現代アメリカ最高の詩人、モータウンを成功に導いた副社長、名曲を量産するソングライター、敏腕プロデューサー、繊細な歌声の持ち主、説明不要なレジェンドがスモーキー・ロビンソンだ。まさにイヤーガズムなニュー・アルバム『Gasms』に浸りながら、いまこそ彼の功績を振り返ってみよう

 今年で83歳。ミラクルズでのデビューから65年を迎えたスモーキー・ロビンソンが新作『Gasms』を発表した。この10年の間には人気アーティストを迎えたセルフ・カヴァー集やクリスマス盤もあったが、オリジナル・アルバムとしては自身主宰のロブソから出した『Time Flies When You’re Having Fun』以来14年ぶり。故リッキー・ローソン(ドラムス)など同作の演奏陣がふたたびクレジットされた新作には過去のセッションも含み、制作に5年を費やしたという。時流におもねるわけでも懐古に浸るわけでもなく、スモーキーらしいデリケートな歌い口によるマイルドでテンダーなソウルが並ぶアルバムは、至福の時間を提供してくれる。オルガスムスを連想させる性的なタイトルは一部で物議を醸しているが、12歳下の現夫人や娘に反対されながらも「いま自分は40歳の気分なんだ」と譲らなかったあたりに、この人の現役ぶりが窺える。

SMOKEY ROBINSON 『Gasms』 TLR(2023)

 本人いわく〈現役〉の秘訣は、35年以上続けているヨガや早寝早起きの習慣。思えば、2004年にはヘルシーなソウルフードを扱う食品会社の設立にちなんだゴスペル盤『Food For The Spirit』を出した彼は、赤身肉を食べないことでも知られている。80年代にはドラッグに手を染めたこともあるが、それもホンの一時期。ゆえに声も変わらない。この健康体と現役ぶりはミラクルではなく自己管理の賜物だろう。近年はアンダーソン・パークやチャーリー・ウィルソンの曲で共演し、功労賞を受賞した今年のグラミー授賞式ではウォンヤ・モリス(ボーイズIIメン)の愛息たちによるワンモアを従えて歌うなど、元気な姿を見せていたことも記憶に新しい。

 

モータウンの立役者

 テンプテーションズの60周年記念アルバム『Temptations 60』(2022年)にスモーキーが参加したのは、彼らがスモーキーの作る曲を歌って出世したからに他ならない。“My Girl”(64年)はテンプスの運命を変えた名曲だ。かようにスモーキーは、ミラクルズのリード・シンガーとして歌いながらモータウンの同僚たちに楽曲を提供するソングライター/プロデューサーとしても活躍し、副社長の肩書きも得てモータウンの発展に貢献した。自作自演が認められなかった60年代のモータウンで唯一の特例扱いを受けていたスモーキーは、70年代にセルフ・プロデュース権を獲得するマーヴィン・ゲイやスティーヴィー・ワンダーの先を行っていたとも言える。

 本名はウィリアム・ロビンソンJr。〈スモーキー〉は、カウボーイが好きだったことからスモーキー・ジョーにちなんで叔父が名付けたニックネームとされる。1940年2月19日にミシガン州デトロイトで生まれ、10代の時に地元ノーザン高校の友人たちとドゥワップの流れを汲むファイヴ・チャイムズを結成。その後メンバーを変えてマタドールズとして活動する頃には、後にミラクルズで共にデビューするロニー・ホワイト、ウォーレン“ピート”ムーア、ボビー・ロジャース、徴兵で抜けたエマーソン・ロジャースの妹でスモーキー夫人(後に離婚)となるクローデットが揃い、彼らのアイドルであるジャッキー・ウィルソンのマネージャー、ナット・ターノポルらが主催するオーディションを受けはじめる。が、良い評価を得られず、落胆しながら会場の廊下を歩いていたところ、ある人物がスモーキーに声を掛けた。ベリー・ゴーディJrである。

 女性メンバーがいるのに闘牛士を意味するグループ名は猛々しすぎるという理由からミラクルズに改名した彼らが、ゴーディ制作の“Got A Job”でエンドからデビューしたのが58年のこと。その後チェスからもシングルを出すが、これらが起爆剤となってゴーディはモータウンを設立。彼の思いつきで深夜3時に録り直して再発した新ヴァージョンがR&Bチャート1位となった“Shop Around”(60年)でミラクルズとモータウンの名前は全国に知れ渡る。その後ゴーディとスモーキーが実現したアメリカン・ドリームは、映画「メイキング・オブ・モータウン」(2019年)でも語られる通りだ。

