グルーヴィーな演奏とメロウネス溢れる歌声で〈ツマミになるグッドミュージック〉を奏でる4人組、YONA YONA WEEKENDERS。先日、待望のファースト・アルバム『YONA YONA WEEKENDERS』を2021年11月3日(水)にリリースすることを発表しました。そんな彼らのフロントマン、磯野くんの連載が〈ラーメンから歌が聴こえる〉です。

R.M.T.T”(ラーメン食べたい、の意)という曲があったり、6月にリリースしたシングル“Good bye”は“R.M.T.T”のモティーフになったラーメン屋の店主への鎮魂歌でもあったりと、自他ともに認めるラーメン好きの磯野くん。この連載では、そんな彼が愛してやまないラーメンを、音楽にたとえながら紹介してくれます。

今回は、東京・新代田にあるBASSANOVAに入店。異色の逸品、グリーンカレーソバから聴こえる歌は何でしょう。 *Mikiki編集部

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2021年のシングル“Good bye”

 


磯野くん、タイへ行く

初めての海外旅行先はタイだった。二十歳の時にノリで作ってから一度も使わず眠っていたパスポートの有効期限が間も無く切れてしまうことに気づき、高校時代の親友を誘ってタイはバンコクでの男二人旅を画策したのだ。

当時僕は東京、友人は仕事の都合で山口に住んでいたため、中間地点である関西国際空港で落ち合うことになったのだが、当日、集合時間になっても現れない友人に痺れを切らし電話をかけたところ、

「……え、明日じゃなかったっけ?」

そう、彼はあろうことか出発日を1日間違え、山口にて絶賛仕事中。勿論飛行機に間に合うはずもなく、僕の初海外は思わぬ形で一人旅となってしまった。英語はおろか、タイ語なんて〈サワディーカー〉くらいしか知らない僕は、不安に怯えながらもエアアジアの狭い機体に身を預け、微笑みの国へと飛び立った。

初日は心細さに加え、そこら中にいる野犬にビビり、ホテルとセブンイレブンの往復で精一杯だったが、なんとなく心に余裕が出てきた翌日、勇気を振り絞って行った屋台のクイッティアオ(タイラーメン)の美味さと、屋台の姉ちゃんの微笑みが僕を全ての不安から解き放ってくれた。そこから行く先々で屋台やローカル食堂を訪れては現地の味に舌鼓を打った。

最終日、手持ちの金が底をつきそうだった僕は、ワット・プラケオの入場料が500バーツ(日本円で約1,500円ちょい)かかることを知り、急遽参拝を取りやめ、残金を近くの食堂でのメシ代に費やした。それくらい、すっかりタイ料理にハマってしまっていた。

 

和泰折衷と言う他ない、グリーンカレーソバ

そんな僕が今回訪れたのは、新代田駅近くにある〈BASSANOVA〉。こちらは元々原宿で豚骨ラーメン屋〈筑豊ラーメン ばらさか〉をやっていた店主が2号店としてオープンしたお店なのだが、一番人気はなんとグリーンカレーソバ。そう、世にも珍しい〈魚介豚骨meetsエスニック〉なラーメンなのである。

環七沿いに一際目立つオレンジの武骨な外壁、そして迫力のある〈BASSANOVA〉のロゴ。新代田FEVERにライブを観に行った帰り、怪しい光と美味そうな匂いに誘われて何度ここに吸い込まれただろう。ステンレス製のカウンターが映える洒落た店内で、迷うことなくグリーンカレーソバ(1,030円)の食券を購入する。

程なくして着丼。白い器に注がれたグリーンのスープの上には、炙られた鶏もも肉、穂先メンマ、水菜とベビーリーフ、真っ赤な糸唐辛子が乗っている。しばらくぶりの対面だったが、彩り豊かで相変わらず見るものをワクワクさせてくれるヴィジュアルだ。

スープを啜ると、ココナッツミルクのまろやかさとスパイスの爽やかさ、まさに〈グリーンカレー〉のそれが口いっぱいに広がる。しかし、そのもっと奥の方で、ベースとなっている魚介豚骨のスープがどっしりと鎮座し、この一杯をしっかり〈ラーメン〉としてまとめている。

程よく歯応えのある平打ちの縮れ麺は、個性的なスープとの絡みが抜群。シャキシャキの野菜と糸唐辛子の辛味も良いアクセントになって、夢中で食べ進める。ラーメンをじっくりと堪能した後は、グリーンカレーソバの醍醐味、残ったスープに追加注文したライスをどぼん。やはりこの濃厚なスープと米の相性は素晴らしい。瞬く間に完食した。

和洋折衷とは、日本と西洋双方の良さを程よく取り入れることを言う。今日本で当たり前のように食べられているカレー南蛮は、個人的に和洋折衷料理の代表格だと思うのだが、このグリーンカレーソバも、日本とタイの良さを取り入れたまさに〈和泰折衷〉。どちらにも偏り過ぎていない絶妙なバランス感、見事と言う他ない。