
THE King ALL STARS
2013年に結成されたロック・バンド。メンバーは、加山雄三(ヴォーカル/ギター)、キヨサク(ヴォーカル)、佐藤タイジ(ギター/ヴォーカル)、名越由貴夫(ギター)、古市コータロー(ギター/ヴォーカル)、ウエノコウジ(ベース)、武藤昭平(ドラムス/ヴォーカル)、タブゾンビ(トランペット)、高野勲(キーボード)、山本健太(キーボード)、スチャダラパー(ラップ)
メンバーを見たとき思わずゾクゾクって感覚が駆け抜けたけど、これほどカッコ良いロック・サウンドが詰め込まれているとは。豪華メンバーが集まったTHE King ALL STARSのファースト・アルバム『ROCK FEST.』のことだ。

何が豪華って、〈King〉が永遠の若大将、加山雄三だってこと。Kingとして彼が思いっきりギターを弾きまくり、シャウトしまくる本作はここ何十年でもっともロックな加山雄三を見せてくれる。今回アルバムの完成を記念して、特別鼎談を実施。集まってくれたのは、Kingのほか、モッズの若大将、古市コータロー(ザ・コレクターズ)と琉球の若大将、キヨサク(MONGOL800)のおふたり。
加山雄三に抱かれたい!?
――〈ARABAKI ROCK FEST.13〉のステージがバンド結成のきっかけなんですよね?
加山「〈ARABAKI〉のとき集合したのは7人かな。まずは探り探りやってみたんだけど、俺としては自分の不出来ぶりに大不満で。それで、もう一回ちゃんとやりたいな、と思っていたところ、みんなが賛同してくれて。どうせならレコーディングまでちゃんとやろうぜ!ってことになった。レコーディングでは俺の50年前の曲を引っ張り出してきたんだけど、こんなんでいいのかな?と思ったね。そんな古くありませんよ、ってみんなは言ってくれたけども。まあ、お世辞だろうけども(笑)」
古市「お世辞じゃありませんよ。僕はずっと加山さんのマニアで、そういうバンドをやっていたぐらいだから。ロックンロールって変わらないというか、いい意味で進化してないんでね。古さとか関係なく自然とやれましたよ」
キヨサク「今回、僕は歌とコーラスで参加してるんですけど、ライヴはもちろん、レコーディングのときも、あぁロック・バンドだなと感じてましたね。リーダーは加山さんですけど、周りのメンバーも全然気兼ねなく意見するし。目標に向かって集中するエネルギーがウネウネしていて、しっかりとバンドになっていた」

加山「最初からこういうロック系をめざしていてよかったなとつくづく思ったよ。焼けぼっくいに火じゃないけど、間違いなく心に火が点いたんだ。そういえば、〈GREENROOM FESTIVAL〉のあとにTwitterで〈加山雄三、ほんとにギター弾いてら〉なんて書き込みがあったよ(笑)。若い女の子らしい書き込みで〈加山雄三に抱かれたい〉なんていうのもあって、嘘つけよ!って思ったけど(笑)」
大事なのはスピリット
――おふたりに加山さんと初めてお会いしたときの印象をぜひお訊きしたいです。
古市「そりゃもう昔っから知ってますからね、一方的に(笑)。完全にスクリーン、TVの中の人ですよね。そういったスターですから、ドアを開けて初めてお会いしたときには、なんかおかしいな……と思いましたよね」
――(笑)。
加山「見てたのと全然違う、って?」
古市「いえいえいえ(笑)」