映画「メイキング・オブ・モータウン」より
©2019 Motown Film Limited. All Rights Reserved

 “Shop Around”は〈ひとりの女性に決める前に、しっかりと見極めなさい〉というママの忠告を歌にした歌詞も評判を得た。ミラクルズの魅力は、地声が裏声に近いスモーキーを軸としたヴォーカル・ワークと、短編小説や映画を思わせる美しく韻を踏んだ歌詞にあると言われる。その奥義をスモーキーに授けたのはゴーディであった。当初スモーキーが書く曲にはストーリー性がなく、ゴーディはダメ出しを連発したというが、〈自分の感情を詩的に表現し、瞬時に人々の耳を捉える才能がある〉としてスモーキーを重用。“I’ll Try Something New”(62年)からも、そんな詩的センスを感じ取ることができる。〈スモーキーのロマンティックな曲を聴いてウットリした女性たちが赤ん坊を産んだ〉ともゴーディは話す。まさにベイビー・メイキング・ミュージック。ならば今回の新作タイトルがセックスを連想させる『Gasms』ときても不思議はない。だが、〈「I Love You」を、いままで誰も言ったことがない表現で伝えたい〉というあたりに、希代の作詞家であるスモーキーの矜持が感じられる。

 

あらゆる人種に向けた音楽

 ミラクルズに“Mickey’s Monkey”(63年)を提供したホランド=ドジャー=ホランドも〈スモーキーの曲から学んだ〉と賛辞を惜しまない。そして、スモーキーを〈現代アメリカ最高の詩人〉と評したのはボブ・ディランだ。ビートルズもスモーキーの曲に感銘を受け、ミラクルズの“You’ve Really Got A Hold On Me”(62年)をカヴァーした。特にジョージ・ハリソンは、スモーキーのソロ2作目(74年)の表題から取った“Pure Smokey”(76年)というメロウ・チューンを発表するほど慕っていた。そんなスモーキーだけに87年には〈ロックンロールの殿堂〉入りを果たすが、ロック・フィールドからお墨付きを得なくても、60年代にミラクルズが数多くのヒットを放っていた時点で彼はスーパースターだった。

 もっとも、そうしたヒットがスモーキーの才能やセンスだけで生まれたわけではない。後のソロ時代も含めて、彼には複数の作曲パートナーがいた。なかでもミラクルズの同僚で幼馴染みのピートとは多くの名曲を共作。65年に発表した“Ooo Baby Baby”もそのひとつだ。スモーキーの細やかなヴィブラートが際立つこのバラードは、デルフォニックスやスタイリスティックスに先駆けたスウィート・ソウルの先駆けとも言われる。そして、同じく65年にヒットした“The Tracks Of My Tears”“My Girl Has Gone”“Going To A Go-Go”などのリフを生み出したのがマーヴ・タープリン。ミラクルズの専属ギタリストで、彼は後年までスモーキーを支えることになる。一方で、スティーヴィー・ワンダーたちと共作した“The Tears Of A Clown”(67年)のように、継続的なパートナー以外と組んで出したヒットもある。70年になって初のポップ・チャート1位を記録した同曲は、〈黒人だけではなく、あらゆる人種に向けた音楽を作るべきだ〉というゴーディの教えを守ってきたスモーキーにとって、ひとつの到達点であったに違いない。

 ミラクルズは〈フロントマンの名前をつけたら出演料が上がる〉という理由で、60年代半ばにグループ名をスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズに変更しているが、当のスモーキーは68年頃に脱退を決意。それは、流産を繰り返したクローデットとの間に子どもが生まれ、家族との時間を大切にしたいという思いからだった。こうして72年のツアーを最後にミラクルズを正式に脱退した彼は、アーティストとしても引退し、モータウンの副社長職に専念することになる。なお、ミラクルズにはビリー・グリフィンが加入し、LAを拠点に“Do It Baby”(74年)や“Love Machine”(75年)などのヒットを飛ばしていく。

 

