すでに話題のドラマティックな名曲“それを愛と呼ぶなら”がいよいよシングルでリリース。感慨深いステージの先へとまた進み出した彼女が改めて前向きに表現する大切な思いとは?

そっと、ぐっと背中を押していく

 ゆったりとしたペースなようでいて、しっかりと、強烈に聴き手の心にその歌を焼き付けてきたUru。ざっとここ一年を振り返ってみても、デビュー5周年を迎え、初のコンサート・ツアーがあり、シングルのリリースがあり、これまででいちばん大きな会場でのコンサートがあり……と、充実した活動のなかで、彼女自身もその手応えを感じているところだろう。

 「そうですね、(これまででいちばん大きな会場となった)東京国際フォーラムでのライヴは、デビュー前からの目標のステージでしたし、とても感慨深いステージでした。応援してくださる皆さん、スタッフの皆さん、ここまで支えてきてくださったすべての方に感謝の想いを届けるステージでもあって、何も見えなくて悶々としていたあの頃の自分に教えてあげたくなりました」。

Uru 『それを愛と呼ぶなら』 ソニー(2022)

 そんな感慨深いステージから季節をひとつ越したところで、彼女は新しい歌――昨夏の“Love Song”以来となるニュー・シングル“それを愛と呼ぶなら”を届けてくれた。表題曲は、4月から放送されているTBS系日曜劇場「マイファミリー」の主題歌になっているが、〈時代の寵児ともてはやされるゲーム会社の社長が小学生の娘を誘拐され、妻と力を合わせて誘拐犯と戦っていく〉という、彼女がこれまで主題歌を歌ってきたドラマとはテーマや趣きが少々異なるもの。この曲を編むうえでのポイントは、どんなところだったのだろう?

 「ドラマチームの方々から、〈前向きになれる曲〉〈背中を押す曲〉〈広域の愛の歌〉というリクエストがあったので、そういったことを曲調にも歌詞にも反映できるよう意識しました。サビまでは3つのコードのループにして、過去を回想したり後悔を滲ませたりして、サビで前に進みだし、Dメロで走り出す、みたいな流れを作って、いきなりドンと背中を押すのではなく、そっと、ぐっと、押していくような曲になればいいなと思いながら作っていきました」。

 これまで数々のドラマ主題歌を歌い、ドラマが伝えたいメッセージをしっかりと内包しながらも、ドラマを切り離しても愛されてきたUruの歌。それだけに、毎回違ったテーマを求められるということは、彼女の表現力を見越してのことなんだろうと思える。とはいえ、難しさを感じながら作っている部分はもちろんあるはずで、“それを愛と呼ぶなら”においては、どんなところに苦心し、どんなところにこだわったのだろうか。

 「サビまでの歌詞ですかね……。実は、最初はまったく違う歌詞が入っていたんです。もっと、ネガティヴで後悔がたくさん滲み出ているような。でも、そのネガティヴの分量だと、サビですべてを跳ね返すことができない、陰の要素が強くなってしまうと、〈前向き〉な印象が薄れてしまうのではないかと、ドラマチームの皆さんやスタッフさんとも相談して、ゼロから歌詞を作り直しました。そこに、相手への感謝や伝えきれなかった素直な気持ちを入れることで、やっと統一した色の曲になれた気がしました」。

 自分自身の経験と重なる部分があるとすれば?

 「反抗期の自分ですかね(笑)。実は、〈一人で歩いて来た顔をして〉というのは、私が母と喧嘩して棘のある言葉を吐いてしまった時に母から言われた言葉でもあります。言われた当初は腹が立ちましたが(笑)、大人になると、本当そうだよなあ……と思うことばかりです(笑)」。

 

心の流れ、心の波

 そっと、ぐっと背中を押してくれて、前向きになれる――“それを愛と呼ぶなら”の世界観をさらに大きく引き立てているのが、一昨年のデジタル・シングル“あなたがいることで”以来の顔合わせとなったサウンド・プロデューサー、小林武史。

