
ドラマティックな“ファーストラヴ”に続くニュー・シングルは、その名も“Love Song”。いつもと眼差しの異なる愛の歌は、5周年の節目を経た新たな挑戦に繋がっていて……
節目を過ぎた表現者として
去る6月15日に、デビュー5周年を迎えたUru。4か所5公演が開催されたアニヴァーサリー・ツアーも、かみしめる喜びはひとしおだったようだ。
「5年前の今頃は、プルプルと身体も心も震わせながらステージに立っていたなぁと思いながら5周年のステージに立っていました。そして、その間ずっと応援してくださっていたみなさんのことや、支えてくださっていたスタッフのみなさん、一緒にライヴを周ってくれたメンバーのみんなを思い出しながら歌うと、いろいろなことが込み上げてきそうで怪しかったので、大事な場面ではあえて頭を無にして集中して(笑)。声を出すことができなかったり、座席が一つ飛ばしのなかでの公演でしたけれど、ご来場いただいたみなさんがとっても温かくて、とくに初めて公演を行う場所だった新潟公演ではアンコールの際の拍手が大きくてそして長くて、感極まってしまったこともありました」。
アニヴァーサリー・ツアーのタイトルが、句読点を意味する〈Punctuation〉ということもあり、これをきっかけとした意気込みや、何かスイッチの入ったこともあったのではないだろうか。
「新しいことに挑戦していきたいという気持ちはありますね。その新しいことというのが何なのかよくわかっていないのですが、でも、ずっと心のなかで思っているのは、歌を歌うようになる前からずっとずっと自分のなかで育ててきてしまっている、何かをする時の〈恥ずかしさ〉というか恥じらうことに関しては、変えていきたいなと思うことが増えました。自分を第三者の目線で見ることができているのは良いことかもしれないけど、そこに必ず〈恥ずかしさ〉とか〈人見知り〉とか〈尻込み〉とか、ネガティヴな要素がずっと付随していて、歌を歌うということをやらせてもらっている者である以上、そして6年目という節目を過ぎた表現者として、いい加減その殻は破っていかないとなぁと思います。そういうスイッチは、この節目のタイミングで押したいですね」。
いままでにないラヴソング
殻を破るスイッチはすでに押されたな……と、髪をバッサリと切った彼女の姿を見てまずは思ったりもするが、届けられたニュー・シングル“Love Song”のなかでも新しいUruの姿、態度をさりげなく見せてくれる。TVドラマ「推しの王子様」の主題歌として編まれた表題曲は、これまで彼女が書いてきたラヴソングとはニュアンスが少し異なるものだったりもして。

「私がいままで書いてきたラヴソングは、切なかったり悲しかったり、曲調的にもそういうものが多かったのですが、今回は、ドラマの脚本を読んだ感想と制作されているみなさんからのリクエストも相まって、曲調からいままでのラヴソングとは少し違った、温かでまっすぐな気持ちになれるような曲になっていると思います。台本、脚本を読んでいて、登場人物たちのひたむきさがとても胸にグッときていたので、この曲も、最後はまっすぐな曲にしたいなと思いました。ずっと気付かない振りをしてきたけれど、一緒に過ごしていくなかで心が動いていく様を描けたらいいなと思いながら歌詞を書いたつもりです。最後に〈ちゃんと自分の気持ちをはっきりと言葉にして伝えるラヴソング〉を作ったのは、もしかしたら初めてかもしれないですね。それも、このドラマが書かせてくれたことだと思っています」。
最後はまっすぐな曲にしたい──それが“Love Song”というストレートなタイトルに辿り着いた、とも語る彼女。そんな思いが宿った楽曲の世界観にさらなる豊かさを与えているのは、デビュー曲“星の中の君”はじめ、これまでも彼女の作品の多くを手がけてきたトオミヨウ。
「曲の雰囲気をお伝えする際に、ダニエル・パウターやヴァネッサ・カールトンのような少し昔の洋楽の雰囲気で曲を作りましたということはお伝えしました。このあたりの、少し昔の洋楽が私自身とっても好きな曲調で、アレンジの第一稿を聴かせてもらった時はとても興奮しました。今回もとても素敵に仕上げていただけて嬉しいです」。