シンプルに愛を歌う

 しかし、溢れ出る才能を周囲は放っておかない。新生ミラクルズへの応援歌のつもりで〈美しいハーモニーを歌い続けてほしい〉と書いた“Sweet Harmony”がモータウンの制作助手スザンヌ・ドゥ・パッセの耳にとまり、「これはスモーキー自身が歌うべき」と説得される。そこで渋々同意すると、マーヴ・タープリンに乗せられて共作した“Baby Come Close”もヒットし、アルバム『Smokey』(73年)を制作。ここからソロとしてのキャリアがスタートするのだ。タイミング的にはマーヴィンやスティーヴィーがニュー・ソウル路線のアルバムを出したことと重ね合わせたくなるが、彼の場合は単に成り行きだった。アルバムにはベトナム戦争に駆り出された若者を思って作った“Just My Soul Responding”という政治的な曲もあったが、それよりもスモーキーはシンプルに愛を歌うことに力を入れた。

 こうして70年代には、ブラック・シネマのサントラやディスコ・ソングも作りながら、マイルドでテンダーなスモーキー節を全開にした作品をコンスタントに出していく。なかでも、ソロ初のR&Bチャート1位となった“Baby That’s Backatcha”を含む75年作『A Quiet Storm』は、“Quiet Storm”が後にデ・ラ・ソウルの“Breakadawn”(93年)で、“The Agony And The Ecstasy”がリトル・シムズの“Two Worlds Apart”(2021年)で声ごとサンプリングされるなど再評価の機会も多い。さらに表題の〈クワイエット・ストーム〉という言葉は、アダルトで都会的なソウル・ミュージックを流すラジオ番組のフォーマットとして定着した。アルバムでは片親違いの姉ローズ・エラ・ジョーンズとの共作も目立ち、彼女とは前後にも“Virgin Man”(74年)や“Daylight & Darkness”(78年)といったメロウな曲を作っている。79年作『Where There’s Smoke...』で披露した“Cruisin’”も70年代屈指の名曲で、これはマーヴ・タープリンが作ったデモをもとに5年がかりで完成。歌詞の展開に悩んでいたところ、ハリウッドのサンセット大通りをドライヴ(クルーズ)中にヤング・ラスカルズの“Groovin’”を聴き、それをヒントに“Cruisin’”にしたというエピソードも興味深い。後にこれはディアンジェロにカヴァーされて再注目される。

 スモーキーとディアンジェロの楽曲コラボは実現していないが、スモーキーは自分の書いた曲が誰かにカヴァーされると、その歌い手にオリジナル曲を提供したいと思うようだ。キム・カーンズが80年作『Romance Dance』でミラクルズの“More Love”をカヴァーした時にも、彼女の次なる新作用に4曲をプレゼンした。が、キムのアルバムをプロデュースしていたジョージ・トービンは、〈君自身が歌う曲だよ〉と、みずから制作を買って出てスモーキーに曲を歌わせる。それが現時点でソロ最高位のヒットとなる優男感満開のAOR風バラード“Being With You”(81年)だった。80年代前半には、リック・ジェイムズとデュエットしたビッグ・バラード“Ebony Eyes”(83年)なども話題になり、同後半には“Just To See Her”(87年)もヒット。後者はスモーキーにとって初のグラミー受賞曲となる。

 ニュー・ジャック・スウィングにも挑んだ『Love, Smokey』(90年)を最後にモータウンを退社して、ゴーディを後ろ盾にした『Intimate』(99年)で一瞬古巣に戻った90年代。ベスト盤を含む企画作品が続いた2000~2010年代。それらを経て届いたのが、今回の新作『Gasms』である。スライド・ダンスを意識した“If We Don’t Have Each Other”などの先行曲の出来映えを裏切らない快作であることは冒頭で触れた通りだ。

 ベートーヴェンやショパンのように自作曲が永遠に演奏される存在になりたいと話すスモーキー。ゆえにサンプリングにも寛容な彼は、生誕50周年を迎えたヒップホップを、当初は批判されながら不屈の精神で成功を掴んだモータウンと重ね合わせる。つまり、どの時代にも〈サウンド・オブ・ヤング・アメリカ〉があるのだと。それをスモーキーは自身のキャリアを通して証明した。予定されている伝記映画を含め、これからも彼の偉業を振り返る時が何度もやってくるだろう。 *林 剛

スモーキーがプロデュースで参加した代表作。
左から、メアリー・ウェルズの64年作『My Guy』、マーヴィン・ゲイの66年作『Moods Of Marvin Gaye』(共にMotown)

