まだ遅くはない。もし未聴ならば、ぜひこの異次元サウンドに触れてほしい。コード・オレンジの通算4作目となるニュー・アルバム『Underneath』は、現代ラウド/ヘヴィー・ミュージックの最先端を突っ走る音像である。いまもっとも刺激的で、不穏なカオスを撒き散らす最重要アクトだと言っても過言ではない。間違いなく2020年を象徴するエポックメイキングな作品がここに誕生した。

CODE ORANGE 『Underneath』 Roadrunner/ワーナー(2020)

 もともとコード・オレンジ・キッズと名乗っていたこのバンドは、メンバーがまだ高校生だった2008年にペンシルヴァニア州ピッツバーグで結成。2012年にデスウィッシュと契約を結ぶと、同年に初のフル・アルバム『Love Is Love // Return To The Dust』を発表している。当時はコンヴァージ経由のカオティック・ハードコアを掲げ、〈恐るべき10代〉としてアンダーグラウンド・シーンにその名を浸透させていった。そして、現在のコード・オレンジに改名後、2014年にセカンド・アルバム『I Am King』を完成。この頃から現在に通じる電子音を隠し味的に採り入れているものの、本筋はファスト~ミドル~スロウと予測不能な楽曲展開で攻める激重サウンドが特徴的であった。同年には唯一の来日公演も開催されたが、筆者は2015年にイギリスで彼らのライヴを観た。そのパフォーマンスはオルタナティヴ色の強いヘヴィー・ロックという印象で、何かやらかしそうな緊張感を帯びた演奏は記憶の底に焼き付いている。

 そんなコード・オレンジが一気に衆目を集めるようになったのは2017年のサード・アルバム『Forever』からだろう。新たにロードランナーと契約を交わして登場した同作は、グラミー賞の〈最優秀メタル・パフォーマンス〉部門にノミネートされ、彼らが多くのメディアに注目されるきっかけになった。内容的にも前2作を凌駕するストロングな音像を叩き付け、そこに電子音やノイズをうまく絡み合わせることで、彼らの楽曲は他を寄せ付けないオリジナリティーを獲得するに至ったのだ。

 それから約3年、今回のニュー・アルバム『Underneath』を聴いた際には言葉を失った。従来のマッチョな肉体性はそのままに、プログラミングやエフェクト処理を施した電子音が大幅に増量されていたのだ。本来の生々しい演奏と対極に位置するそれらの要素を楽曲の中枢に取り込むことで、コード・オレンジの一筋縄ではいかない音楽性はさらなる進化と変貌を遂げることになった。

 共同プロデュースも担うメンバーのジャミー・モーガンは「このアルバムは、自身の中にある二面性、そして過密ですべてを曝け出し、消費し尽くしたデジタル・ニルヴァーナの中にある社会の二面性と対峙することについて語った作品だ」と解説している。人間の光と闇、AI化が進む現代社会を投影したような画期的なサウンドメイキングは、まさしく2020年仕様のヘヴィー・ミュージックと言える仕上がりだ。というのも、本作でアディショナル・プログラミングを担当しているのは、ナイン・インチ・ネイルズやマリリン・マンソンなどを手掛けてきたクリス・ヴレンナ。彼の起用によって楽曲のインダストリアル要素はさらに増し、それとバンドが持つ凶暴性や混沌感と強く結び付くことで、途轍もないケミストリーを生み出すことに成功しているのだ。聴き手の意識を錯乱し続ける楽曲の衝撃力たるや、過去作とは比較にならないレヴェルに到達している。その意味においても、エクストリーム音楽好きは避けて通れない超マスト・アイテムと断言したい。なお、日本盤ボーナス・トラックに用意された“The Cutter”が本編に入っていても何ら違和感のないエッジ鋭いナンバーであることを付け加えておこう。

 


コード・オレンジ
ジャミー・モーガン(ヴォーカル/ドラムス)、エリック“シェイド”バルデロース(キーボード/プログラミング/ヴォーカル)、リーバ・メイヤーズ(ヴォーカル/ギター)、ジョー・ゴールドマン(ベース)、ドミニク・ランドリナ(ギター)から成るハードコア~メタルコア・バンド。2008年に4人組のコード・オレンジ・キッズとしてピッツバーグで結成される。2012年にデスウィッシュから初のフル・アルバム『Love Is Love//Return To Dust』を発表し、2014年の2作目『I Am King』を機に現在のコード・オレンジに改名。ロードランナーに移籍し、2017年の3作目『Forever』発表後に現在の編成となる。このたびニュー・アルバム『Underneath』(Roadrunner/ワーナー)をリリースしたばかり。