、やっぱりロックがお好きなんですか?

「ジャンル問わず聴くんですけど、やっぱり自分の趣味の根底にあるのは、ちゃんとビートが効いている、一本筋の通ったロック。

50年代に始まったロックンロールは、ずっと続いているわけですよね。いまはあんまり元気がないですけど(笑)」

――そんな太田さんが選んでくださいました。まずはヴェルヴェット・アンダーグラウンドのサード・アルバム『The Velvet Underground』(69年)。これは僕も大好きです。

「僕はアルバム単位で聴くのが好きなんです。1曲目から最後の曲まで興奮できたり、ずっとうっとりできたりする作品を名盤と位置づけています」

――レコードって曲順に沿って聴くしかない、ある意味では制限があるメディアですよね。だから、アルバムとして聴くのに適していると思います。

「そうですね。中古のシングル盤を買うことも多いのですが、シングルと比べて、アルバムはよっぽどハマらないと聴き続けられない。なので、自分のなかでの名盤というのは、すごく大切。そんな自分にとっての名盤のひとつがこれです。

あと、〈A面を聴こうかな? それともB面から聴こうかな?〉と選べるところもレコードの良さですね。ミニ・アルバムが2つ入っている、みたいな考え方で聴きます」

――その発想は新鮮ですね。CDで育ったからかもしれませんが、僕はいつもA面から聴いちゃいます。ヴェルヴェッツのアルバムって4枚ありますよね。実はその後に『Squeeze』(73年)という変なアルバムもありますが(笑)。そのなかでもこれがいちばん好き?

「好きですね。『Loaded』(70年)までは全部好きですけど、いちばん聴くのはこれ。アルバムって飽きることもありますけど、この作品はどんなときに聴いてもしっくりくる。

すごくいい曲が揃っていて、最後に“After Hours”で終わる感じもめちゃくちゃ可愛いらしいですよね。ギターの絡みも最高ですし。これはジョン・ケイルが抜けた後の、ダグ・ユールが入ってからの作品ですが」

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの69年作『The Velvet Underground』収録曲“After Hours”。歌っているのはドラマーのモーリン・タッカー

――これ、180グラムの重量盤なんですね。ヴェルヴェッツのアルバムはジャケットがいいので、持っておきたくなります。

「このジャケは特に不思議ですよね」

――みんな、バラバラにちがう方向を向いていて、よく見ると変な写真(笑)。

「ルー・リードも何かの雑誌を持っていますし、たぶん完全なるオフショットですよね。裏ジャケも大好きです」