スモーキーが客演した作品。
左から、リック・ジェイムズの83年作『Cold Blooded』(Motown)、ケニーGの88年作『Silhouette』(Arista)、ティーナ・マリーの2006年作『Sapphire』(Cash Money/Universal)

左から、エンゲルベルト・フンパーディンクの2014年作『Engelbert Calling』(Conehead UK)、2014年のトリビュート盤『The Art Of McCartney』(Arctic Poppy)、2018年のサントラ『Motown Magic』(Motown)、デヴィッド・ガーフィールドの2019年作『Vox Outside The Box』(Creatchy)、イル・ディーヴォの2021年作『For Once In My Life: A Celebration Of Motown』(Decca)、リタ・ウィルソンの2022年作『Now & Forever』(Sing It Loud)

 

COOKIN’ WITH THE MIRACLES
スモーキー脱退後も独自の道を切り拓いたミラクルズ

 幼馴染みのスモーキーと55年にファイヴ・チャイムズを結成したウォーレン“ピート”ムーアとロニー・ホワイト、そしてマタドールズ移行時に加入したボビー・ロジャースの3名は、スモーキー脱退後もミラクルズを継続。新リード・シンガーにビリー・グリフィンを迎え、リフレッシュした動きを見せていく。新生後の2作目『Do It Baby』(74年)からはビリーの持ち味を活かす表題曲がヒット。そしてLAをテーマにしたコンセプト作『City Of Angels』(75年)では全曲をピート&ビリーが書き、ディスコ対応に成功した“Love Machine”で全米1位を獲得する(ワム!のカヴァーもお馴染み)。なお、前後してピートはジャクソン・シスターズ“I Believe In Miracles”などの制作でも手腕を発揮した。

 そうして新たな魅力を確立したミラクルズだが、契約更新をモータウンに待たされたことから77年にコロムビアへ移籍。ビリーの弟ドナルドをギタリストとして加えた5人組になるも成功には至らず、78年には解散となった。なお、ビリーはソロ転向して一定の成功を収め、90年代にはテイク・ザットやパサデナスらのプロデュースを手掛けている。

 一方、スモーキーと同時に離脱した妻のクローデット(64年にライヴ活動を引退していた)は家庭に入り、86年に離婚するまでは夫の作品に参加していた。また、73年に脱退したマーヴ・タープリンは盟友スモーキーのギタリスト/ソングライティング・パートナーとして活動。現役引退する前の『Timeless Love』(2006年)まで彼の作品には参加していた。 *出嶌孝次

左から、ミラクルズの75年作『City Of Angels』(Motown)、77年作『Love Crazy』、78年作『Miracles』、ビリー・グリフィンの82年作『Be With Me』、83年作『Respect』(すべてColumbia)

 

YOU REALLY GOT A HOLD ON US
膨大なリサイクルを生んでいるスモーキー・ロビンソン作の名曲15選! 文/出嶌孝次

1. Shop Around(1960)

スモーキーとベリー・ゴーディJrが共作してミラクルズが発表したチャーミングなアップ・ナンバーで、初の全米TOP5入り、初のR&BチャートNo.1を記録し、モータウンで初のミリオン・ヒットとなった。キャプテン&テニールのカヴァー(76年)も全米4位まで上昇している。2006年にグラミー殿堂入りを果たした。

 

2. Who’s Lovin’ You(1960)

“Shop Around”のB面に収録されたドゥワップ風味のスロウで、ブレンダ・ハロウェイやシュープリームス、テンプスといったモータウン勢に歌い継がれた後、ジャクソン5“I Want You Back”(69年)のB面に収められた圧巻の歌唱はテレンス・トレント・ダービーに受け継がれ、アン・ヴォーグ“Hold On”(90年)の冒頭で披露されたアカペラ作法はリトル・ミックス版に継承されている。

 

3. You’ve Really Got A Hold On Me(1962)
サム・クック“Bring It On Home To Me”に着想を得たというミラクルズの代表曲で、R&Bチャート首位/全米8位を記録。ビートルズが取り上げた効果か、ゾンビーズやスモール・フェイセズ、ソニー&シェール、ローラ・ニーロ、シー&ヒム、浜田省吾らが歌って幅広い方面でスタンダード化している。ジュールス・ホランドやエンゲルベルト・フンパーディンク版にはスモーキーが客演。98年にグラミー殿堂入り。

 

4. My Girl(1964)
メアリー・ウェルズに提供した“My Guy”(64年)の全米No.1ヒットを背景に、ロニー・ホワイトとの共作でテンプテーションズに書き下ろされ(詞は妻のクローデットにインスパイアされたそう)、65年に全米1位に輝いたテンプス/モータウンを象徴する一曲。オーティス・レディングがすぐに取り上げたほか、ローリング・ストーンズもカヴァー。後にサントラ『Motown Magic』でスモーキー自身も披露した。これまた98年にグラミー殿堂入り!

