コラム

ダーティ・プロジェクターズ(Dirty Projectors)『5EPs』様々な角度からバンドとしての可能性を探った5枚のEPをコンパイル

新しいメンバーとバンドの可能性を探った5枚のEPをコンパイル

 メンバー全員が脱退して、フロントマンのデイヴ・ロングストレスのソロ・プロジェクトとして制作された『Dirty Projectors』(2017年)。そして、再びバンド編成で制作した『Lamp Lit Prose』(2018年)と、ここ数年、ダーティ・プロジェクターズはバンドを進化させるために試行錯誤を繰り返してきた。そんななか、今年に入って5枚のEPをリリースすることを発表。その音源をまとめたのが本作だ。現在のメンバーは 『Lamp Lit Prose』のツアー・メンバーが中心になっていて、『Lamp Lit Prose』制作時とは一新されている。デイヴの公式コメントによると、彼はこのEPシリーズをバンドが新しいアイデンティティーを確立するためのプロセスだと考えているらしい。EPはそれぞれ4曲収録されていて、作品ごとに違うメンバーがヴォーカルを担当。サウンドの方向性も異なっている。

DIRTY PROJECTORS 『5EPs』 Domino/BEAT(2020)

 第1弾EP『Windows Open』はマイア・フリードマン(ギター)がヴォーカルで、デイヴが奏でるギターを中心にしたアコーステックで美しいメロディーが際立つ曲が並ぶ。第2弾EP『Flight Tpwer』はフェリシア・ダグラス(パーカッション)がヴォーカルで、多彩なビートが加えられているのが特徴。第3弾EP『Super Joao』はジョアン・ジルベルトに捧げられていてデイヴがヴォーカルを担当。アコースティック・ギターの弾き語りを中心に曲は意表を突く展開を見せて、デイヴの深みを増した歌声に引き込まれる。第4弾EP『Earth Crisis』はクリスティン・スリップ(キーボード)がヴォーカルで、弦楽四重奏や木管をフィーチャーした現代音楽風のアプローチ。そして、第5弾EP『Ring Road』はメンバー全員の歌声が交差して曲調もバラエティーに富んでいる。

 すべての曲を書いたのはデイヴで歌詞は各メンバーと共作。メンバーそれぞれの個性を反映させながら、ダーティ・プロジェクターズのオルタナティヴな実験精神と多面的な音楽性が健在であることが伝わってくる。バンドが誕生するドキュメントのような興味深い作品だが、何よりも「このメンバーでやっていく」というデイヴの決意が感じられるのが嬉しい。

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