ボン・ジョヴィ(Bon Jovi)『2020』病める現代アメリカが抱える問題を赤裸々にしつつ、聴き手を鼓舞することも忘れてはいない

2020.11.20

政治色を深めた15枚目のアルバムは、膝を突き合わせて聴き手に語りかけてくる作風と言っていい。ただ、深刻になり過ぎないのはジョン・ボン・ジョヴィの人柄も大きいのではないか。明朗な歌メロが映えるカントリー風味の“Do What You Can”、家族の絆を描いたバラード調の“Story Of Love”、賑々しいホーン・アレンジが効果的な“Let It Rain”など、メロディーを含む楽曲の良さに何度も唸らされる充実作だ。

 


前作『This House Is Not For Sale』から約4年ぶり、〈2020年〉という特別な年をタイトルに掲げた通算15枚目となるオリジナル・アルバム。もともとは秋の大統領選挙を意識して付けられたタイトルだが、アルバム制作中に進行したコロナ禍や〈Black Lives Matter〉運動によって別の意味も帯びて行くことになった。

ジョージ・フロイド氏殺害に衝撃を受けて生まれたという“American Reckoning”、銃社会への問題提起“Lower The Flag”、トランプ政権を糾弾した“Blood In The Water”など、シリアスなテーマを扱った歌詞には病める現代のアメリカが抱える問題が赤裸々に綴られている。一方で、〈人生に限界は無い〉と歌うアッパーなロック・チューン“Limitless”や、カントリー調の明るい楽曲に、〈今、自分に出来ることをやろう〉というコロナ禍だからこそ生まれた歌詞を乗せた“Do What You Can”など、パワフルなサウンドとポジティヴなメッセージで聴き手を鼓舞することも忘れてはいない。

ジョン・ボン・ジョヴィと共同プロデュースを務めたのは2005年の『Have A Nice Day』以降おなじみのジョン・シャンクスで、今回もファンが望むサウンドを最高の形で届けてくれている。キーボーディスト、デヴィッド・ブライアンのコロナ感染などの苦難に見舞われながらもバンドが生み出した屈強なサウンドと、今、この時代を描いた歌詞が高次元で結実した、2020年のボン・ジョヴィだからこそ作り得た傑作だ。

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