 

5. Ooo Baby Baby(1965)
共作したピート・ムーアのアレンジによるハーモニーも麗しい、ミラクルズきってのスウィートなナンバー(R&Bチャート4位)。甘くノスタルジックな風情が愛されてカヴァーも多く、特にリンダ・ロンシュタット版は全米7位のヒットを記録。メロウなザップ版も人気で、シールやレニー・クラヴィッツ、近年ではジェフ・ベック&ジョニー・デップも披露していた。

 

6. The Tracks Of My Tears(1965)
マーヴ・タープリンのギターを起点にピートも共作した詩情溢れるミラクルズの代表曲(R&B 2位)。アレサ・フランクリンやブライアン・フェリー、ボブ・ディラン、リンダ・ロンシュタット、コリン・ブランストーン、ボーイズIIメン、ドリー・パートン、ブライアン・アダムスなどカヴァーも膨大。ロッド・スチュワート版にはスモーキーも客演。2007年にグラミー殿堂入り。

 

7. Going To A Go-Go(1965)
ゴーゴーに触発されてピート、ボビー、マーヴと共作したミラクルズのアップテンポなリズム・ナンバーで、R&Bチャート2位まで上昇。ローリング・ストーンズがライヴで披露したほか、テン・シティ、フィル・コリンズらが取り上げている。

 

8. Get Ready(1966)
テンプスに提供した勇ましいアップ・チューンでR&Bチャート首位を記録するも、これを最後にテンプスのプロデューサーの座はノーマン・ホイットフィールドに明け渡す結果となった。70年にレア・アースのカヴァーが全米4位を獲得。スモーキーは同年にミラクルズで取り上げ、ソロでもディスコ・アレンジで披露している。後年のヒューマン・ネイチャー版にもスモーキーが客演。

 

9. The Hunter Gets Captured By The Game(1967)
同僚マーヴェレッツへの提供曲で、R&Bチャート2位を記録。恋の狩人が逆に捕われるという物語性もあり、ニューウェイヴ時代にブロンディやグレイス・ジョーンズらが取り上げた。サントラ『Batman Forever』でのマッシヴ・アタック&トレイシー・ソーンのヴァージョンも著名。

 

10. The Tears Of A Clown(1967)
スティーヴィー・ワンダーとヘンリー・コスビーが曲を固め、カリオペやファゴットを用いたアレンジからサーカスを連想してスモーキーが詞を書いたミラクルズの曲。アルバム『Make It Happen』に収録された後、英国のファンクラブ代表の推薦によってシングル化されて全英1位を獲り、その後USでもNo.1に輝いた。チョーズン・フューのほか、ザ・ビートやフィル・コリンズらがカヴァーし、スモーキーもブライアン・レイとのコラボで再演した。2002年にグラミー殿堂入り。

 

11. I Second That Emotion(1967)
アル・クリーヴランドとの共作で全米4位を獲得したミラクルズのヒット。94年にはマンハッタン・トランスファーとタミー・ワイネットが揃ってスモーキーを迎えて披露している。ニューウェイヴ時代にジャパンが取り上げて全英9位を記録。彼らはスモーキー作の“Ain’t That Peculiar”(マーヴィン・ゲイの65年曲)も歌っている。

 

12. A Quiet Storm(1975)
妹のローズ・エラ・ジョーンズと共作した官能的な含みのある人気曲。声ごとネタ使いしたデ・ラ・ソウル“Breakadawn”のメロウな効能で知られ、それを活かしたIDKの“Pinot Noir”もリリースされたばかり。ストレートなカヴァーではワークシャイのヴァージョンが素晴らしかった。

 

13. The Agony And The Ecstasy(1975)
ソロ転向後の楽曲はカヴァーよりもサンプリング例が多くなってくるスモーキーだが、『A Quiet Storm』収録のこちらはリトル・シムズの“Two Worlds Apart”に歌ごと使用された。妻との別居中に書かれたそうで、禁断の関係に伴う苦痛と恍惚が歌われている。

