タワーレコードのアナログ専門店〈TOWER VINYL SHINJUKU〉がおすすめ盤を紹介する月刊連載〈TOWER VINYL太鼓盤!〉。スタッフ・太田陽士郎さんへのインタビューに続く第10回は、YOSHIさんとTOWER VINYLとのスペシャル・コラボレーション企画をお届けします。
ファッションや音楽の世界のみならず、映画「タロウのバカ」(2019年)で主演を務めるなど、多方面で才能を発揮している新世代アイコン・YOSHIさん。TV番組への出演などでご存じの方も多いと思います。そのYOSHIさんが、2020年2月に初のアナログ盤“RIDING ON TIME”をリリースしました。
今回は“RIDING ON TIME”のリリースを記念して、YOSHIさんがTOWER VINYLにご来店。当日、彼に密着取材を行った一部始終をここにお届けします。レコードの楽しみ方に触れながらあYOSHIさんが見せたのは、メディアでは見せないピュアな音楽好きの素顔。ぜひ記事の最後までお楽しみください
なおTOWER VINYL SHINJUKUおよびタワーレコード新宿店は、2020年4月8日(水)から当面の間臨時休業となります。詳しくはタワーレコード オンラインをご覧ください。 *Mikiki編集部
山下達郎サンプリングで話題の“RIDING ON TIME”がレコードに
2019年の3月、タワーレコード新宿店の10階に開店したアナログ盤専門店〈TOWER VINYL SHINJUKU〉。開放的な空間を活かした店作りと幅広いジャンルを揃えた品揃えから、コアなレコード好きのみならず、最近アナログ盤に興味を持ちはじめたという若いリスナーからも親しまれているという。
今回は、13歳のときにヴァージル・アブローからフックアップされたことで注目を集め、現在は地上波TVにも進出する17歳のアーティスト、YOSHIがTOWER VINYLを探訪。近年はミュージシャンとしての活動も精力的に行っており、2019年には初のアルバム『SEX IS LIFE』をリリースした。
アルバムのあとにリリースされたシングル“RIDING ON TIME”では、山下達郎の“RIDE ON TIME”をサンプリングしている。ヤマタツの歌声を大胆にピッチ・シフトし、トラップ・ビートに重ねた同曲は、今年の2月に12インチ・シングルとしてアナログ盤化もされた。
80年というレコード全盛の時代に産み落とされた和製ポップスのクラシックと、音楽の聴き方が多様化した現代のアイコニックな存在であるYOSHIとの邂逅を刻んだ“RIDING ON TIME”のレコード。この一枚は、〈まだレコードを知らない世代にアナログ盤との出会いをもたらしたい〉というTOWER VINYLのコンセプトにも繋がっているのではないだろうか。
TOWER VINYLの広さに大興奮のYOSHI
まだ寒さの残る3月上旬、ベースボール・ブルゾンと細身のデニムという出で立ちでTOWER VINYLを訪れたYOSHI。すぐさま店内を軽やかに歩き回り、「多い!」「すげえ!」と興奮の声を上げている。まず彼の目を引いたのは、壁面に並べられた名盤の数々。レッド・ホット・チリ・ペッパーズの『Californication』(99年)、ニルヴァーナの『Nevermind』(91年)、ノラ・ジョーンズの『Come Away With Me』(2002年)などを見上げては、目を輝かせている。

店内を自由に移動してもらいながら、YOSHIにインタビューを行った。「レコード・ショップは初めてですか?」と尋ねると、「いや、何回か行ったことはあるんですけど、こんな広いところは初めてですね」との答えが返ってきた。すかさず、TOWER VINYLのヴェテラン・スタッフ、塩谷邦夫さんが「日本最大規模だと思います!」と意気揚々と説明する。なお、塩谷さんにはこの日、YOSHIが気になったことや疑問への回答係として、彼に付いてもらった。
YOSHIがレコードに感じるロマン
YOSHIが向かったのは、意外にもハード・ロック/ヘヴィメタルの新譜コーナー。スリップノットやオジー・オズボーンの新作を見ては「ジャケットが大きいと、いっそうかっこいいっすねー」と感嘆している。彼自身の楽曲は同時代のヒップホップ/R&Bに通じるサウンドが特徴だけに少し意外だったが、実はロックがいちばん好きなジャンルだとのこと。「生き方がロックですから」とYOSHIは胸を張る。

