タワーレコード限定のコンピレーションアルバム『Midnight Love IV – SMOOTH R&B ESSENTIALS』が本日9月21日にリリースされた。好評を博しているシリーズの第4弾である本作も、大人の夜に似合う極上のスムースR&Bを選び抜いた逸品。ブラックコンテンポラリーと呼ばれた80年代以降の都会的で洗練されたソウルやクワイエット・ストームが、CD 2枚にわたってセレクトされている。さらに、ユニバーサル ミュージックの復刻企画〈Throwback Soul ソウル/ファンク定番・裏名盤・入手困難盤 打ち込み導入~NJS前夜編〉との連動も。今回はそんな『Midnight Love IV』について、元「bmr」編集長で〈シティ・ソウル〉シリーズの監修者である小渕晃が解説してくれた。 *Mikiki編集部

VARIOUS ARTISTS 『Midnight Love IV – SMOOTH R&B ESSENTIALS(タワーレコード限定)』 ユニバーサル(2022)

 

アダルトでロマンティック、セクシーでスムーズ&メロウなR&Bにどっぷりひたれる

『Midnight Love』は、マーヴィン・ゲイが82年にリリースしたアルバムのタイトル。大ヒットした“Sexual Healing”を始め、ここで聴けるローランドTR-808なるドラムマシンを用いたサウンドは大ブームを巻き起こし、80s R&Bのスタイルを決定づけます。『What’s Going On』(71年)で70sニューソウルの、『Midnight Love』で80s R&Bの型を決定づけたマーヴィン・ゲイとはどれだけ偉大なのか、と驚きますが。マーヴィン・ゲイ『Midnight Love』の遺伝子を継ぐスムーズ&メロウなR&Bソングを集めたこのコンピシリーズも、早くも第4弾の登場です。

マーヴィン・ゲイの82年作『Midnight Love』収録曲“Sexual Healing”

2021年11月にCD 3枚組の大ボリュームで出た『Midnight Love III』は、メンバーのソロも交えたニュー・エディション組の数曲が特に目立ち、90年代の息吹も感じさせる選曲でした。対してこの『Midnight Love IV』は、あらためて80s R&Bにどっぷりとひたれる選曲。この時代ならではのアダルトでロマンティック、セクシーなスムーズ&メロウ曲は、他の時代のソウル/R&Bにはない味わいに溢れています。

 

〈洗練〉の代名詞である時代から旬な選曲

とはいえ、音楽シーン全体が洗練に向かったこの10年、〈洗練〉の代名詞であるような80s R&Bは近年また旬でもあります。ブルーノ・マーズ&アンダーソン・パークのシルク・ソニックがカバーしたことで人気再燃中のコン・ファンク・シャン“Love’s Train”(82年)を筆頭に、今あらためて楽しめる曲ばかり。

『Midnight Love IV – SMOOTH R&B ESSENTIALS』収録曲コン・ファンク・シャン“Love’s Train”

シルク・ソニックの2022年のシングル“Love’s Train”。コン・ファンク・シャンのカバー

〈クワイエット・ストーム〉の生みの親でもあるソウルの達人、スモーキー・ロビンソンの“Sleepless Nights”(86年)も実に旬な選曲だといえます。というのもこの曲はもともと、アヴェレイジ・ホワイト・バンドのボーカリスト&ベーシスト、アラン・ゴリーのソロ曲で、こちらも今世界中で人気が再燃しているAORの名曲として知られているもの。スモーキー・ロビンソンのカバーバージョンはR&Bファン、AORファンどちらにもアピールするもので、ある種の80s R&BとAORは表裏一体の関係にあることを教えてくれます。80s R&BとAORのリバイバルがいつも同時に起こるのは必然なのです。

『Midnight Love IV – SMOOTH R&B ESSENTIALS』収録曲スモーキー・ロビンソンの“Sleepless Nights”

アラン・ゴリーの85年作『Sleepless Nights』収録曲“Sleepless Nights”