ドラマティックなヒットの数々を経て、およそ3年ぶりのニュー・アルバムがついに到着! より鮮明な自分自身の色使いによって感情豊かな歌声が描く、いまのUruの表現とは?

自由に形にできた

 歌声、言葉、音を丁寧に紡ぎ上げるという、至ってシンプル、しかし誠実さなくしては成し得ない作業から引力を生み出し、歌を通じてリスナーとの絆を深めてきたシンガー・Uru。昨年夏から秋にかけて行われた全国ツアー〈again〉では、その深度がさらに増していることを実感させる圧巻のステージを披露。初めての場所となった愛媛公演では、ラスト・ナンバーを歌い終えた後に会場ではスタンディングオベーションが起こったそうで、お客さんにとっても本人にとっても、大いに充実したツアーだったようだ。

Uru 『コントラスト』 ソニー(2023)

 そんな素敵なエピソード諸々を経て、このたび完成したのがサード・アルバムとなる『コントラスト』。2020年3月のリリースだった前作『オリオンブルー』から約3年ぶりのアルバムということで、いわゆるコロナ禍の期間における記録という見方もできるわけだが、その間にもUruは大きくペースを崩すことなく、2020年10月の『Break/振り子』から昨年6月の“それを愛と呼ぶなら”まで4枚のCDシングルを重ね、さらに昨年11月には優里の提供した“そばにいるよ”をデジタル・リリース。いずれもTVドラマや映画、アニメの主題歌などに起用されて話題となった楽曲だ。この期間の活動について彼女はこのように振り返る。

 「コロナ禍で外出自粛や人に会うことを制限された生活のなかでは新しいインプットが少なく、曲や歌詞を作るうえで時間がかかることが多かったように思います。改めて、日常生活や何気ない人との関わりが、創作活動を続けていくなかではとても重要なことなんだなと痛感しました。ただ、外出自粛のおかげで身の回りを整頓する時間ができたので、そう言った意味では制作の効率も上がってよかったのかもしれません(笑)」。

 それらの先行曲も含めて編まれたアルバムを一聴して感じるのは、いままで以上にいろんな表情や体温が言葉やサウンドから伝わってくるな、というもの。それが『コントラスト』という表題にも繋がっているのだろうが、新曲を作るうえで何か統一されたテーマのようなものはあったのだろうか。

 「自分で作ったアルバムの新曲や、アルバム全体を通したテーマはほとんどなかったです。それをあえてテーマにするならば〈自由〉でしょうか(笑)。自由に作りたい曲、書きたい歌詞を形にできたと思っています」。

 Uru本人が詞曲を書いた3曲を含め、アルバムには5つの新曲が収録されることになった。まず、アルバムのリリース前週に先行配信された“恋”は、“別の人の彼女になったよ”のカヴァーをきっかけに縁ができたwacciの橋口洋平が詞曲を手掛けるハートフルなバラードだ。

 「ある日スタッフさんからお話をいただいて、橋口さんのデモを聴かせていただきました。なんて良い曲なんだろう……と思ったのが第一印象で、後からくる切なさより前向きさが勝る不思議な感情になりました。“恋”の終わりは悲しいし切ないし、そういう感情を曲にしがちですが、この元彼女の気持ちはとても前向きで。でも節々にちゃんと切なさも感じられて。涙で浄化する失恋ソングもいいですが、こんな前向きな失恋ソングもすごく素敵だなと思いました。〈愛されてるか不安で試すように突き放してた〉という歌詞は、これって私じゃ……となりました(笑)」。

 続いての“ランドマーク”はUruの自作で、彼女がお得意とする(!)ノスタルジー路線の歌詞世界が瑞々しい一曲。〈青春〉というフレーズがまた、胸をキュッとさせる。

 「なぜだか理由はわからないのですが、歌を歌うようになってからよく昔のことを思い出すようになって。たぶん、曲を書いたりするうちに無意識に記憶の引き出しを開けているのでしょうね。大人になったな……と感じることってその折々でたくさんあると思うけど、環境は変わっても実際あまり中身は変わっていなくて。自分だけじゃなく昔からの仲間も同じだとしたらどんなに心強いことか、と思いながら作っていきました」。

達成感みたいなもの

 一方、熱っぽいビートに乗せて〈泣くな頑張れ 私〉と自分自身を奮い立たせる“ポジティ部入部”は、いままであまり見たことのないUruの一面。自己啓発ソング!

