チェロの可能性を広げるソッリマの多角的な魅力を表現した2枚のアルバム

 マリオ・ブルネロやヨーヨー・マ、2CELLOSをはじめ、世界中のチェリストがこぞってその作品を取り上げているシチリア出身のチェリスト、ジョヴァンニ・ソッリマ(1962~)。日本には2004年の〈東京の夏音楽祭〉で初来日したのだが、昨年2019年にはなんと15年振りに来日して、ドヴォルザークの“チェロ協奏曲”を演奏(共演は藤岡幸夫指揮、東京シティ・フィルハーモニック)し、また100人のチェリストがステージ上に一同に会して演奏する〈100チェロ〉の公演を行うなど、音楽家として圧倒的な存在感を見せつけた。

 ソッリマの出身はシチリア島のパレルモだが、シチリア島そのものが古代から様々な文化の影響を受けて来たように、ソッリマの作品にもヨーロッパのルーツ的な音楽から同時代のロックまでの影響が感じられる。今回ソッリマというチェリストの多角的な魅力を表現した2枚のアルバムがリリースされる。

GIOVANNI SOLLIMA カラヴァッジョ PLANKTON(2020)

 その1枚は『カラヴァッジョ』。もともとはイタリアのトリノ・バレエ団からの依頼で書かれた作品で、それをアルバム用に再構成したものだ。イタリアのバロック絵画を代表する鬼才カラヴァッジョからインスピレーションを得たバレエのための作品らしく、カラヴァッジョの絵画(有名な“リュートを弾く若者”)の中に描かれたルネサンス期の作曲家ジャック・アルカデルトのマドリガルも引用される。ルネサンス期の音楽から現代のエレクトロニクスを含んだ音楽まで、ソッリマの自由で豊かな発想による作品が詰め込まれており、その中にはソロ曲としても有名な“ラメンタティオ”も収録されている。

GIOVANNI SOLLIMA ナシュラル・ソングブック ワーナー(2019)

 もう1枚はほぼ10年の歳月をかけて次第に熟成していった音楽を集めた『ナチュラル・ソングブック』。音楽だけでなく、ブラウニングの詩、ウディ・アレンの映画などから影響を受けた作品もあり、また氷でボディを作った〈アイス・チェロ〉による協奏曲も収録され、ソッリマの規格外の音楽的魅力を味わえる1枚である。