『窓景』から広がる〈声〉の風景はこんなところにも……

JUANA MOLINA 『Wed 21』 Crammed(2013)

歌や演奏したフレーズをループさせ、重ねてゆく手法を用いる代表的なシンガー・ソングライターといえば彼女だろう。自身のスタジオにて、たった一人で完成させたこの最新作は、アルゼンチンの民族音楽やエレクトロニック・ミュージック、はたまた〈歌ものアルバム〉としての枠組みを軽々と超えてみせる。 *小野田

 

salyu × salyu 『s(o)un(d)beams』 トイズファクトリー(2011)

〈クロッシング・ハーモニー〉の手法をきっかけに、1曲のカヴァーを除いた全曲をコーネリアスに委ねたsalyu×salyu名義の初作。幾重にも連なる彼女の声がリズムを成し、メロディーを紡ぎ、音楽を形成してゆく様はエクスペリメンタルでありながら、途轍もなくポップ。作詞では、ここでも坂本慎太郎の名を確認することができる。 *土田

 

ハチスノイト 『Universal Quiet』 PURRE GOOHN(2014)

 夢中夢/magdaraのヴォーカリストがまさに声のみで作り上げた初のソロ作。ビョーク『Medulla』を自分なりに、という意識は少なからずあったようだが、吐息や舌音も交えた多様なヴォイス・パターンを演ずる穢れなき美声の〈合奏〉が、聖歌のように荘厳な世界観を生み出している。 *土田

 

DIRTY PROJECTORS, BJÖRK 『Mount Wittenburg Orca』 Domino(2011)

ダーティ・プロジェクターズのデイヴが楽曲を担った人気者同士のコラボ作は、ビョークの歌を中心としながらも、どこかコケティッシュな多重コーラスの応酬が牧歌的なムードを立ち上げる仕上がりに。〈声〉のオーケストレーションによるニュー・フォーク作品といった趣だ。 *土田

 

LYDIA AINSWORTH 『Right From Real』 Arbutus(2014)

モントリオールとNYでクラシックや現代音楽、映画音楽を学んだ経歴を持つカナダはトロントの女性アーティスト。そのファースト・アルバムでは、ヴォイス・サンプルを活かしながら、ポスト・クラシカルとエレクトロニック・ポップの刺激的なクロスオーヴァーを展開している。 *小野田

 

JULIA HOLTER 『Loud City Song』 Domino(2013)

LAの女性アヴァン・ポップ・アーティストがリリースした傑作アルバム。ナイト・ジュエルと彼女の夫でエンジニアのコールMGNらが参加し、声楽や教会音楽、ジャズやドローン、静謐なシンセ・ポップや管弦楽曲を溶かし込んだサウンド・テクスチャーは、動く風景画のよう。 *小野田