〈ツマミになるグッドミュージック〉を奏でるバンド、YONA YONA WEEKENDERS。2021年のファーストアルバムの限定LP化新曲“夜行性 feat. 蔡忠浩(bonobos)”の発表、そして初のワンマンライブ〈YONA YONA WEEKENDERS ONEMAN LIVE -1989’s-〉の開催を控えるなど、いまノリにノっている4人組です。そんなYYWのフロントマンにしてラーメン好きとして知られる磯野くんによるこの連載。残念ながら最終回となる十杯目は、東京・御茶ノ水の〈麺屋 睡蓮〉の味玉つけ麺と和え玉から聴こえる音楽を紹介してくれます。磯野くん、十杯の美味しいラーメン × ミュージックを届けてくれてありがとうございました! *Mikiki編集部

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リスペクトするbonobos蔡忠浩さんが教えてくれたラーメン屋

去る2022年4月7日〈ヨナの日〉、YYWの新曲”夜行性 feat. 蔡忠浩”が配信リリースされた。今作は我々がリスペクトするバンド、bonobosのフロントマン蔡さんを迎えたコラボシングルだ。

2022年のシングル“夜行性 feat. 蔡忠浩(bonobos)”

何を隠そう僕はbonobosの大ファン。”THANK YOU FOR THE MUSIC”はもうカラオケで何回歌ってきたかわからない。現体制になってからリリースされた”23区”は、ブラック企業でボロボロになっていた当時の心の支えだったし、尚且つYYWを結成して間もなかった僕が、音楽的に大きく影響を受けた作品でもある。

蔡さんのボーカルRECに立ち会わせて頂いたのだが、ファンであり、憧れでもあるアーティストの歌声が自身の楽曲に重なっていく様子は、言葉で表せないほどの感動と興奮の連続だった。

RECの合間に談笑していると、蔡さんもなかなかのラーメン好きであるということがわかった。折角なので、当連載記念すべき十杯目は今回のコラボシングルのリリースにかこつけて、蔡さんにオススメして頂いたラーメン屋に行ってみることに。

 

旨味が凝縮された味玉つけ麺、抜群の美味さの和え玉

向かったのは御茶ノ水駅から徒歩6分ほどの場所にある、〈麺屋 睡蓮〉。つけ麺が人気の店とのことだが、蔡さん曰く〈和え玉〉がめちゃくちゃ美味しいらしい。和え玉とは、替え玉の麺にタレや薬味などが載ったもので、油そばの様にそのまま食べても良し、残ったスープでつけ麺の様に食べても良し。一玉で二度美味しいという逸品だ。

オープンと同時に入店し、味玉つけ麺(中)970円と、和え玉200円の食券を購入。和え玉の食券は出番まで大切に取っておく。
店内はカウンター席のみのこぢんまりとした空間で、感じの良いご主人と奥さんが迎えてくれた。ご夫婦で切り盛りしているとのことだ。

隣で花粉症に苦しむマネージャーを尻目に「プロ野球スピリッツA」に興じているうちに、味玉つけ麺がトレーに載って着丼だ。

濃厚そうなつけ汁には笹切りの白ネギがたっぷりと浮かぶ。麺はツヤツヤで、まるで期待の若手女優かのように美しく瑞々しい輝きを放っている。麺の上には厚切りの豚バラチャーシューと味玉。昨今の豚肉高騰の影響もあり、仕入れ状況によってチャーシューの部位が変わる可能性もあるそう。

というわけで、まずは通ぶって麺をそのまま啜ってみる。ほんのり小麦の風味を感じるストレートの中太麺は、見た目に違わぬ瑞々しさ。つるつるモチモチで喉越しも抜群だ。こちらは菅野製麺所の麺を使用しているとのこと。

お次はつけ汁をたっぷり纏わせて頂く。オーソドックスな魚介豚骨のWスープだが、両者のバランスが非常に良い。スープは見た目ほど濃度はなくサラリとして食べやすいが、これでもかという程に旨味が凝縮されている。
カエシは甘みが効いており、〈この味どこかで……〉と思って調べると、ご主人が東池袋大勝軒の系列店ご出身とのことで納得がいった。
300gの麺をするするっと平らげ、満を持して和え玉コールだ。

和え玉は特製の醤油ダレに細切れのチャーシュー、みじん切りの玉ねぎが載っている。しっかり混ぜて先ずはそのまま頂く。
パツパツと歯切れの良い細麺に、パンチのある醤油ダレと魚粉がしっかりと絡んで抜群の美味さ。玉ねぎのシャキシャキ感も良いアクセントになっており、蔡さんが「和え玉は必ず頼む」と言っていたのにも納得だ。
半分ほど食べ進めたあとは、残ったつけ汁に投入して頂く。酸味の効いたつけ汁と合わさることで、また違った味わいを見せる。

胃のキャパシティー的にはもう2和え玉くらい余裕でいけそうだったが、ぐっと堪えてスープ割りでシメることに。
器を渡すと、味のバランスが崩れない様に残ったつけ汁と割りスープの量を調整し提供してくれる。この一手間がとてもありがたい。

スープ割りもじっくり楽しんで完食。席を立つと、「ありがとうございました、いってらっしゃい」と温かく見送ってくれた。ラーメン屋で「いってらっしゃい」と言われたのはもしかすると初めてかもしれない。オフィスワーカーが多いという地域性もあるのだろうが、お客さんに寄り添った温かさに胸が熱くなった。