2024年最初のシングルは、ドラマティックなバラードのイメージを大きく塗り替える爽快なアップ・ナンバー! しなやかに躍動する歌声が物語の世界を鮮やかに彩る!

考える時間もできた

 新曲が届けられるのがいつも待ち遠しく、わくわくと胸躍らせている……というようなくすぐったいことは言わないけど、実際に耳にしてみると、それはもう待っていたかのように身体の繊細な部分に瞬時に染み込んでくる。結果的にはいつも〈待ちわびていた〉ということなんだろうけど、ある時期からそんな感覚をいつも、彼女の歌に抱いている。

 2023年の初めにサード・アルバム『コントラスト』をリリースし、春には“紙一重”“心得”という2曲の新曲を矢継ぎ早に配信。それらの前後には〈again〉〈contrast〉と銘打った自身最大規模のライヴ・ツアーがあり、それまでになくエネルギッシュに季節を越えてきたUru。ツアーが終わったあとは、ほんの少しだけゆっくりと時間が流れていたという。

 「余裕をもって過ごさせていただいたので、ツアーを振り返りながら〈次はこうやりたいな〉とか、そうやって考える時間もできました。それから、Hey! Say! JUMPさんの曲(アルバム『PULL UP!』収録の“あの日の夢を見させてよ”)を書かせていただいたりとか、 ライヴがなかったぶん、表向きは穏やかそうに見えたと思うんですけど、制作に時間を費やすことが多かったですね。他のアーティストさんへの楽曲提供は初めてではないですけど、歌う方のイメージを思い浮かべながら歌詞を書く作業というのは、その都度初めての経験なので、難しいなと思いつつも、楽しくやっていました」。

Uru 『アンビバレント』 ソニー(2024)

 そんな彼女の、2024年最初のリリースが、シングル“アンビバレント”。表題曲の前に、まずは昨年秋に先行配信されていたカップリング曲“君の幸せを”の話を訊いてみた。詞も曲も自身による切ないラヴソングとなった“君の幸せを”は、彼女のシングル曲としては珍しく、TVドラマやアニメの主題歌など映像作品に紐付いたものではない。それゆえに詞や曲の作り方もいつもより自由だったのだろう。

 「いつも曲調でどういう歌詞にするかを決めるんですけど、“君の幸せを”も先に曲ができて、歌詞を入れるなら、こういう感じかなって。曲については、奥ゆかしさとでもいうか、そういう風合いのバラードが作りたかったんです。いままで作ってきたバラード、とくにシングル曲ではサビがわぁーっとなるのが私の曲の特徴だと思うんですけど、それと比べると“君の幸せを”は、あまり抑揚がないと思うんです。曲調にはちょっと昔のR&Bっぽい感じを入れたくてそういう感じにしたりとか、歌詞も、こういうふうに書きたいというのを、そうですね、自由でしたね」。