グルーヴィーな演奏とメロウネス溢れる歌声で〈ツマミになるグッドミュージック〉を奏でる4人組、YONA YONA WEEKENDERS。先日、待望のファーストアルバム『YONA YONA WEEKENDERS』をリリースしました。そんな彼らのフロントマン、磯野くんの連載が〈ラーメンから歌が聴こえる〉です。

磯野くんはとにかくラーメンが大好き。アルバム『YONA YONA WEEKENDERS』の特集記事では、音楽家としてもラーメン好きとしてもリスペクトしているサニーデイ・サービスの田中貴さんとの対談が実現しました。この連載では、そんな彼が愛してやまないラーメンを、音楽にたとえながら紹介してくれます。

今回は、NHKの音楽番組「シブヤノオト」に出演した際に訪れたNHKの食堂に入店。多くのタレントに愛され、近年でも中山秀征や二宮和也らが絶賛していた名物ラーメンから聴こえる歌とは? *Mikiki編集部

★YONA YONA WEEKENDERS磯野くんの〈ラーメンから歌が聴こえる〉記事一覧はこちら

『YONA YONA WEEKENDERS』収録曲“終電で帰ります”

 


シブヤノオト出演、そしてNHKの食堂へ

11月某日、僕はNHK放送センターの食堂にいた。どうしてもこの連載で歌にたとえてみたかった〈憧れのラーメン〉を食べるためである。

事の発端は、僕たちのマネージャーからのLINEだった。

「『シブヤノオト』、出演決まりました!」

YONA YONA WEEKENDERS結成5年目に突入した今年。EPのリリースを皮切りに、初のワンマンライブ、メジャーデビュー、ファーストアルバムのリリース、そして全国ツアーと順調に歩みを進めていたが、まさか地上波生放送の出演にまで漕ぎ着けるとは……。

それだけでも大ごとなのだが、この連載を読んで僕のラーメン愛を知ってくれたディレクターさんのご厚意により、「番組内で流すVTR用に、NHKの食堂でラーメンロケをしませんか?」という大変に光栄なご提案を頂いたのだ。

NHKのラーメンといえば、数々の芸能人やアーティストが〈思い出の味〉として挙げていることで知られる、僕にとっては憧れのラーメン。一般の人が食べられる機会はなかなかないだろう。そんな千載一遇のチャンスを逃すまいと、僕は二つ返事でOKした。

そしていよいよロケ当日。「上手く編集するんでとにかく好きにやっちゃって下さい!」というあまりに不安過ぎる打ち合わせののち、遂に僕の人生初のラーメンレポートが始まった。

 

実家に帰ったみたいな安心感の〈また帰りたくなる味〉

NHKの食堂入口には大きな券売機が4台。その右手にあるショーケースの中に、食品サンプルが並んでいる。定番の定食系にカレー、そのなかで一際輝きを放っている(僕にはそう見えた)のが〈ラーメン〉だ。「いやぁ美味しそうですね〜」と何の捻りもないレポートに自分で苦笑しつつ、ラーメン食券を購入。内へと進んでいく。

食堂内は大小のテーブルがズラリと並び、すでに多くの人で賑わっていた。飲食スペースの左手にカウンターがあり、定食、カレーといった具合に提供口が分かれている。麺類コーナーの列に並び、お兄さんに食券を渡してから完成までの工程をじっくり観察する。

麺がゆで麺機に投入されている間に、カエシ、寸胴の中のスープが丼へと注がれる。黄金色の綺麗なスープだ。茹で時間は2、3分程だろうか? お兄さんがテボを持ち上げ、ダイナミックな湯切りを一発お見舞いしたあと、遂に麺とスープが融合する。トッピングをパパッと手際よく乗せ、あっという間に出来上がり。

トレーに乗ったラーメンから、美味しそうな匂いとほかほかの湯気が立ち込めている。赤いどんぶりに、チャーシュー、白ネギ、メンマ、海苔という超王道のルックスだ。ぞろぞろと撮影クルーを引き連れながらテーブルを探す。食堂中の〈誰なんだ、こいつ……?〉という視線に耐えつつ、少し奥まった場所に着席した。今回に関しては例外だが、トレーを持って席を探すワクワク感も、食堂ラーメンの醍醐味の一つだろう。

カメラを前にガチガチに緊張しながら、先ずはスープを一口。ふわっと醤油が香る熱々スープは、僕の緊張を解きほぐしてくれるような優しくほっとする味わいで、身体中にじんわりと染み渡る。野菜、鶏ガラ、魚介で出汁を取っているというこのスープ、なんと無化調とのこと。忙しいテレビ業界の方々の胃袋を満たしているとあって、身体にも優しいとは……。

麺は細めの縮れ麺で、あっさり目のスープがしっかりと絡む。ズルズルッと音を立て、豪快に啜る。

「美味い!」

自然に言葉が溢れた。別に出汁なんて感じなくても、一思いに、無我夢中で食べればいい。何だかよくわからないけどとにかく美味い。きっとそれがラーメンのあるべき姿だ。特出するものはないかもしれないが、素朴で懐かしい、まるで実家に帰ったみたいな安心感。確かにこれは〈また帰りたくなる味〉だなと納得した。

撮影が終わり緊張から解き放たれた僕は、インサート用のラーメンまでしっかり完食。大満足で食堂をあとにした。