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ライブを経てナチュラルに姿を変えていった『Extended』の楽曲

――では、1曲ずつアルバムの楽曲を紐解いていきたいんですけど、1曲目の“Cruise”は最新作『Extended』(2017年)から。現在のバンドのモードにいちばん近い楽曲をどう調理しようと考えましたか?

JxJx「オリジナル・ヴァージョンとのいちばんの違いは、管楽器が増えているところ、要するにゴセッキー(後関好宏、サックス/フルート)が参加しているところですね。全体のアレンジはあまりいじってなくて、強いて挙げるとしたら、要所要所の鍵盤のオクターヴを変えたくらい。でも、そういった細部の違いが地味に効いてるんじゃないかと思ってます」

MAURICE「『Extended』や『OUT』といった新しめの作品は、無理にアレンジを変えずとも、ゴセッキーを交えて、ライブでやっているうちに尺だったり、細部だったりが自然と変わっていったところもあるだろうし、それくらいの変化でいいんじゃない?って」

松井「『Extended』を出してから3年が経ち、その間に演奏を続けてきて、ここをもうちょっとこうすればよかったという、いくつかのポイントが僕にはあって、今回はそういうところをトリートメントしていくというか、演奏し直せるチャンスをもらったという感じですね」

――2曲目の“Palm Tree”も最新作『Extended』の楽曲ですが、フェードアウトで終わっていくオリジナル曲に対して、ここでは終盤にもうひと盛り上がり足されていますよね。

JxJx「もともと『Extended』のなかでは、リラクシンな、ちょっとした曲という立ち位置だったんですけど、ライブでこの曲を1曲目にやってみようということになったとき、曲の終わりにもうちょっと続きがあったほうがライブ全体の流れが良くなるんじゃないかって。リハーサルのときにMAURICEがホーンのリフを足してくれて、そこから2段階くらいの修正を経て、今の形に落ち着きました。この曲のポイントとしては原曲よりテンポを下げたところですかね」

――あと、オリジナルよりもオルガンが引っ込んだことで、この曲の持っているレゲエ感よりもファンク感にフォーカスが当たっているように思いました。

JxJx「なるほど。テンポが落ちたことで、演奏に隙間が出来て、16分のノリがわかりやすくなったというか。ギターのカッティングがそこを担当してますが、ファンキーさが増したのかもしれないですね。あと重要なのが、タンバリンの16分。そのあたりのグルーヴが強調されたんでしょうね」

 

 

パンク回帰した『THE ACTION』にいま向き合うと

――続く3曲目の“Move or Die”は、バンドがパンク回帰した2008年のアルバム『THE ACTION』の楽曲です。オリジナルのパンキッシュなスカが、熟成味を増したオーセンティックなアレンジに大きく変化していますね。

JxJx「具体的な話をすると、(オリジナルを聴き直してみて)まず目についたところがブルースっぽいコード進行なんです。なのでおのずとオーセンティックなアレンジにも仕立て上げられるだろうな、と。それでリズムを変えるところから始めて、テンポを落としてみたんですけど、おっと、どうもそれだけでは曲が上手く成立しない、と」

MAURICE「ざっくり言うとこの曲はAメロとBメロが違うカラーの曲なんですよ。だから、AメロのオーセンティックなアレンジをBメロにも当てはめようとするとおかしなことになってしまう。その二つをちょうどいい塩梅で繋げるのにものすごい時間がかかりましたね」

JxJx「そうなんですよね。リアレンジの作業をしながら、〈やっぱりオリジナルは絶妙なバランスで成り立っていた曲だったんだな〉と再認識することにもなりましたね。あらためてオリジナルの完成度は高かったです」

――そして、同じアルバム『THE ACTION』から引っ張り出した4曲目の“A Man From The New Town”はヴォーカルをフィーチャーしたパンキッシュなスカをインストゥルメンタルのステッパーズ・レゲエにリアレンジしています。

JxJx「“Move or Die”がある程度形になった段階で、さらに難しい楽曲にチャレンジしてみようということになり、この曲を選びました。まずはオリジナルからどれだけ離れられるかってことで、テンションが高かったヴォーカル・メロディーをいちばん力が抜けそうなトロンボーンに担当してもらって、リズムはステッパーズ・レゲエにテンポダウンするリアレンジにしてみよう、と。そこまでの発想は早かったんですけど、その後の作業は案の定難航したという(笑)」

――この曲はステッパーズ・レゲエを軸に、ベースラインにはディスコのニュアンスを含ませていて、今のバンドのモードに引き寄せたアレンジになっていますよね。

JxJx「そうですね。この曲だけではないんですが、ライブでやることも考えて、アレンジ的に上手い落とし所を模索しました。原曲からグっと離れてみて、そのあとに少しずつ戻していくような感覚といいますか。あと、この曲をリハーサルでリアレンジしている途中からゴセッキーが合流したんですけど、彼が加わったら、曲が一気に格好良くなって、あらためて彼の存在感を実感した曲でもあります」