見せてあげよう、煌めく世界――儚く美しい珠玉の旋律を備えたディズニーの名曲群と童話的な音の魔法を紡ぐSerphが出会うとき、新たなファンタジーが始まる……

現実を忘れられるような選曲

 1923年にアニメーション・スタジオを設立して以来、子供から大人までが楽しめる不朽の名作を現在に至るまで生み出し続け、世界中から愛されているディズニー。それらの作品やテーマパークのために作られた音楽もまた、ジャンルの枠を超えたポップ・ミュージックとして、ディズニーのファンに限らず幅広い人々の耳を楽しませている。その普遍性ゆえか、ディズニー音楽はさまざまなアーティストにカヴァーされる機会が多く、実際に〈ロック〉〈ジャズ〉〈パンク〉〈ハワイアン〉〈オーケストラ〉〈ハウス〉〈ヒップホップ〉〈スカ〉といった、公式の企画によるカヴァー集も多数展開されているわけだが、今回の組み合わせには思わず唸らされてしまった。サンプリングや電子音を緻密に組み合わせたドリーミーな作風で人気を集める音楽家、Serphがアルバム一枚ぶん丸ごとディズニー楽曲のカヴァーに取り組んだのだ。そのタイトルは『Disney Glitter Melodies』。ディズニー世界を彩る珠玉のメロディーとSerphサウンドの煌めきが掛け合わさった、まるで魔法のようなアルバムだ。

Serph 『Disney Glitter Melodies』 Walt Disney(2020)

 ディズニー作品の〈ファンタジー世界〉という部分に共感を覚え、映画としては「トゥモローランド」(2015年)や「ズートピア」(2016年)といった作品がお気に入りと語るSerph。今回は制作を行うにあたり、まず歴代のディズニー楽曲を一通りチェックし、メロディーの美しさを基準にカヴァーする楽曲をセレクトしたとのことで、ペリー&キングスレイによる電子音楽の古典である“Baroque Hoedown”を用いたテーマパーク曲“Main Street Electrical Parade”、スタンダード曲として広く親しまれている“When You Wish Upon A Star”(「ピノキオ」)など、誰もが耳にしたことのある定番もしっかりと押さえつつ、隠れた名曲を含めて幅広い時代のナンバーを取り上げている。

 「ディズニーの音楽は、ロマンティックだったりリリカルさがあるけど湿っぽくないというか、あまり切なさを押し出さないような楽曲が多い印象なので、今回はそのメロディーの良さを活かしつつ、Serphならではの切なさや刹那感をトラックで融合させました。夢見心地になれるような、現実を忘れられるような選曲を心掛けましたね」。