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コラム

スティーヴン・マルクマス(Stephen Malkmus)の新作を高橋健太郎が考察。フォークと民俗音楽の密な関係から位置付ける

スティーヴン・マルクマス『Traditional Techniques』

Photo by Samuel Gehrke
 

シンセやドラム・マシンを演奏し、エレクトロニック・ポップを披露した驚きの2019年作『Groove Denied』から約1年。早くもスティーヴン・マルクマスの新作が到着した。『Traditional Techniques』と名付けられたアルバムは、〈新たなステージにあるフォーク・ミュージック〉がテーマ。その言葉通りに、本作で彼は12弦のアコースティック・ギターを中心に据え、土臭いフォーク・ロックを奏でている。

とはいえ、彼の音楽特有の愛すべき歪さも健在で、世界各地の楽器を使ったストレンジなサウンドは、古くはアモン・デュールからボニー・プリンス・ビリーまで、サイケデリック/ウィアード・フォークの文脈でも聴けよう。音楽評論家の高橋健太郎が、『Traditional Techniques』で歌われた〈新たなフォーク〉の背景を考察した。 *Mikiki編集部

STEPHEN MALKMUS Traditional Techniques Matador(2020)

 

 マルクマスにはアメリカのレコ屋の音がする

ペイヴメント解散後のスティーヴン・マルクマスの活動をそれほど熱心に追ってきた訳でないけれど、ぱらぱらと届けられるソロ名義やバンド名義(スティーヴン・マルクマス&ジックス)のアルバムを耳にする度に思ってきたのは、〈ああ、アメリカのレコ屋の音がするなあ〉ってことだった。ロスアンジェルスのエイロンズ(Aron’s)とか、サンフランシスコのアメーバ(Amoeba)とか、テキサス州オースティンのウォータールー(
Waterloo)
とか、長らく行ってない各地のレコ屋を思い出す。行ったらこれ、かかってそうだなと。マルクマスのアルバムに注入されたロック・ヒストリーのいろんな要素が、レコ屋の壁に並ぶあれやこれやの名盤や珍盤を彷彿させるせいもあるだろう。

66年生まれのマルクマスは今年で54歳。2010年代になってからはベルリンで何年かを過ごしていたようで、2014年のバンド名義の『Wig Out At Jagbags』はベルギーやオランダで録音されていた。2018年の『Sparkle Hard』ではアメリカに戻り、オレゴン州ポートランドのディセンバリスツのスタジオで録音。ここから急に制作意欲に火がついたようで、2019年にはソロ名義でアルバム『Groove Denied』を発表した。これはベルリン在住時に受けた影響を反映したと思われる作品で、ノイジーでリズミックなエレクトロ・サウンドに彩られていた。往年のD.A.F.を思い起こすような妖しさも漂う。でも、置かれる売り場が少し移動しただけで、やはりアンダーグラウンド系の品揃え豊富なレコ屋で聴こえてきそうな音だった。

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