Ode To Myself
問答無用の存在感を誇った英国シーンきっての歌姫、エリー・ゴールディングが待望の新作をリリースした! すでに全英No.1を獲得した『Brightest Blue』に溢れている眩しいばかりの彼女の色とは……

 かの“Starry Eyed”の鮮烈なスマッシュ・ヒットからもう10年が経った。〈BBC Sound Of 2010〉で1位に輝き、同年のブリット・アワードでは批評家賞を獲得、ファースト・アルバム『Lights』が全英1位を記録。ギターを抱えて歌う大学生だったエリー・ゴールディングの人生はそれから一変した。〈ヘヴンリー・ヴォイス〉として愛される歌声とソングライティングのセンスを以て、いわゆる王道のポップスターとは似て非なる個性を確立した彼女は、向こう10年の英国ポップ・シーンを大きくリードする存在となる。2011年の“Lights”は大西洋を跨いで全米2位を記録し、2013年の“Burn”はシングルで初の全英1位をマーク。カルヴィン・ハリス“I Need Your Love”(2013年)と“Outside”(2014年)といった客演曲でも世界的なヒットを飛ばし、そのカルヴィンやスクリレックス、ナイル・ホーラン、エド・シーランらとの交際、テイラー・スウィフトらとの親交といったセレブ的な話題で世を賑わせた季節もあった。

 映画「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」のサウンドトラックに書き下ろした“Love Me like You Do”が全英1位・全米3位という過去最大級の成功を収め、サード・アルバム『Delirium』をリリースした2015年以降はやや活動のテンポを落としつつ、カイゴやクリーン・バンディット、ショーン・ポールらとのコラボも繰り広げてきた彼女だが、そうしたペースダウンの理由もこの新作を聴けば感じられるかもしれない。およそ5 年の時を経てついに完成を見た通算4枚目のニュー・アルバム『Brightest Blue』には、いまになって表現できる10年前の悩みや葛藤が綴られ、結婚という節目も経たエリーのパーソナルな現在形が確かに刻まれている。

 彼女を呼ぶ歓声で始まるオープナーの“Start”には、本編で唯一のゲストとなるサーペントウィズフィートの切なくも美しい歌唱をフィーチャー。ベース・ヘヴィーなリード曲“Power”は、彼女いわく「21世紀の人間関係についての曲で、SNSの表面的なことや物質的なものに左右される人間関係を歌っている」という重厚なシンセ・ポップだ。過去から未来へ繋がる希望を帯びた表題曲“Brightest Blue”も圧倒的なスケールで響いてくるし、旧知のスタースミスも制作に関与して彼女自身を表現した美しいピアノ・バラード“Woman”の説得力もとんでもない。大半のプロデュースを担ったのは馴染みのエンジニアでもあるジョー・カーンズ。独特の空間を操るような彼女の歌唱にマッチする幻想的な音風景が今回も緻密に描かれている。

 なお、2018年にリリースしたディプロ&スウェイ・リーとのコラボ“Close To Me”をはじめ、ジュース・ワールドとの“Hate Me”、ラウヴとの“Slow Grenade”、16歳の頃の自身自身をテーマにした“Sixteen”、ブラックベアを招いた今年3月の“Worry About Me”に至るまでコンスタントにシングルを発表してきてはいた彼女だが、それら5曲はアルバム本編とは分かれた『EG.0』という括りで収録。豪華なボーナス・トラックには違いないが、彼女の中ではあくまでも別物ということなのだろう。むろん『Brightest Blue』の確固たるシリアスな世界観も、『EG.0』のヴァラエティーも、どちらも徹底的に純化されたエリーならではの表現には違いない。じっくりと浸って聴きたくなる奥深い大作の誕生だ。