 

14. Cruisin’(1979)
全米4位を記録したマーヴとの共作曲。昨年ビジー・シグナルが取り上げたばかりで、遡ればクーリオの大ネタ曲や映画「デュエット」(00年)でのグウィネス・パルトロウ&ヒューイ・ルイス版、大黒摩季&明石昌夫などカヴァー例は多いが、よく知られているのはディアンジェロが披露したスムースなヴァージョンだろう。ブラジルのサンドラ・ジ・サーはスモーキーを招いて再演していた。

 

15. Being With You(1981)
アダルト・コンテンポラリー風味の人気曲で、R&Bチャート首位/全米2位のみならず、全英1位、全仏2位など欧州各国でも大ヒットした。都会的でドラマティックな導入部をスモーキーの声ごとループしたキャムロンの“Me & My Boo”(98年)がよく知られているほか、ケイティ・ペリーの“Power”も同じ部分を早回しでネタ使いしている。

 

DISCOGRAPHIC SMOKEY ROBINSON
スモーキーを知るための14枚
文/出嶌孝次

THE MIRACLES 『Hi We’re The Miracles』 Tamla(1961)

モータウン初のLP作品でもあったファースト・アルバム。ベリー・ゴーディJrが総指揮し、ドゥワップ色の残る“Depend On Me”、アイズレーズを下敷きにした“Way Over There”、クローデットがリードを取る“After All”など粗削りな部分も含めてレーベル初期の勢いを伝える。

 

THE MIRACLES 『The Fabulous Miracles』 Tamla(1963)

従軍中のピート・ムーアがジャケにいない4作目。代表曲“You’ve Really Got A Hold On Me”をはじめ、そのロマンス感を引き継いだ“A Love She Can Count On”がある一方、ロニー・ホワイトのペンによる“Happy Landing”などの明朗なポップさも男女混声ならでは。

 

SMOKEY ROBINSON & THE MIRACLES 『Going To A Go-Go』 Tamla(1965)

グループ名にスモーキーの名を加えて初のアルバム。そんなワンマン感に反して各人が制作面でも活躍し、一体感は増している。“Tracks Of My Tears”や“My Girl Has Gone”などヒットを連発してR&Bチャート首位(全米8位)を記録した、数字の面では絶頂期の一枚。

 

SMOKEY ROBINSON & THE MIRACLES 『Make It Happen』 Tamla(1967)

円熟味を加えつつ各々が着実に持ち味を発揮した安定作。スモーキーが妻クローデットに捧げたパーソナルで美しい名曲“More Love”がヒットしたほか、リトル・アンソニー&ザ・インペリアルズのカヴァーや、3年後に大ヒットとなる“The Tears Of A Clown”もここに収録。

 

SMOKEY ROBINSON 『Smokey』 Tamla(1973)

引退を経てのソロ・デビュー作。ウィリー・ハッチのアレンジがパーカッシヴな70年代モードを加え、ボッサ風の“The Family Song”、社会派の“Just My Soul Responding”など可能性を試すような曲が並ぶ。同僚マーヴィンよりはアイザック・ヘイズあたりを意識した雰囲気も。

 

SMOKEY ROBINSON 『A Quiet Storm』 Tamla(1975)

穏やかなムードの表題曲に代表されるマチュアな作法を深めた快作。ダイアナ・ロスの映画用のミシェル・ルグラン曲に詞をつけた“Happy”、ベリーの娘ヘイゼルの結婚を祝う曲も品格が際立つ。軽やかでダンサブルな“Baby That’s Backatcha”がR&Bチャート1位を記録。

 

SMOKEY ROBINSON 『Where There’s Smoke...』 Tamla(1979)

洒脱に躍動するオープニングの“It’s A Good Night”やセルフ・カヴァー“Get Ready”などでディスコ時代にもマイルドに対応したアーベインな佳作。スティーヴィー・ワンダーと共同制作した“I Love The Nearness Of You”のエレガンスと“Cruisin’”の穏和さが美味だ。

 

SMOKEY ROBINSON 『Being With You』 Tamla(1981)