カップリングの“I don't suit you”も新鮮だ。こちらは国内外のアーティストのリミックス・ワークでも腕を振るう覆面ユニット、AmPmがプロデュース。チルなダンス・トラックと、終わりの見えた切ない恋愛風景を描いた歌詞とのマッチングが妙味なナンバー。
「アレンジがものすごくカッコよくて、初めて聴いたときはとてもビックリしました。私のデモは、どちらかというとR&Bテイスト強めのサウンドだったので、こんなふうに変わることができるんだなと、驚きしかなかったです。それと同時に、そこに歌を乗せる緊張感もずっしりと感じました。聴けば聴くほどハマってしまうような曲になってくれたと思います。AmPmさんがどんなふうにアレンジしてくださるのか楽しみに待っていたいという気持ちとリスペクトもあったので、特に私からはこうしてほしいということはお伝えしていなかったのですが、私がR&Bが好きだということが伝わっているのと、この曲の原型を少し残すアレンジにしてくださった気がしています」。
夢のステージ
また、シングルで恒例となっているカヴァーには、今回はAwesome City Clubの“勿忘”をチョイス。
「映画『花束みたいな恋をした』の主題歌として出会い、本当にいろいろなところでよく耳にして、自分でもダウンロードして聴いていた大好きな曲でした。男性と女性で歌われている曲なので、キーをどうすればいいかをいちばん迷いましたね。歌詞もそうですが、メロディーが本当に好きで……私のなかでこの“勿忘”は、香辛料というか、聴いた後にスパイシーさが残るメロディーラインだなと思っていて、何とも言えない感情になるんです」。
さらに、こちらも恒例のセルフ・カヴァー。今回取り上げたのは、ピアノをメインにした元のヴァージョンからアコースティック・ギターに着替えた“ファーストラヴ”。
「セルフ・カヴァーは、毎回難しいなぁと思いながら歌うのですが、今回は伴奏がギターだったので、雰囲気も原曲よりもマットに、部屋のなかでポロロンと歌っているようなイメージで歌いました。私自身、作曲する時もピアノで作曲するので、ギターがメインになるとこんな雰囲気になるんだ!と楽しみながら歌えました」。
らしさ、新しさを聴かせながら、今回も丹精こもった作品を届けてくれたUru。11月には「デビュー前からずっと目標にしていた夢のステージ」という東京国際フォーラム ホールAでの単独公演も控えている。6年目に突入した彼女のバイオグラフィーに、また大きな1行を刻むことになりそうだ。
「スタッフさんからこのライヴについて相談をもらったときには、一瞬時が止まって、思考が停止しました(笑)。ここでライヴをすることをずっと目標にしてきたので、本当に嬉しいです。それと同時に、夢の舞台を成功させたいというプレッシャーもいつもよりある気がするので、あまり気負わず(笑)、いつも通り楽しみながらやりたいです。ここでスキマスイッチさんのライヴを観て、音楽の道を志すことを決めたあの日、ライヴに参加した余韻と共に家に帰り、自分の夢に素直になれた証として、そして、はっきりとした目標ができたので、国際フォーラムのステージに立つことがあったら……と、当時の自分がそのときの自分に宛てて書いた手紙が作業デスクの奥のほうにしまってあるので、この封を開ける日がくるんだなぁとジーンとしていますが、来てくださった方に、心穏やかに、そしてゆっくりと楽しんでいただける音楽を届けることがいちばん大切にしていることなので、日々積み重ねていきたいと思います」。
“勿忘”のオリジナルを収録したAwesome City Clubの2021年作『Grower』(cutting edge)
Uruの作品。
左から、2017年のアルバム『モノクローム』、2018年のシングル“remember”“プロローグ”、2019年のシングル“願い”、2020年のアルバム『オリオンブルー』、同年のシングル『Break/振り子』、2021年のシングル“ファーストラヴ”(すべてソニー)