3. “君はcrazy”
某ラーメン店への狂おしいほどの愛を乗せて

今回セカンドEPの制作にあたって、〈とある日の休日〉というテーマを掲げた。前作は〈夜〉ということで、酒で例えるならウイスキーや焼酎など、スモーキーな蒸留酒的イメージ。『街を泳いで』では、休日の昼間に飲む缶ビール的爽快感を随所に散りばめた。

“君はcrazy”もそんな缶ビールソングの一つだ。いや、曲が纏っている雰囲気でいうと、スパークリングワインの方が近いかもしれない。それも手頃な価格で、下手したらラッパ飲みしちゃう様なやつ。

サウンド面では私の愛してやまない70年代のシティ・ポップ要素をふんだんに取り入れ、今作の中では飛び抜けて明るく、酒飲みリーマンバンドのイメージからは一線を画している。歌詞については、一見すると頰も赤らむ様な王道のラブソングだが、実は某有名ラーメン店への狂おしいほどの愛を乗せ込んでいるという緻密な作品だ(自分で言うな)。

缶ビールやらラーメンやら何がなんだかわからなくなってしまったが、とにかく爽やかでいてcrazyな愛の歌である。

 

4. “東京ミッドナイトクルージングクラブ”
レペゼン田舎者視点で描かれた東京の夜

この曲はYONA YONA WEEKENDERS結成当初、シティ・ポップを謳うにあたり何か都会をテーマにした曲が必要だと思い立ち作曲したものである。

というのも、我々は〈シティ〉には無縁の集まりだ。私は岡山県南部の港町、ギターのキイチは東京の下町代表葛飾区、ベースのシンゴは伊豆諸島の神津島、ドラムスのビーソルは岩手の山奥でそれぞれ青春時代を過ごした。中目黒で結成!とぶち上げたのには、田舎へのコンプレックスが半分くらいはあったかもしれない。

さて、都会的ってなんだろう?と考えた時に、真っ先に思い浮かんだのがクラブだった。私は初めてクラブに行った時の衝撃を今でも覚えている。ノリノリのDJ、畝る重低音、踊り狂う若者たち、VIP ROOMへと消える男女、そしてやたら高いハイネケン……映画やドラマでしか見たことのない世界がそこには広がっていた。

東京タワーや雷門を観に行った時よりも、新宿駅で迷子になった時よりも、吉祥寺駅で楳図かずおを1日に2回観た時よりも、何よりも私は初めてのクラブに〈東京〉を感じたのであった。

今では随分と身近な場所になってしまったが、クラブで過ごす時間は終わりがあるからこそ楽しい。薄暗い空間に、音楽とアルコール。調子の良い兄ちゃんに酒を奢ってもらったり、イケてる姉ちゃんに声を掛けたり、きっともう会うこともないけど、なんだか寂しいような気もするけど、その儚さがなんだか都会っぽくて私は好きだ。

そんなレペゼン田舎者視点で描かれた東京の夜の曲も、あって良いのではないでしょうか。

 

5. “SUNRISE”
母のアドバイスから生まれたYONA YONA流応援歌

今年の正月実家に帰省した際、前作『夜とアルバム』を聞いた私の母親から、
「なんかもっと誰かを応援するみたいな曲作ったらええんじゃないん? KANの“愛は勝つ”みたいな〜」という的確且つありがたいアドバイスを頂戴した。田舎のおばちゃんには、都会の夜や酒を歌った曲は響かなかったらしい。

とは言え、応援歌というのは目から鱗だった。

前作にも収録されている”明るい未来”。この曲はタイトルとは裏腹に、当時薄給&エヴリデイ残業&休日出勤上等!の絵に描いた様なブラック企業に勤めていた私の会社に対する愚痴をただひたすらに綴ったものだ。そもそもYONA YONA WEEKENDERSの結成も、このブラック企業に就職をして精神を病んでしまった私のストレス解消というところに端を発している。

そこから今日に到るまで数々の曲を生み出して来たわけだが、やれアルプスへGOだの、やれ今夜は無礼講だの、しまいには誰もいない海にまで行ってしまい、無意識のうちに現実世界のしがらみからガッツリ目を背けてしまっている有様である。

仕事なんて自分で選べば良いし、無理してブラック企業で働く必要もない。しかしながら、そうも言っていられない現実があることも理解しているつもりだ。だとすれば、ただ愚痴をこぼすよりもそんな人たちに寄り添い、背中を押してあげられた方が建設的ではないか!と、母のアドバイスから思い立ったわけである。母ちゃんありがとう。

〈All you need is sunrise〉

明日なんて来なけりゃいいのに……と思う日もあるだろう。
でも陽が昇れば、そんな憂鬱を一杯のコーヒーとこの曲で打ち破って欲しい。ちなみに二日酔いの人は経口補水液オーエスワンが効果覿面です。