「僕はロマンのあるものが好きなんです。いまの若者からしたらスマホのアプリがレコード屋みたいなものじゃないですか? でもアプリでは〈ジャケットが好き〉と手に取ったり、モノとして集めたりはできない。そういうことができるのはレコードのロマンだと思う」とレコードの魅力について語るYOSHI。
「アナログ盤を買ったことはありますか?」と尋ねると、「まだ買えてないんです。18歳になったら一人暮らしを始める予定で、その記念にプレーヤーを買おうと思っていて」とロマン溢れる答えが返ってきた。
ストーンズ『Let It Bleed』の初回盤めちゃたけー!
さらに店内を進み、中古レコードの売り場へ。最初にYOSHIが物色したのはヒップホップのコーナーだ。ここで彼から素朴な疑問が。それは「同じレコードなのに、どうして値段が違うの?」というもの。塩谷さんも「それはいい質問ですね~」と唸りながら、「盤面やジャケットのコンディションによっても変わってきますし、何回目のプレスかにもよりますね」と回答。さらに「中古盤はすべて世界に一つしかないレコードなんです!」と付け加える塩谷さんの表情は、なんだか嬉しそうだ。

続いては、ロックの中古盤を揃えた店内最奥部。有名無名問わずロック史を彩ったレコードが年代別に並んでいる棚を、YOSHIは意気揚々とディグしている。たえず好きな作品を見つけながら口に出すのは、「ビートルズはすべてやっちゃった存在」「ストーンズの『Let It Bleed』(69年)の初回盤、めちゃたけー! でも欲しー!」「僕が襟足を巻いているのは、(デヴィッド・)ボウイに憧れてるから」「スミスはアートワークが最高なんでバンT(バンドTシャツ)持ってます」など、さまざまな時代のロックスターへの想い。
掘っていく姿勢がいまの世の中には必要
過去の音楽への関心の高さについて訊くと「掘っていく姿勢が、いまの世の中には必要だと思うんです。最近は、好きなものに本気になってそれを仕事にしたいという夢を持っている人が少ないと思うから。僕はそういう生き方を伝えていきたい」と語ってくれた。いまの17歳にしては珍しいかもしれない、温故知新を重んじる態度が印象深かった。

ロックに隣接しているパンク棚でブラック・フラッグのレコードを見つけると、「ブラック・フラッグは去年、地元にライブしに来たんです。友達が行ったんだけど、僕は予定と重なっていて……」と悔しがる。
また、クランプスやセックス・ピストルズも大好きだそう。どうやらYOSHIは、外見の面でも個性を発揮するアーティストが特に好きなようだ。「僕は結構そうかも。やっぱりファッションが好きだから、音楽だけってより、見た目から入ることも多い」。
レコードを試聴してみよう!
ひととおり店内を巡回したあとは、YOSHIに店頭で〈試聴〉を体験してもらった。彼が〈聴きたい〉と選んだのは、剣が心臓を串刺しにしているジャケットが印象的なゴアの『Hart Gore』(86年)と、ヘヴィメタルの古典であるブラック・サバスの『Paranoid』(70年)。
まずは「まったく知らないバンドだけどアートワークに惹かれて……」とゴアの『Hart Gore』をターンテーブルに乗せる。ここでは、塩谷さんがアナログ盤の持ち方や針の動かし方、回転数の違いなどを丁寧にガイド。YOSHIの表情もいつになく真剣だ。

そして、『Hart Gore』を聴いてみた感想は……「歌がない!」。それもそのはず、ゴアは80年代に活躍したオランダのインストゥルメンタル・メタル・バンド。『Hart Gore』は、ポスト・ロックやマス・ロックの先取りとも言えるサウンドでカルト的な人気を集めてきた一枚だ。ジャケ買いならぬ〈ジャケ聴き〉での予想を超えた出会いは、YOSHIにとってレコードのおもしろさを知る機会となっただろう。

