ロング・ヒットを記録している『オリオンブルー』からまもなく1年——この状況下でもより遠くへ浸透を続ける神秘的な歌声。2021年最初のシングルは誰の心を動かす?

愛を感じ取った瞬間

 人と人とのふれあい、生身のコミュニケーションに尊さを感じずにはいられなかったこの一年あまり。さまざまな世界のなかで思うようにことが進まない、エンターテイメントの世界もまた然りで、そんななかにあってUruの歌、歌声は、それまでにも増して多くの人たちの耳に飛び込んでいった。昨年10月のシングル『Break/振り子』に続き、翌月にはLiSA×Uru名義の“再会(produced by Ayase)”というコラボ曲を配信リリース。年末の〈第62回 輝く! 日本レコード大賞〉では特別賞を受賞……。

 「レコード大賞に出演させていただいたときは、昔からTVで観てきた舞台に自分が立っているということがとても感慨深く、支えてきてくださった皆さんやスタッフさんへの感謝の想いが一気に沸き上がって来て、リハーサルのときに目頭が熱くなってしまったのですが、〈いや、いやいや、待て待て早いぞ〉と心の中で唱えて抑えました。LiSAさんとのコラボレーションとCM出演も、初めて経験させていただいたことが多くて、自分の中の視野がまた広く持てる契機をいただいたような感覚でした。思うようにライヴができなかったり、予定していたことが中止や延期になってしまっていた状況でしたが、応援していただいたからこそある今の自分の姿を、皆さんに届けることができて本当によかったなと思いました」。

Uru 『ファーストラヴ』 ソニー(2021)

 そうして迎えた2021年、最初のリリースとなるシングル“ファーストラヴ”が到着。表題曲は、公開中の映画「ファーストラヴ」(原作:島本理生、監督:堤幸彦、主演:北川景子)の主題歌となっているバラードだ。

 「ずっと閉じ込めてきたこと、蓋をしてきたことに向き合うきっかけをくれた出会い、というのがまず根本にあって、それでもなお、その気持ちに素直になれず、心の内を思うように吐き出すことができない人物が、出会ったその人と過ごす日々によって次第に心を柔和させていきながら、初めて〈愛〉というものを自分なりに感じ取った瞬間を書いたつもりです。心を塞ぐ瞬間というのは、誰しも経験があるのではないかと思いますが、出会いというのは本当に宝であって、それを無碍にしないようにしたいなと私個人も思いました」。

 

心情の変化を映す音

 カップリングの“無機質”、こちらも映画「ファーストラヴ」の挿入歌としてフィーチャーされているバラード・ナンバー。

 「“ファーストラヴ”と一対になるような、同じ属性を持つ曲でもあります。背景は同じですが、もう少し、タイトルの通り、一周回って何も感じなくなった、感じようとしなくなった人物が、〈君〉の存在によって少しずつ温度を取り戻していくような曲になっています。“ファーストラヴ”よりももう少し狭い画で切り取った、心のつぶやきのような曲になっています。私が聴いてほしいなと思ったところは、歌詞のいちばん初めの一文です。〈道に迷ったと思ってたけど 僕はまだ進んですらいなかったみたいだ〉──これは私自身の経験でもあります」。

 いずれもUru自身の作詞/作曲で、編曲はトオミヨウ。トオミといえば、ファースト・シングル“星の中の君”のほか、Uruの名前を広く知らしめるきっかけになった“プロローグ”などでもタッグを組んでいる、言わば勝手知ったるパートナーでもある。

 「トオミさんは、楽曲が持つそのままの雰囲気をとても大切にしてくださって、今回も“無機質”は特に、(イントロの)ピアノのディレイもそのまま活かしてくださったり、私が皆さんに伝えたかったイメージをそのまま残していただけたことが嬉しかったです。Dメロで、夜が明けていく様子が伝わるような歌詞になっているのですが、アレンジをお願いする際、〈君と見た夜明けを初めて美しいと思えた〉というような心情の変化を表現したいという難題に、とても素晴らしいアレンジで応えてくださり、感激しました」。

