濃淡を描き分ける多彩な筆捌きで、受け手の心の色調に優しく寄り添う不世出の歌声――3年ぶりのアルバム『tone』にはここに至るまでの真摯な足跡が美しく織り重ねられている!

一曲ずつに向き合えた期間

 “春 ~Destiny~”“フィラメント”“Never ends”“手紙”“プラットフォーム”――これまでにないほどコンスタントなリリースを重ねて2025年を駆け抜けてきたUru。今年に入ってもその歩みはまだ緩むことなく、年始早々にはシングル“傍らにて月夜”を発表。back numberの清水依与吏が作詞・作曲を手掛け、編曲と演奏も含めてバンドが全面的にプロデュースしたこの曲は、Uruにとってもback numberにとっても新しい試みだった。

 「レコーディングのときなど緊張する場面が多かったのですが、依与吏さんには私の肩の力を抜いてくれるような言葉をたくさんいただき、何曲かデモ曲が送られてきたときには、いま世界に未発表の超絶貴重な音源を聴いている……という気持ちでワクワク感とドキドキ感と恐縮する気持ちが混在して大変でした。聴いてみるとそれはやっぱり〈back numberさんの曲〉で、これを歌わせていただけるんだなと思うと、うれしさと感慨深さで胸がいっぱいになって、レコーディングやスタジオ作業の際も、back numberの皆さんと同じ空間で制作できている喜びを感じながらも、しっかりと先輩の音楽に対する向き合い方とストイックさとプロフェッショナルな姿を焼き付けました」。

 ここに至るまで――2023年にアルバム『コントラスト』を発表して以降――の3年間は、楽曲の制作にとても集中できた期間だったと、彼女は振り返る。

 「3年の間にたくさんの曲を作り、歌わせていただいたので、そのぶん、それぞれの作品に真剣に向き合えた期間だったなと思います。頭や心の中にその作品を染み込ませていくことで歌詞を書いたりするので、私の中が映画館のような感じでした(笑)」。

Uru 『tone』 ソニー(2026)

 そういった時間のなかで生まれた成果が一連のリリース楽曲に表れ、そしてそれらが塊になって、4枚目のアルバム『tone』が完成した。アルバム冒頭を飾るのは、直前に先行配信された“今日という日を”。切実なバラード・ナンバーだが、合間に軽いハミングが挿まれていたりと、一曲の中でも歌声の豊かな表情が見て取れる。

 「ハミングはデモを作ったときにすでにあったのですが、歌詞を入れるよりもそのまま鼻唄のようにしたほうが好きだな、と思ったのと、あまりやったことがない歌い方だったので、そのまま取り入れました。この曲は映画『教場 Requiem』の主題歌として書いた曲で、自分の過去、特にあまり思い出したくない日のことを思い出したりする瞬間があって、でもきっとあの日がなかったらここにはいないだろうなと思えている気持ちを少しの光として描きたくて、原作の読後感と重ねました。がんばっている人に〈がんばって〉とは言いづらいし、挫折や失望を味わった人に軽々しく〈大丈夫〉とは言えないけれど、結果がどうであっても、それに辿り着くまでの過程や自分の行いはいつか自分に還ってくる、という少しの希望のようなものだけは伝えたかったかもしれません」。

 

あの頃の私と現在の私

 新曲をピックアップしていこう。アップテンポのナンバー“ミラクル”の編曲は、初めての手合わせとなったESME MORI。エレクトロを主体としたプロダクションで、iriやimase、Snow Manら幅広い顔ぶれの楽曲を手掛けるサウンド・プロデューサーだ。

 「デモの段階からすごく気に入ったメロディーだったので、これがESMEさんによってどんなアレンジになるんだろう?と、とても興味深かったのですが、アレンジされた音源を聴いて、とてもシビレました。歌詞は、モテているのに自分の好きな人にはモテない、というタイプの片想いのイメージで書いていったので、アレンジの、とくにサビの〈攻めている〉感じがすごくピッタリで」。

 “さすらいの唄”は、ツアーでのサポートも務める宗本康平がアレンジを担当。

 「カフェで歌詞を書いたり、ボーッと外を眺めて人間観察をするのが好きなのですが、そのときに浮かんできた歌詞です。メロディーから先に作ったのですが、それを考えているときに鼻唄を歌いながら作っていたらサビの結びの部分の〈さすらいの唄〉が出てきて、そのままタイトルにしました。タイアップでない曲は自由度が高いぶん、どんな曲にしようかとても迷うのですが、スマホにメモした〈こんな曲を作りたい〉というリストを覗いて決めることもあります。でも、私にしかわからないような難解なメモになっていて。〈こんなタイトルの曲を作りたい〉と、曲名が先のパターンもあったりします」。

