©Jack Bridgland

創造性の閃きが好奇心と遊び心でボーダーを越境する圧巻のワールドワイド・ポップ! さらにダンサブルに、さらに楽しさを増してスーパーオーガニズムが帰ってきたよ!

時間をかけて制作に集中できた

 2017年にインターネットを介して、イギリス、オーストラリア、アメリカ在住の多国籍なメンバーが集結。〈ポスト・エブリシング〉とも形容されるジャンルを超越したポップ・ミュージックが、いち早く魅了されたフランク・オーシャンやヴァンパイア・ウィークエンド、ゴリラズらを介して、瞬く間に世界中の音楽ファンに拡散、共有されたスーパーオーガニズム。2018年に本人たってのオファーで実現した宇多田ヒカル“パクチーの唄”のリワークや2019年に発表された星野源とのコラボ曲“Same Thing”が日本でも大きな話題となった彼らが、前作『Superorganism』から4年4カ月ぶりとなる新作アルバム『World Wide Pop』を携え、音楽シーンに帰還を果たした。

SUPERORGANISM 『World Wide Pop』 Domino/BEAT(2022)

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 「ファースト・アルバムの時のことを振り返ってみると、まるで夢のような、前世で起こったことのような気がする。どのバンドもアルバムを出したら、ツアーに出て、次のアルバムの曲を書くというサイクルがあると思うんだけど、僕らの場合はツアーが終わってすぐパンデミックが起こったので、自分たちは特にその節目を強く意識させれた。そして、僕らは前作の時点でそれぞれが離れた場所にいるメンバーたちとの作品制作を経験していたから、コロナ禍において他のバンドが初めて経験するリモート・レコーディングのプロセスを先取りで経験していたともいえる。だから、そのアイソレーション期間は状況の変化に戸惑うことなく、時間をかけて制作に集中できたし、3年間できていないツアーが、一周回っていままた新鮮で、新しいもののように感じるんだ」(ハリー)。

 2022年に3人のメンバーが脱退し、5人組となったバンドはロンドンでの共同生活を解消。日本とアメリカを行き来し、アメリカでは各地をロード・トリップしながら日々を過ごしていたという日本人ヴォーカリストの野口オロノをはじめ、それぞれがプレイベートな生活とのバランスを図りながら、じっくりとアルバム制作に向き合ったという。日本盤ボーナス・トラックを除く全13曲中、7曲にプロデューサーのスチュアート・プライスが参加。レ・リズム・デジタルズやズート・ウーマンといった自身のプロジェクトをはじめ、マドンナやカイリー・ミノーグ、キラーズやニュー・オーダーといった錚々たるアーティストの作品を手掛け、80sダンス・ミュージックをモダナイズしたプロダクションが高く評価される彼との共同作業によってグルーヴの飛躍的な強化が図られている。

 「今回作りたかったのは、ファースト・アルバムより壮大で、より良い作品。そして、すべての曲ではないんですけど、スチュアート・プライスがプロデューサーとして参加してくれたことでダンサブルな要素が加わり、それが他の曲にもポジティヴな影響をもたらしていると思います」(オロノ)。

 「いま振り返るとファースト・アルバムは僕らにとってスケッチのような作品だった。今回のアルバムは、パンデミックのおかげで時間的な制約に縛られることなく、すべての要素があるべき正しい位置に納まるように気を遣ったし、ディティールにこだわった、手の込んだ作品になっているんじゃないかな」(ハリー)。

 ベックやアヴァランチーズに象徴される〈ポスト・エブリシング〉のローファイなサイケデリック・ポップの系譜、その現在進行形を模索してきた彼らは立体的かつ重層的な楽曲を構築。さらにペイヴメントのスティーヴン・マルクマスをはじめ、CHAI、星野源、フランスのシンガー・ソングライターであるピ・ジャ・マ、UKラッパーのディラン・カートリッジといった多国籍/多ジャンルなゲストを迎えている。

 「今回ゲストで参加してくれたのは、前作以降の4年間の間に一緒にツアーを回ったり、コラボレーションやリミックスを通じて出会い、おもしろいと思ったアーティストたち。今回初めて絡んだスティーヴン・マルクマスは私たちにとってのヒーローなんですけど、彼とは制作に入る前に一緒にランチをしたり、何度か一緒に遊んだりして仲良くなったんです。そうした才能溢れる人たちが作品に集ってくれたのは、自分たちにとってごくごく自然な流れでしたね」(オロノ)。