Mikikiをご覧の皆様こんにちは! アニョハセヨ~! 如何お過ごしでしょうか? 前回2回目から早半年。そして今年もあと3ヶ月となりました。私事で恐縮ですがこの半年間、〈時間〉について改めて考えてばかりおりました。その間に人様の曲を作ったり、靴を磨いたり、韓国語の勉強を始めたり。気づくと、改めてこれからも続く日々に対する準備期間のような一年になっていましたが、〈物は考えよう〉とはよく言ったもので、今年は急に襟首をグイと掴まれ一度自分の生活全てにおいて考え改め直してみるといいんじゃないか?とCOVID-19に長い休憩をもらったと思うことにして、まぁそれでも現実は引き続き仄暗さが漂っておりますが、今これを読んで下さっている皆様が健康で、笑顔であれることを心から祈っています。本当に。
さて、今回は映像ディレクターとして活躍なさっている代田栄介氏からのご相談。〈一人称についての使い方を迷ってしまう〉というものです。話をしていくうち四方八方に話題は飛びましたが、話をしながら気付く事って相変わらず多いなぁと思う回になりました。皆様のお茶のお供になれば幸いです。
他人の間違った敬語から気になりはじめた自分の一人称
見汐麻衣「代田くんは映像ディレクターとして仕事をされていますよね。テレビCMとか」
代田栄介「CMのナレーションを見汐さんにお願いしたこともありました」
見汐「シャムキャッツ“逃亡前夜”、王舟“Muzhhik”、KIRINJIのミュージック・ビデオも作っていますよね」
代田「KIRINJIは“時間がない”と“AIの逃避行”のMVを作りました。最近だとトクマルシューゴさんの“Sakiyo No Furiko”も担当しています」
見汐「で、今回は一人称についてのお悩みということなんですけれど」
代田「一人称については、仕事でもプライベートでも悩みます。目上の人に対しては〈僕〉って言うんですけど、仲の良い友だちに対しては自然と〈俺〉って言っちゃう瞬間があって、最近すごくブレブレなんです。
今回、一人称について考えることになったきっかけは、ビジネスの場で敬語をちゃんと使えていない人に出会ったからでした。たとえば、その人は〈この資料を拝見していただけますか?〉なんて言うんです。なので、〈敬語の使い方に気をつけたほうがいいですよ、言葉づかいでクライアントの信用を失ったらもったいないですよ〉と、その人に丁寧に伝えました」
見汐「優しいね~! 私だったら言わないな。相手に〈ちっ、うっせーな〉って思われて面倒なことになるほうが嫌だから(笑)」
代田「〈今後も一緒に仕事を続けていきたいからこそ言わせていただくのですが〉と前置きして伝えたのですが、芳しくないリアクションで……。届かなかったようです。それが、いまだに引っかかっています」
見汐「一度気になるとね、ストレスになっちゃうよね」
代田「敬語の問題をあえて相手に伝えたのは、お互いに味方どうしだからなんです。たとえば、クライアントや広告代理店とのディスカッションでは、僕たち制作側の企画に対して否定的なことを言われることもある。いまはリモートで仕事をすることが多いですから、何かを説明するときに言葉しかない場合も多くて、言葉で正しく伝えられないとキツいんです。だから、否定されるポイントは少ないほうがいい。相手にちゃんと伝えるために言葉を大事にしてほしいと思っているんですけど、それがなかなか伝わらなくて……」
僕、俺、小生、当方……一人称のバリエーション
見汐「代田くんの生まれはどこなんですか?」
代田「東京の江古田です」
見汐「そうなんだ。東京の人ってさ、〈俺〉か〈僕〉だよね。ちょっと気取った人だと〈小生〉とか」
代田「〈小生〉は誰も言わないですよ(笑)。たまに文化人っぽい人が〈当方〉って言うことはありますよね」
見汐「なぎら健壱の〈あたしゃぁね〉って話し方、良いですよね。粋ですよね。矢沢永吉の〈YAZAWA〉は……あれはもはや三人称かな。
話を戻すと、地方出身の人には〈方言での一人称〉っていうのがあるんです。たとえば九州では、男の人は〈おい〉って言う。岡山や広島だと〈わし〉。女の人は〈うち〉か、自分の名前。私の田舎に限ると、男の人が〈僕〉なんて言っていたら、〈お前、なん言いよぉと? 東京もん気取りやがって〉って一昔前なら言われたからね。
一人称で印象的だったのは、元ミドリの後藤まりこちゃん。まりちゃんが〈僕な〉って言うのを初めて聞いたときはびっくりして」
代田「〈僕っ娘〉って呼ばれるジャンルですね」
見汐「そうなんだ。私、そういうのまったく知らなくてさ。〈僕〉という一人称は男の人しか使わないもの、っていう固定観念があったのね。私の周りではまりちゃんが初めてで新鮮だった」