キヨサク「僕は、THE King ALL STARSのなかで2番目に若いペーペーなもんで、加山さんだけじゃなく、先輩たちの世界に飛び込むことの緊張はありました。ここで僕は何ができる? 何を残せる?って」
加山「緊張なんかしてないでしょう?」
キヨサク「楽しんでますよ(笑)。でも初日は緊張しました。あの日はみんながウワッと盛り上がっていて。でもその感じが良すぎた。そのあとのライヴにも参加したけど、爆発感がヤバかった」
加山「〈ARABAKI〉から1年間、それぞれに心の動きがあった。あの言葉にしがたい爆発はいったい何だべ?ってところから始まり、もっとやってみようぜ!ってなっていったんだよなあ。しかし音楽は世代を超えるっていうけど、これほど世代がバラバラなメンバーが揃ったバンドもそうないと思う(笑)」
――上と下で48歳の年齢差があるという(笑)。ところで『ROCK FEST.』の選曲はどうやって決めたんですか?
加山「(佐藤)タイジくんや武藤(昭平)くんらが、俺が昔に書いた英語の曲が全然古くなってないからこれやりましょうよ、って提案してくれて。彼らなりのアレンジを施してもらったわけだけど、全然違和感がなかった。それらを彼らが歌うってなったときには、やったぁ!と思ったね。やる気になってくれた証拠だから。で、彼らの歌がまた、俺より上手いんだ(笑)。最高なんだよ!」
――“Cool Cool Night”のような名サイケ・チューンがラインナップに入っていて嬉しい限りなんですが、この面子だから甦らせることができたというか、こんなにカッコ良く仕上げられたのは、このバンドじゃなきゃ不可能だったとすら思うんです。
加山「そうだね。他じゃできない。さっきキヨサクくんにヴォーカルだけじゃなくて、バンド・メンバーにならなきゃ駄目、だから作詞/作曲してほしい、って話したばっかりで」
キヨサク「どういう歌を書けばいいんですかね」
古市「キヨサクはヨナ抜き(音階)の曲やんないと(笑)」
キヨサク「あ、そういうテイストをさらっと入れて、加山さんを沖縄へと誘うという」
加山「それもいいな。海のイメージね。俺は浜辺じゃなくて船の上のほうが良いけど、ま、共通点が多いからな」
古市「僕はギター・インストの新曲とかやってほしいね」
キヨサク「3、4本のギター全員でハモるとか、カッコイイかも」
古市「エレキ・インストの名曲“ブラック・サンド・ビーチ”とか日本のロックの古典ですもんね。ああいうのがまた聴きたい。僕、この曲が弾けるんですけど、なんかフィーリングが違うと思っていて。本人が弾いてるのを見たら、ぜんぜんポジションが違ってましたね(笑)」
――加山さんがジャパニーズ・ロックのオリジネイターということは揺るぎない事実であり、それを証明してみせるのが『ROCK FEST.』であると。
古市「そうですね。実際に会う前からすごく音楽的な人なんだろうと思ってましたが、想像以上にそうでしたね。ギター・ソロのときに、この音入れるといいよってアドバイスをもらったんですけど、〈あ、ホントだ……〉ってなりましたもん」
加山「そんなこと言ったっけ? 偉そうだな。ごめんよ(笑)」
――今回ビックリさせられたのは加山さんの声量の凄さ。どの曲もド迫力ですよね。
古市「ピアノの音もデカいっすよ(笑)」
加山「あのね、英語の歌を歌ってきて良かったなと思うんだ。英語を話す人はみんな大きないい声を出すわけ。アメリカ人が部屋で喋ってるときはうるさいのなんのって(笑)。あれは英語が持つ特性だと思う。日本語っていうのは大人しく喋るから、それなりの声帯になっちゃう。フランク・シナトラの歌を歌おうとすると、やっぱり声を張って低い声をビューッと出そうとする。それでずっとやってきたから、発声法として良かったのかもしれないね」
――加山さんが音楽を始められた時代って、海外には手本とする音楽がいろいろあったと思うんですが、こと日本のシーンに目を向けてみると……。
加山「周りで参考にするものはあまりなかったなあ。だから結局はオリジナルを作るしかなくて、自分のバンドではそういう曲を歌ってた。ベース・キャンプに呼ばれて、ロックやカントリーをやる。そうすると大騒ぎになるんだよ。将校とか特別な部屋で美味いもの食わせてくれて(笑)。妙な自信を付けちゃったわけ。だけど映画に出るようになると、これがまったく違うことやることになってね、あ~あ……って感じだよ(笑)」
――(笑)それでは最後にアルバムの魅力について一言ずつ。
古市「好き勝手に聴いてもらえたら(笑)」
キヨサク「ライヴはぜひ観てもらいたいですよね。一発でやられちゃうと思うんで」
加山「やっぱりね、コータローくんをはじめ、みんなギターがスゴイんだ。それをバックに歌うと、も~気持ちいいなんてもんじゃないね」
古市「やっぱり、大事なのはスピリットなんですよ。つまり加山さんも僕ら寄りの人だったんですよね(笑)」
キヨサク「加山さんもせ~のでやるのが合っているミュージシャンだったと(笑)」
加山「そう、ロック・スピリット。いくつになってもそこは変わらないな」
▼文中に登場した楽曲のオリジナル・ヴァージョンが聴ける加山雄三の作品
左から、“Cool Cool Night”収録の67年作『加山雄三のすべて 第三集』、“ブラック・サンド・ビーチ”収録の66年作『加山雄三のすべて~ザ・ランチャーズとともに』(共に東芝/DREAMUSIC)
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