一方、ブラック・サバスの『Paranoid』は高価格なUKオリジナル盤のため、レコード本体はカウンター内ストックからの提供。聖杯が運ばれるかのごとく厳かに、塩谷さんからYOSHIへと盤が受け渡された。「このアルバムはもう神盤」と語るYOSHIはご満悦。ヘッド・バンギングしながら表題曲のメロディーを口ずさんでいる。同作の魅力について、「やっぱりオジーの存在は大きいですよ。あいつが歌うとなぜかポップになるんですよね」とさすがの論評。

さまざまな音楽を柔軟に吸収するYOSHIの姿勢には、やはり周囲の音からの影響も大きいのだろうか? 「うーん……確かにスタッフとは毎日音楽の話をしています。これがリリースされたとか、これはカッコいいねって。年の差? そんなの関係ないですよ。音楽好きならみんな同級生みたいなもので」。
レコードで聴く“RIDING ON TIME”の音
最後は、YOSHIの12インチ“RIDING ON TIME”をストア・プレイ。「実は僕もまだレコードで聴いたことがないんです」と微笑むYOSHI。TOWER VINYLのサウンド・システムで使われているMcIntoshの真空管アンプにも興味を示し、レコードを聴くのに最適なセッティングについてスタッフへと熱心に質問している。

そして、実際に店頭で“RIDING ON TIME”がかかると、「これはいい音ですね!」とガッツポーズ。確かにアナログ盤で聴くと、太い低音がとても気持ちいい! A面の2曲目に収録されているアカペラが流れると、「これは恥ずかしい!」と悲鳴をあげつつも、すぐに「俺の歌声めっちゃいい!」と満足気だ。
訪れる者を無邪気なミュージック・ラヴァーに立ち返らせるレコード屋のマジック
約1時間にわたったYOSHIのTOWER VINYL探訪。ここでのYOSHIは、ファッション誌やTVで観られたアイコニックな姿とは一味違っていて、音楽を屈託なく愛する1人の少年そのものだった。レコード屋には、訪れる者を無邪気なミュージック・ラヴァーに立ち返らせるマジックがあるのかもしれない。
なので、もし〈アナログ盤に興味があるけど敷居が高そうで行けなくて……〉という方がいれば、ぜひTOWER VINYLを訪れてみてほしい。まずはYOSHIのようにフリーに店内を回ってみるべきだ。ここは、まだ見ぬ音楽との出会いを与えてくれる場所なのだから。

INFORMATION
TOWER VINYL SHINJUKU
東京都新宿区新宿3-37-1 フラッグス10F
営業時間:11:00~23:00
定休日:不定休(フラッグスの休業日に準じる)
電話番号:03-5360-7811
https://tower.jp/site/vinyl
TOWER VINYL SHINJUKU臨時休業のおしらせ
TOWER VINYL SHINJUKUおよびタワーレコード新宿店は、新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴い、2020年4月8日(水)から当面の間、臨時休業とさせていただきます。5月6日(水)までの休業を予定しておりますが、期間は変更となる場合がございます。ご了承ください。詳しくはタワーレコード オンラインをご覧ください。
https://tower.jp/store/news/2020/03/055004
PROFILE: YOSHI
香港人の父、日本人の母を持つ16歳。
13歳にしてOFF-WHITEのデザイナー兼ルイ・ヴィトンのディレクター〈VIRGIL ABLOH〉に独自のファッションセンスを賞賛され、それをきっかけに有名ブランドのモデルやショーへ多数出演。
また、「Forbes」が開催した次代を担う30 歳未満のイノベーターを表彰する〈30 UNDER 30 JAPAN〉にて〈The Arts〉部門でその1人に選出された。
2019年9月公開映画「タロウのバカ」では主演として俳優デビューも決定。
ファッション・音楽・俳優・アートと全てにおいてトップレベルの才能を放つZ世代を代用する新世代アイコン。
RELEASE INFORMATION
TRACKLIST
A1. RIDING ON TIME
A2. RIDING ON TIME - A Cappella -
B1. COBAIN
B2. KIDS
LIVE INFORMATION
ARABAKI ROCK FEST.20
2020年4月26日(日)宮城 みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく ※延期
ARABAKI ROCK FEST.20-21
2021年4月29日(木・祝)、4月30日(金)、5月1日(土)、5月2日(日)宮城 みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく
https://arabaki.com/