 そのほか、2024年に日本赤十字社のCMソングとしてオンエアされていた“夜が明けるまで”も初音源化。さらに、これまでのアルバムと同じく初回生産限定盤には〈カバー盤〉〈映像盤〉が用意されており、カバー盤では、Mrs.GREEN APPLE、キリンジなどシングルCDのカップリングで披露されていたほかに、平井堅、菅田将暉、クリープハイプ、大滝詠一、さだまさしの名曲たちが新録されている。

 「クリープハイプさんの“傷つける”は、YouTubeで歌わせてもらっていた時代のものと大きく変わりすぎてもな、というのがあって、レコーディング前に自分でも当時の動画を観直したりしました。あの頃の私を大切にしたいという気持ちと、あの頃から今日まで来れたいまの私の歌と、ちょうど真ん中あたりになるように――と言いながらも、最終的には頭で考えるのをやめて、いまの私が歌いたいように歌った素直な歌になっています(笑)。大滝詠一さんの“幸せな結末”を歌っているときは、曲のせいなのかすごく多幸感に包まれながら歌っていて、やっぱり私は歌うのが好きなんだなと思いました」。

 

自由に聴いてもらえたら幸せ

 聴き進めていくと、アルバム・タイトルの『tone』は、彼女が持ち得る歌声のさまざまな〈トーン〉を指すもの、その多彩さが詰まった作品だと感じることができるが、実際に彼女自身が表題に込めた思いはどうだったのだろう。

 「〈tone〉には、〈音色〉〈色合い〉〈調子〉〈色の濃淡〉とかそんな意味がありますが、今回このアルバムには、きっと皆さんの中で定着しつつあるだろうUruの深く濃いトーンのバラードから、淡く軽やかなトーンの明るい曲まで、いろいろな濃淡の曲が揃っています。そして、その曲によって私の声のトーンも違っていたり……なので、曲順は結構悩みました。“さすらいの唄”を聴いた後に“プラットフォーム”を聴くとだいぶ声のトーンというか温度がわかりやすく違っているかと思います。それと同様に、日々過ごしていると、その日によって心の調子が違ったり、一日の中でも細かく移り変わったりすることもあると思いますが、このアルバムの曲たちが、そのときの皆さんの心のトーンに優しく寄り添えたらいいなという想いをこのタイトルに込めました」。

 6月にはデビュー10周年を迎えるUru。『tone』は活動10年の集大成という捉え方もできるし、久々のツアーも発表され、近々の活動も楽しみだし、彼女に寄せる思いには頼もしさ……しかない。

 「聴きたいときに聴きたい曲を自由に聴いてもらえたらそれだけでとても幸せなのですが、例えば、大事な日で意気込んだりするときや、寝るとき、歩くときなど、皆さんの日常のルーティンの中にお邪魔できたらとてつもなくうれしいですね。でも本当に、日々の生活の中で聴きたくなったときに聴きたい曲を自由に楽しんでもらえたらなと思います。ツアーは、初披露の曲がたくさんあるので緊張の連続になると思いますが、ようやく皆さんとまた音楽を共有できる機会なので、しっかり楽しんでいこうと思います」。 *久保田泰平

back numberの2023年作『ユーモア』(ユニバーサル)

 

着実に魅力を広げてきたUruのアルバム・ディスコグラフィー

Uru 『モノクローム』 ソニー(2017)

モノクロの動画という出発点を連想させる表題を冠した初のアルバム。前年のデビュー・シングル“星の中の君”や“フリージア”を手掛けたトオミヨウやドラマ主題歌として話題になった“奇蹟”の冨田恵一をはじめ、宗本康兵、武部聡志、川口大輔、蔦谷好位置ら豪華なアレンジャー陣が素材の魅力を引き立てている。

 

Uru 『オリオンブルー』 ソニー(2020)

表題通りのブルーを帯びた楽曲が並び、チャートでも大躍進した2作目。トオミヨウ編曲による“プロローグ”、小林武史アレンジの“あなたがいることで”といったドラマ主題歌のヒットも含め、大半の作詞・作曲を本人が担当。Kan SanoやShingo Suzukiによるミッド〜スロウの色合いも繊細なニュアンスを粒立てる。

 

Uru 『コントラスト』 ソニー(2023)

小林武史アレンジのヒット“それを愛と呼ぶなら”やトオミヨウ編曲の“Love Song”“ファーストラヴ”で情感豊かなバラードを極める一方、Yaffleによるアップ“Break”などの新味でコントラストを明快にした3作目。Ayaseが作曲した“脱・借りてきた猫症候群”、橋口洋平(wacci)や優里の提供曲も聴きどころ。 *轟ひろみ