素朴な歌い口の表題曲がヒットした、80年代の彼を代表する名盤。トロピカルなレゲエの“Food For The Thought”、同時期のジャクソンズ風なアップ“Can’t Fight Love”も快活だ。アダルトな美メロの“You Are Forever”、唯一のセルフ・プロデュース曲“As You Do”も光る。

 

SMOKEY ROBINSON 『One Heartbeat』 Motown(1987)

離婚やドラッグ中毒の克服を経てヘルシーにリフレッシュした、80年代らしい西海岸マナーの快作。自作ではない“Just To See Her”と“One Heartbeat”が全米TOP10入りを果たす一方、ミラクルズ曲へのセルフ返歌“It’s Time To Stop Shoppin’ Around”も意味深だ。

 

SMOKEY ROBINSON 『Love, Smokey』 Motown(1990)

ポール・ローレンスやリオン・シルヴァーズ3世ら新世代の気鋭クリエイターを登用して都会のサウンド模様に対応し、ニュー・ジャック気分で踊ったり、マーヴと久々に“Easy”を共作したりもする意欲作。本作を最後に、ベリー退任によって様変わりしたモータウンを去ることに。

 

SMOKEY ROBINSON 『Intimate』 Motown(1999)

古巣への復帰作。総監督のベリー・ゴーディが制作に直接タッチする一方、スモーキーはマイケル・ストークスと組んで半数を自作する。デヴィッド・フォスター制作の“Love Love Again”もベリーによる“Just Let Me Love You”もどこかベイビーフェイス風なのがおもしろい。

 

SMOKEY ROBINSON 『Timeless Love』 New Door(2006)

テンプスと同じ新興レーベルに移ってビッグバンドを従えたジャズ・ヴォーカル作品。ガーシュインやポーターらのスタンダードに加え、91年作でオーケストラと歌った自作の“I Love Your Face”も改めて披露する。名うての演奏陣と並んでマーヴ・タープリンがいるのもポイント。

 

SMOKEY ROBINSON 『Time Flies When You’re Having Funs』 Robso(2009)

枯れや老いをヴィンテージな趣に変えた新たなクワイエット・ストーム好盤で、22年ぶりにR&BチャートTOP10入り。ノラ・ジョーンズのカヴァー“Don’t Know Why”、ジョス・ストーンやインディア・アリーとの共演もいい。マイケルに捧げた“I Want You Back”をボーナス収録。

 

SMOKEY ROBINSON 『Smokey & Friends』 Verve(2014)

エルトン・ジョンやスティーヴン・タイラー、ジョン・レジェンド、シー・ロー、メアリーJ・ブライジ、レディシら幅広い後進を迎えて自身の名曲を再演したコラボ企画盤。ランディ・ジャクソンが仕切った破綻のない音も、歌と曲そのものを素直に聴かせる。R&Bチャート2位を記録!

OTHERDISCOGRAPHIC
THE MIRACLES
Cookin’ With The Miracles(1961)
I’ll Try Something New(1962)
Doin’ Mickey’s Monkey(1963)
Christmas With The Miracles(1963)
I Like It Like That(1964)

SMOKEY ROBINSON & THE MIRACLES
Away We A Go-Go(1966)
Special Occasion(1968)
Time Out For Smokey Robinson & The Miracles(1969)
Four In Blue(1969)
What Love Has...Joined Together(1970)
A Pocket Full Of Miracles(1970)
The Season For Miracles(1970)
One Dozen Roses(1971)
Flying High Together(1972)

SMOKEY ROBINSON
Pure Smokey(1974)
Smokey’s Family Robinson(1976)
Deep In My Soul(1977)
Big Time(1977)
Smokin’(1978)
Love Breeze(1978)
Smokin’(1978)
Warm Thoughts(1980)
Yes It’s You Lady(1981)
Touch The Sky(1983)
Essar(1984)
Smoke Signals(1986)
Double Good Everything(1991)
Food For The Spirit(2004)
Now And Then(2010)
Christmas Everyday(2017)
...and more!