 「“あなたがいることで”もそうでしたが、やはりイントロがとても印象的でしたし、素敵なアレンジにしていただけてとても嬉しかったです。あとは、サビのベースギターが、サビで前向きになる心の流れのラインに沿っていてとても元気が出るというか、すごくグッとくるし、小林さんもコメントをくださった際にお話されていましたが、細かい隠し味のような音がちりばめられていて、すごいなあと思いました」。

 カップリングに収められた“セレナーデ”は、大切な人の尊さ、そこへの一途な思いが込められた切ないラヴバラード。編曲はデビュー以来もっとも多く彼女の歌に接してきたトオミヨウだ。

 「告白してフラれたわけでもなく、相手の心が読めないというのと、読めてしまったとしても関係を壊したくないからこそ伝えられない本当の気持ちというのを、歌詞を聴いていて想像できるように組み立てていきました。トオミさんにはとても信頼を寄せていて、今回のアレンジもとても楽しみにしていました。メロディーが符点のメロディーなので、ヴォーカルとの違和感がないかなど、いろいろなパターンを作ってくださって本当に感謝しています。心の波の激しさみたいなものが伝わる素敵なアレンジにしていただけてとても嬉しかったです」。

 心の波の激しさ――“セレナーデ”では、いつにも増してエモーショナルなUruの歌声を聴くことも……!

 「サビの歌詞で〈叫ぶ声は胸の中で〉とあるのですが、本当に胸の中で叫んでいるように歌いました。胸の中だけでしか叫べないんだから、このくらいの力量で叫ばせて!くらいの感じで……(笑)。Dメロの〈どうにでもなれと思うのに〉のところは、いちばん感情を込めて歌った気がします」。

 

新しくまた前進する

 また、シングルでは恒例となっているカヴァー曲は、マカロニえんぴつの“なんでもないよ、”。今回もまた、Uru色の素敵なカヴァーに仕立てられている。

 「タイトルの〈、〉がとても重要なんだなと歌ってみてわかりました。そんな意図はないのかもしれませんが、歌詞に出てくる、〈「何でもないよ」なんでもないよ〉は、〈何でもないよ〉と相手には話しているけれど、心の中では〈なんでもないよ(怒りマーク)〉みたいに、うまく言えない自分への歯がゆさとか苛立ちみたいなものを感じて、勝手にそんな気持ちで歌っていました。相手の方がそんなふうに思ってくれていたらとても可愛らしいなあとぎゅっと心を掴まれる曲でした。あとは、歌詞がたくさん詰まっている早口の部分は初挑戦でしたが楽しかったです!」。

 そして、こちらも恒例のセルフ・カヴァーでは、前シングルの“Love Song”を。

 「いつもピアノを演奏してくださっているHidenoriさんが今回も弾いてくださったのですが、どんな感じにするかの土台を作ってくださって、いちばん最初に伴奏音源を聴いたときは私も驚きました。そして、なるほどー!と感心しました。反転の伴奏になっていて、それだけでとても印象がガラッと変わるのですが、メロは間延びせずにそのまま活かしてくれて、とてもよいセルフ・カヴァーになったと思います」。

 それぞれが味わい深く、Uruが生み出す音楽への愛情はより深まるばかり……というところで、この夏からスタートする2度目の全国ホール・ツアー〈again〉も楽しみだ。

 「デビュー前からの目標だったステージを叶えることができたいま、新しくまた前進する、という意味での〈again〉なのですが、規模としても最大規模のツアーですし、初めて行く場所もあるので、雰囲気とご当地グルメをとても楽しみにしています。今回の“それを愛と呼ぶなら”で初めて私に出逢ってくださった方もいると思うので、ひとつひとつ丁寧に心を込めて歌ってきたいと思います」。

 

6月15日に発行されるUru初の短編集「セレナーデ」(KADOKAWA)

 

“なんでもないよ、”を収録したマカロニえんぴつの2022年作『ハッピーエンドへの期待は』(トイズファクトリー)

 

左から、2017年のアルバム『モノクローム』、2018年のシングル“remember”“プロローグ”、2019年のシングル“願い”、2020年のアルバム『オリオンブルー』、同年のシングル『Break/振り子』、2021年のシングル“ファーストラヴ”“Love Song”(すべてソニー)