©2019 Motown Film Limited. All Rights Reserved.

いかにして〈The Sound Of Young America〉になり得たのかを解き明かす!

 デトロイトのウェスト・グラウンド・ブールヴァード2468にベリー・ゴーディ・ジュニアが〈HitsvilleUSA〉を構えてから今年で60年になる。そんな記念すべき年に、アメリカ黒人文化史における最重要音楽レーベル、モータウン・レコードの輝かしい歴史を辿る映画「メイキング・オブ・モータウン」が公開される。本レーベルを扱ったドキュメンタリーと言えば「永遠のモータウン」という名作がよく知られているが、同作がモータウンの屋台骨を支えたハウス・バンド、ファンク・ブラザーズにフォーカスした内容だったのに対して、こちらは89歳で引退を表明した帝王・ベリー・ゴーディをカメラの前へと引っ張りだし、彼にビジネスや音楽作りの思想・哲学を雄弁に語らせながら、彼らの音楽がいかにして〈The Sound Of Young America〉になり得たのかを解き明かしていくリアルなレーベル・ヒストリーに仕上がっている。

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 あまりに有名なリリース曲の選考会議において喧々諤々討議する模様の音声が公開されるなど、レーベル運営の裏側を覗き見させてくれるが当然ながら興味深い。が、それ以上に惹きつけられるのは、モータウンがめざした明日の方角を指し示すヒット・ソング作りの極意が熱っぽく語られていくところだ。〈人種がなんだ、俺は勝ちたいんだ〉という気概を抱きながら、大衆受けしていた嘆き節のブルーズとは異なる洗練されたポップ・サウンドでもって固くて重かった扉をこじ開けようとしたゴーディとそのファミリーたちによる試行錯誤の歴史がじっくりと掘り下げられていくわけだが、ワクワクするようなレアなエピソードも満載で、最後まで気が抜けない。まだリトルなスティーヴィー・ワンダーがヒッツヴィルに初めてやってきた日の様子をマーサ・ヴァンデラスが嬉しそうに語るシーンや、ざらついたモノクロ映像の中でマイケル・ジャクソン少年がピーターパンのように躍動するシーンなど、かつてモータウンが魔法の国だったことを教えてくれるスペシャルな112分。月並みな物言いで申し訳ないが、すべての音楽ファン必見、という言葉しか出てこない。

 


CINEMA INFORMATION

映画『メイキング・オブ・モータウン』
監督:ベンジャミン・ターナー/ゲイブ・ターナー
出演:ベリー・ゴーディ/スモーキー・ロビンソン
字幕翻訳:石田泰子
監修:林剛
配給:ショウゲート(2019年 アメリカ・イギリス 112分)
◎9/18(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー
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