 

PEOPLE TREE
耳で聴いたピープル・トゥリー
ディスクガイド/出嶌孝次

THE TEMPTATIONS 『Temptations 60』 Universal(2022)

初ヒット“The Way You Do The Things You Do”(64年)を授かって以来、スモーキーとはチームの仲間にして好敵手でもあったテンプス。往時のメンバーはオーティス・ウイリアムスのみだが、以降も節目の『Reunion』(82年)でのコラボを経て、この60周年盤では“Is It Going To Be Yes Or No”をスモーキーが久々にプロデュースしている。

 

ARETHA FRANKLIN 『Jump To It』 Arista(1982)

デトロイトに引っ越してきた幼いアレサがスモーキーと近所馴染みがあったと思えば、デビューした彼女が“My Guy”や“Tracks Of My Tears”を取り上げていたことも特別に思える。以降も友情を温めた両者は「ソウル・トレイン」共演などを経て、本作には念願のスモーキー書き下ろしの“Just My Daydream”が収められた。

 

JACKIE WILSON 『Lonely Teardrops』 Brunswick(1959)

ビリー・ウォード&ヒズ・ドミノスらに憧れて活動を始めたスモーキーにとって、同グループにいたジャッキーは偉大な目標だった。初期のエキサティングなパフォーマンスぶりからも影響は明らかだ。ただ、何より重要なのは彼の曲を書いていたベリー・ゴーディJrがブランズウィックのオーディションに居合わせたことだった。

 

RAPHAEL SAADIQ 『The Way I See It』 Columbia(2008)

初期のメイヤー・ホーソンもそうだったが、レトロ・ヴィンテージ系の意匠が流行りはじめた頃にいち早く最高の成功例を見せたのがこのソウルの申し子だった。ポール・ライザーの起用も含め、爽やかなハイ・テナーの歌唱からはスモーキーの姿が見え隠れする。

 

NE-YO 『Because Of You』 Def Jam(2007)

本作中の“Leaving Tonight”でスモーキーの“Baby Come Close”をサンプリングしていたニーヨは、後にモータウンのA&R部門の副社長を引き受ける際、〈キャリアの手本〉としてスモーキーの名を挙げていた。シンガー/ソングライターとしてのスタンスも通じるところか。

 

THE MARVELETTES 『Sophisticated Soul』 Motown(1968)

プロデューサーとしてのスモーキーを考える時、忘れちゃいけないのが活動後期によく手合わせして“Don’t Mess With Bill”や“My Baby Must Be A Magician”を生んだマーヴェレッツとの仕事だ。この時期リード歌手のワンダ・ヤングはミラクルズのボビー・ロジャースと結婚していた。

 

PIZZICATO FIVE 『Bellissima!』 ソニー(1988)

ピチカート流のソウル・ミュージックを突き詰めた本作には〈アルベルト・モラヴィアとスモーキー・ロビンソンに捧ぐ〉とある。ここで歌唱を担う田島貴男は後にOriginal Loveで“You’ve Really Got A Hold On Me”を“きみのとりこ”として日本語カヴァーしていた。

 

RCサクセション 『BEAT POPS』 ユニバーサル(1982)

ソウル・ミュージックに造詣の深い忌野清志郎だけに不思議ではないが、彼と仲井戸麗市が共作した本作収録の“ハイウェイのお月様”はミラクルズ~スモーキーを思わせるロマンティックな逸曲に。そういやこの後『the TEARS OF a CLOWN』なるライヴ盤も出していた。

 

ANDERSON .PAAK 『Ventura』 Aftermath/12 Tone(2019)

本作中の“Make It Better”でスモーキーを認識した人も多いはずだが、ノーウォーリーズ“Sidepiece”の時点でパークはあの声と共演していた。となると、シルク・ソニック“After Last Night”の主題は“The Hunter Gets Captured By The Game”に通じる気がしなくもない。

 

THE BEATLES 『With The Beatles』 Parlophone(1963)

“You’ve Really Got A Hold On Me”でリードを取ったジョンもジョージも自作でスモーキーへの敬意を表現したが、ミラクルズが歌ったのは“Hey Jude”などポール曲が多かった。スモーキーはポールのトリビュート盤でハマり過ぎの“So Bad”を披露。なお、この20年ほどポールを支えるギタリストのブライアン・レイはスモーキーの“One Heartbeat”を手掛けた人でもある。

 

STEVIE WONDER 『I Was Made To Love Her』 Motown(1967)

もともとミラクルズのロニー・ホワイトに見い出されてモータウンのオーディションを受けたというスティーヴィー。初対面のスモーキーにも小生意気な口を利いていた彼もやがてモータウン四天王の一角として肩を並べる。スモーキーのソロ作には何度も駆けつけて楽曲提供や演奏を行なっているが、最大の成果はやはり“The Tears Of A Clown”の共作か。