Page 3 / 5 1ページ目から読む

あんな声になりたい――聴いているだけでワクワクする佐藤千亜妃の声

――もう1曲のシングル“nothing anymore”はすごく優しいバラッドです。ゲスト・ヴォーカルとして佐藤千亜妃さんを迎えているのも新しい試みですね。

「高校時代一番よく聴いていた日本のバンドがきのこ帝国だったんです。俺のユースを支配してくれたバンドでした。

“nothing anymore”の歌詞は自分がこれまで生きてきた色んな時期について歌っているんですけど、もちろんその中にはきのこ帝国を聴いていた場面もあって。だから、ここに佐藤さんの声が入ったら、すごく意味がつながると思ったんです」

『EVERYNIGHT』収録曲“nothing anymore”

――“GOLD”など、これまで発表した楽曲でも女性コーラスが入っていることはありましたが、清水さんと対を成すような存在感あるヴォーカルが入っているのは初めてですね。佐藤さんの歌の魅力はどこに感じていますか?

「やっぱり、圧倒的に声ですね。自分があんな風になりたいと思えるくらいに好きな声で、聴いているだけでワクワクしてしまうんです」

――すごくよくわかります。結果、いずれも違う方向性で新機軸を見せた3曲となりましたね。

「このシングル3曲のリリースだけで昨年全国ツアーを回ったんですけど、LIQUIDROOMでのファイナルの時に、ライブの雰囲気とかお客さんの反応が『GOLD』の時からガラッと変わったことに気づいて。“HIGH WAY BEACH”で描いた〈イメージの広がり〉をステージでも見せることができたと思います」

 

生まれた年〈1994〉と生まれた場所〈奈良〉

――では、この3曲を含んだアルバム制作にあたって、コンセプトやトータル性などは想定されていましたか?

「〈ロマンチックなアルバム〉ですかね。自分は15歳からずっと音楽をやっていますけど、中学生が聴いたらロック・バンドを始めたくなるようなアルバム。自分のことを歌うからこそ、それを色んな人のイメージにつなげたいというのは、ざっくりと考えていました」

――自分のことを歌うという意味では、“1994”では清水さんの生まれ年を歌っていますね。

「“1994”の歌詞は直接的なものを書けたなと思っています。何事も常に、自分たちの上の世代のやり方が前提になってしまうじゃないですか。でも、〈この世代でやりたいように生きていこう〉という応援の意味はありますね」

『EVERYNIGHT』収録曲“1994”

――それは正しく〈間違った答えを 僕らは求めている〉という箇所に色濃く表れていますね。

「1994年生まれの同世代はもちろんですけど、自分たちを見ている違う世代の人たちにも問いかけているんですよね。それぞれ、自分たちが一番いいと思うものに対して、ピュアに感動できたり、努力を怠らないことを続けてほしいだけなんです。

時代の要求に応じながら自分であり続けることって難しいんですよ。でも、〈そこに向かうためのエネルギーを持てるように背中を押そう〉ということをロック・バンドとして提示したのが“1994”ですね」

――清水さんがおっしゃる〈時代の要求に応じながら自分であり続ける〉とか〈ピュア〉という言葉にAge Factoryの本質が表れている気がします。そのような姿勢を保つために実践していることはありますか?

「やっぱり、奈良に居続けていることでしょうか。自分が生まれた場所だし、死ぬまでこの土地にいながら、ここで感じていることを世間に放っていくことに自分たちの本質がある。

俺らは奈良で活動していける環境を作るために、ずっと働きかけてきたんです。その結果、今すごくいいフィールドが広がってきているように思えるので、それを大事にしていきたくって」

――“HIGH WAY BEACH”のイメージは奈良にいるからこそ生まれたものだと思いますし、“Peace”の歌詞には〈学研都市〉という地元にまつわるワードも見受けられます。清水さんたちがそこまでこだわって奈良にいるのはなぜなのでしょうか? どこに価値を見出しているのでしょうか?

「〈奈良〉という場所だからではなく、ここが〈自分が生まれた場所〉であるからですね。ここにはとてつもなくたくさんの思い出があるから、それを無下にする必要がない。今いる環境で新しいものを見つけていくスタイルが自分たちに適していると思ったので、それを選んだということです」

『EVERYNIGHT』収録曲“Peace”