 この2曲の歌詞のなかで、ひとつ相通じる部分を発見することができる。それが、〈その腕の中聴こえてきた音は〉〈君と新しい音を聴いたよ〉というそれぞれのサビで登場する〈音〉という表現。幸せや感動、それを日常の中の音からキャッチする感覚は、Uruらしさのひとつではなかろうか。

 「本当ですね(笑)! たぶんこれは私の私的な感情が入っているかもしれないです。私は気分転換によく散歩をするのですが、住宅街の生活音や街の喧騒などは、その時の自分の気持ちの状態によって聴こえ方が違っていたりして、騒がしいなと思うときもあれば、その雑踏が心地良かったり、同じ音のはずなのにそのときによって感じ方が違うんですよね。きっと、自分の中で何かが変わったとき、その人は新しい音や景色を初めて感じたような感覚になったりするんだろうなと想像したんだと思います」。

 

堂々とありたい

 さらなるカップリングには恒例のカヴァー/セルフ・カヴァーを収録。今回取り上げているのは、昨年秋からストリーミング・チャートを賑わせている優里“ドライフラワー”。前作で取り上げた“別の人の彼女になったよ”に続き、男性アーティストの楽曲である。

 「もともとはスタッフさんに〈この曲すごく素敵だよ〉と教えていただいた曲なのですが、私も一度聴いてみて、優里さんの歌に一気に惹かれて、そのあと何度も聴きました。“ドライフラワー”は、お互いがもしかしたらまだ相手を想っているのでは……と、聴き手である第三者の私が歯がゆくなるような、もどかしくなるような感情で聴いてしまうのですが、そこに共感を呼ぶ、切なさや儚さを持った曲だなあと思いました。最後にやっと〈枯れない花をずっと抱えてよ〉と素直になれるあたりが、Myキュンポイントです(笑)」。

 一方のセルフ・カヴァーは、前作のシングル表題曲“Break”。ダンス・ビートを絡めたアップテンポのナンバーを、ピアノ主体のスロウなアレンジに変換している。

 「“Break”は、デモの時点からアップ・ナンバーとして作っていたので、これをバラードにするというのはけっこう勇気が要ったのですが、思いのほか上手く収まってくれたのではないかなと思っています。ピアノの伴奏アレンジは、いつもお世話になっているHidenoriさんが土台を作ってくれて、私はそこに歌を乗せたのですが、歌詞自体がバラードにも合う歌詞だったので、歌入れの際の気持ちの入れ方は苦労せずスッと入れました」。

 丹精込めて作り上げた楽曲に、丁寧に、心をこめて歌声を紡いでゆく──。新曲のリリース自体が〈ニュースなもの〉になるぐらい、Uruへの注目度は大きく変わっても、そのスタンスはデビューの頃から何も変わらない。今年も彼女の歌声でたくさんの人が心動かされ、気持ちを浄められていくだろう。

 「その年の目標を年初めに漢字一文字で書き初めするということを去年からやっていて、2020年は〈動〉と〈楽〉だったのですが、TVに初めて出演させていただいたり、コラボレーションや初めての配信ライヴなど、書き初めした字の通り〈動き〉のある年にできたかなと思っています。そして今年の漢字は、〈堂〉と〈勉〉にしました。TV出演をした際、嫌でも俯瞰で自分を見なければいけず(笑)、糸のような目で見てましたが、自分という人間や、歌を歌っている自分に対してもっと堂々とありたいなと、ふと思ったのがこの字を選んだ理由です。あとは音楽もプライヴェートも、日々いろんなことにアンテナを立てて勉めていきたいなと素直に思っています。応援してくださっている皆さんからの声が届くたび、次の励みになっているということに感謝して、その気持ちを音楽でお返ししていけるように、今年もがんばります」。

 

Uruの作品。
左から、2017年のアルバム『モノクローム』、2018年のシングル“remember”“プロローグ”、2019年のシングル“願い”、2020年のアルバム『オリオンブルー』、同年のシングル『Break/振り子』(すべてソニー)