自分らしさを体現した『オリオンブルー』に続く最初の瞬きは、新たな一面を見せる両A面のニュー・シングル。揺るぎない歌声は苦しみの先に灯る光のように……

流されないように生きる

 世の中が普段通りではなくなり、アーティストも普段通りに活動できなくなった最中でリリースされた、Uruのセカンド・アルバム『オリオンブルー』。そしてその当日、3月18日に自身のYouTubeチャンネルで彼女はアルバム収録曲“あなたがいることで”のスタジオ・ライブを公開した。

 「ドラマの主題歌として書かせていただいた曲ではあったのですが、私の元に届いた、曲を聴いてくださった方々の反応のなかに、いままでのように会いたいときに会うことが難しい状況のなかでこの曲を聴いた、という感想もたくさんあって。その声を聞いてこのスタジオ・ライブが〈同じ曲を共有できる時間〉になってもらえたらとても嬉しいなと思って歌っていました」。

 さらに、3月30日には初めてTV出演し、“あなたがいることで”と“プロローグ”を披露。

 「ずっとそういった場からは逃げ続けていたのですが、感染拡大防止のためにいままで予定していたライブが延期になったり中止になったりしてしまって。楽しみにしてくださっていた皆さんが残念な気持ちになっていたり、自分のライブだけでなく、日常生活すべてにおいて何かしらの息苦しさがある状況で、こんな時こそ、いつも応援してくださっている皆さんが喜んでくれるような何かを……と思う気持ちもありました。放送後のSNSの反応や、私の元へ届く声の多さにとても驚きましたし、何より、皆さんに喜んでいただけて本当に嬉しかったです」。

 そこで初めてUruの歌声に触れた人も多かっただろう。そして、改めてその歌声の温かさや優しさを噛みしめた人もいただろう。“あなたがいることで”と『オリオンブルー』はオリコンのデジタルランキングで1位を獲得。CDもリリースから約2か月後に最高位(4位)まで昇り、いまなおチャートインを続けている……というなかで、新曲が届けられた。両A面となるシングル『Break/振り子』。“Break”は、TVアニメ「半妖の夜叉姫」のエンディング・テーマとしてすでにオンエアされている楽曲で、時空を行き来する本編のストーリーを映すように不穏なイントロで幕を開け、〈戦い〉をイメージさせる勇壮なサビに向かって徐々に昂揚、生々しいヴォーカルと切ないメロディーに胸をギュッと締め付けられるナンバーだ。バレアリックなダンス・ビートを軸にしたサウンドは、これまでのシングル表題曲では見せることのなかった一面でもある。

Uru 『振り子/Break』 ソニー(2020)

「歌詞に関しては、アニメの物語に寄り添うことを中心に、ちょうどこの歌詞を考えているとき、SNSに関する悲しいニュースを見たタイミングでもあったので、そういったものが合わさって出来ていきました。SNSも、異空間を行ったり来たりするような感覚になるけれど、きちんと自分という存在、相手という存在があるんだということや、Dメロの歌詞にも書きましたが、〈誰かを傷つけるための強さ〉なら要らないなと思いました。アニメの世界で言う〈何度も歪む時空のなか〉で、現在で言う〈たくさんの人が集う異空間のなか〉で、自分をしっかりと持って流されないように生きていかなければいけない、そう思いながら書き進めていきました。サウンドのアレンジに関しては、時代を行ったり来たりする出入り口のようなイメージで曲の出だしを書いたのと、サビまでの部分はあまりコード感のない〈温度の低い〉印象にしたかったので、そのあたりを(編曲担当の)Yaffleさんにお伝えして。サビは逆に、いままで抑えていたものを解放するイメージで、コード感のある聴きやすさも出したかったのでそんな構成になっていますが、とてもオシャレにしていただいて、特にアウトロの解放感がとても好きです」。