 「もともとすごくネガティヴな思考回路の持ち主なので、気を抜いていると陰の沼にハマりそうになるんです(笑)。でも、歌を歌っている以上、そのような曲ばかり歌っていられないし、誰かの背中を押せるような曲もいつかは作ってみたいと思っていました。自己啓発ソング、確かにそうですね! 昔は毛嫌いしていた自己啓発本を最近よく読んでいるのですが、2年前くらいから自分のなかでパラダイムシフト的な旋風が巻き起こっているのかもしれません」。

 また、こちらも曲名からしてユーモラスな“脱・借りてきた猫症候群”は、YOASOBIのコンポーザーとしても活躍するAyaseとのLiSA × Uru“再会”以来となるコラボレーション(なお、初回限定の〈カバー盤〉には同曲のセルフ・カヴァーが収録)。Uruの作詞による〈ですます調〉の歌詞も特徴的な、楽しくほのぼのとしたナンバーだ。

 「〈Uruといえばバラード〉というイメージを少し変えられるような、ライヴでも手拍子をしながら楽しく聴いていただけるような曲をリクエストさせていただいたのですが、耳にも頭にも残る弾んだリズミカルな曲を作ってくださって嬉しかったです。メロディーを聴いているうちに、〈内なる叫び〉をボソボソと放っているような詞にしたいなというインスピレーションが湧いてきて、難しい言葉を使わずに自分に向けて話しているような話し言葉で書いていきました。でも、日記を書いていると、無意識に誰かに万が一見られても大丈夫なように書いてしまうという心理のように、ひとりごとなのに誰かに届いていてほしいというような、めんどくさい感情をリアルに閉じ込められたなあと」。

 そして“ハクセキレイ”は、アコースティック・ギターを軸にストリングスやピアノがこれ以上でもこれ以下でもない絶妙な加減で絡んでくるナンバーで、シンプルさゆえに彼女の声の響きも非常に際立つ。

 「もちろんアルバムの全曲が好きなのですが、この“ハクセキレイ”は特にたまらなく好きです。もともとあまりサビの印象が強くない曲というか、穏やかなのにクセのある曲が好きなのですが、ある日ボーッと外を眺めていたときに見た鳥たちの光景にすごく癒されて、ちょうど担当させてもらっていた作品の主人公と重なってすごく妄想が膨らんで一気に書けた曲です。アレンジもリヴァーブの程度や、後ろでループしているピアノのパターンだったり、デモの雰囲気をそのまま活かしてもらったり、注文をたくさんしてしまいました。歌詞に没入して聴いてほしくもあり、曲を流しながら読書をしたり雰囲気を楽しんでもらいたい曲でもあり、とにかく、好きです」。

 『モノクローム』から『オリオンブルー』、そして『コントラスト』――アルバム・タイトルでその進化を表してきたUru。今作を作り終えての手応えも、もちろん……!

 「またひとつ〈Uru〉を表現できるアルバムが出来たのではないかなと達成感みたいなものは感じています。これを引っ提げての……って、このワードを使ってみたかったんですけど(笑)、春からのツアーでは、皆さんと曲を同じ場所で共有できるのが楽しみです。〈求められているもの〉と〈自分が表現したいもの〉って、いつでも必ず合致するわけじゃないけれど、それらを良い形でまとめることのできた一枚なのかなとも思っています」。

関連盤を紹介。
左から、wacciの2022年作『suits me! suits you!』(エピック)、優里の2022年作『壱』(ARIOLA JAPAN)、YOASOBIの2021年作『THE BOOK 2』(ソニー)

Uruの作品。
左から、2017年のアルバム『モノクローム』、2020年のアルバム『オリオンブルー』、2020年のシングル『Break/振り子』、2021年のシングル“ファーストラヴ”“Love Song”、2022年のシングル“それを愛と呼ぶなら”(すべてソニー)