愛知・名古屋を拠点に活動するロック・バンド、EASTOKLAB。そのフロントに立つ日置逸人が毎月一作〈個人的名盤〉を選んで思いを綴っているのが、この〈EASTOKLAB日置逸人の極私的金字塔〉です。今回は、エモーショナルな文章と詩的な表現で好評な当ブログの特別編をお届けします。
特別編として掲載するのは、cinema staffのギタリストでリーダー・辻友貴さんとの対談です。地元・名古屋の先輩として日置が尊敬する辻さんとの対話は、自然と名古屋のロック・シーンの過去と未来をめぐるものになりました。
辻さんが運営する飲み屋兼レコード・ショップ〈LFR〉ことLIKE A FOOL RECORDSで、お互いの〈個人的名盤〉を持ち寄り、昼からビールを酌み交わしながら行われた先輩後輩対談。どうぞ最後までお楽しみください(なおこの取材は、東京都の外出自粛要請および政府の緊急事態宣言発令前に行いました)。
CLUB ROCK‘N’ROLLと名古屋ロック・シーン
日置逸人(EASTOKLAB)「辻さんとは、不思議な縁で繋がってますよね。僕らがUK.PROJECTでやらせてもらうことになって、LFRに自主盤やデビュー盤を置いてもらっ
たり」
辻友貴(cinema staff)「おもしろいよね。ずっと続けとると、こうやってまた繋がってくるんやなって」
日置「初めてお会いしたのは、岐阜の駅前でやった野外イベントでしたよね。当時、僕は高校生で、Half moon spiralってバンドで出ました。辻さん、覚えてるかなと思って」
辻「覚えてる覚えてる。〈歌めっちゃ上手いな〉って思ったし、〈高校生であのクォリティーってやばくない?〉みたいな話を(cinema staffの)メンバーとしたのも覚えてる」
日置「うれしいです。終わった後、〈すごくよかった〉って声をかけてくれたんですよね。それで辻さんに〈僕ら、ROCK‘N’ROLL※でやってます!〉って言ったのをめっちゃ覚えてます(笑)。
僕にとってのシネマは、やっぱROCK‘N’ROLLなんです。僕らはROCK‘N’ROLLをホームにしていたんですけど、当時はまだ〈このバンドはCLUB UPSETでやってる〉〈あのバンドはSONSET STRIP〉っていう感じがギリギリあって、みんなそれにプライドを持ってた。僕らの世代のイメージだと、シネマはROCK‘N’ROLLから出てきたバンドなんです」
辻「うちらはROCK‘N’ROLLでずっとやってたけど、あんまり〈どこのバンド〉っていう括りではやってなかったんだよね。soulkidsとか竹電(竹内電気)とか24 -two four-とかもROCK‘N’ROLLのバンドやけど、HUCK※やUPSETにも出てたし。もちろんシネマが最初に出たのはROCK‘N’ROLLやし、ずっとお世話になってたけどね」
日置「高1のときに(cinema staffの)『Blue,under the imagination』(2010年)が出たんですよね」
辻「ってことは、THE NOVEMBERSとツアーを回っとった時代や(笑)」
日置「そのとき、SOUND-TVで“君になりたい”のミュージック・ビデオを観たんです。OGRE YOU ASSHOLEもそれで知って、名古屋にこういうかっこいいバンドがいっぱいいるんだって思って※。
名古屋でライブをするならROCK‘N’ROLLでやりたいと思ったのは、シネマが出てたからなんです。高校2年の頃でしたね。地元のライブハウスの人からも〈名古屋でやったほうがいいよ〉と言われたので、マジで震えながらROCK‘N’ROLLに音源を持っていきました(笑)」
辻「あはは(笑)。(店長の)ホンダさん、めちゃくちゃ怖かったっしょ(笑)」
日置「ちびりそうになりました(笑)。それからは本当によくしてくれて。制服のままROCK‘N’ROLLに行って演奏していましたね。自分たちもここから始めて、シネマみたいになっていきたいなって思ってたんです」
辻「高校生でROCK‘N’ROLLに出とったってこと? すごいなあ(笑)。うちらがROCK‘N’ROLLに出はじめた頃、オウガはほとんど出なくなってたんだよね。だから、ホンダさんに〈いつかROCKでオウガとやりたいです〉っていつも言ってて。それは叶わなかったんやけど(笑)。
高校生の頃から出てたってことは、周りに同世代はあんまりいなかったんじゃない?」
日置「いまは活動していないですけど、the unknown forecastは同世代でした。soulkidsが大好きで、(柴山)慧さんからはいろいろなことを教わったし、24 -two four-とかアステラス(明日、照らす)とかnothingmanとか、先輩たちの背中を見て活動していました。でも正直、いまはもう、そういう繋がりがなくなっちゃってて……。
また、あの頃みたいにできたらいいなって思うんですよね。ああいうシーンが、また名古屋に戻ってくるようにしたいんです。僕らが上の世代の人たちに憧れてたみたいに、自分たちががんばらないと、名古屋がおもしろくなっていかないなって。それこそ、辻さんのレーベル(LIKE A FOOL RECORDS)から作品を出してるmy young animalとかと一緒に。
my young animalは本当に生活のなかで音楽をやってて、それがめっちゃかっこいいですよね。名古屋でそういうのをもっと広めていけたらいいなって思います」
辻「my young animalは割り切ってやってるやん、仕事と音楽をさ。でも、バランスを保って続けてくのが大変やろうなとは、すごく感じてたね。それは、うちらも同じで。
でも10年以上シネマを続けながら、いまはこうやって店もやってて、ひとつ確立できたなっていうのはある。まあ、まだまだやけど」